3.史上最も文字を読む時代

👉ポイント

・活字が衰退する一方、非活字テキストはかつてないレベルで読まれている

・非活字テキストは爽快感を提供するとは限らず、全部読む必要はなく、現実と虚構の境界が曖昧であるという特徴を持つ


表:Twitterアカウントの格付け(個人的)

S………天下一品bot(@10_1)

AAA…日本経済新聞 電子版(@nikkei)

AA……Hillary Clinton (@HillaryClinton)

A………■■■(筆者の友人)(@■■■)

B+……Donald J. Trump (@realDonaldTrump)

B-……くまモン【公式】(@55_kumamon)

C………鬱病になったハム太郎bot(@__hamutaro__)


 「活字離れが著しい」としばしば指摘されます。この指摘は確かに正しいですが、それは「活字」という狭い範疇に限定した場合に成り立つ話でございます。印刷された文字に限らなければむしろ、それ以前の時代を凌駕する量の文字を読んでいるはずです。


 その代表格がSNSです。SNSで提供されるサービスはユーザー同士の交流でありますが、では具体的にどうやって交流しているかというと、他人の書いた文章を読むということが中心的なアクティビティになっています。以前の世代がブラウン管の明滅を見つめるのに費やしていた時間を我々は文字を読むことに使っているわけであります。


 これからのweb小説にとって鍵となるのは、これらの活字ではないが字を読む層にいかに訴求していくかであります。非活字テキストの特徴には以下のような点が挙げられましょう(SNSを想定して書きますが他のものにも多かれ少なかれ当てはまるはずです)。


 第一に、これらのテキストを読む人々は、テンプレ小説が提供するような、スピーディなストーリー展開や爽快感を求めているわけではないということです。隙間時間に手軽に消費されるのがweb小説だとしても、別の形態で隙間時間の暇つぶしを提供する余地はあるわけです。もし特定の快楽に応えるようなweb小説しか読まれていないのだとすると、それはweb小説が自らその活動領域を限定してしまっていることに原因があるのではないでしょうか。


 第二、全部読む必要がないし、あるいは読む順序もはっきりとは決まっていないことが指摘されます。また、基本的には容量制限がないために、文章があれもこれもと冗長になりがちです。そういった長い文章を読み手は適宜取捨選択したり読み飛ばしたりしながら、膨大なテキストを処理していきます。ですから、非活字テキスト読者には、始点も終点もはっきりしない、ダラダラした海鼠のような文章でも受け入れるだけの包容力があります。


 第三に、現実と虚構の境界が曖昧であるという点です。今回の表は筆者の独断と偏見で判断したtwitterアカウントのツイート内容の信頼性の高さの比較であります。近年、偽ニュースが話題になっていますが、そもそもTLの上には大真面目な情報から全くのデタラメまで共存しています。偽ニュースはその中で相対的に理解されるわけであります。後に詳しく議論しますが、web小説でもこれと同様に、完全な虚構という立ち位置を維持することが困難になっています。


 次回以降は主に第二・第三の点について、掘り下げていこうと考えています。

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