第14話

 翌日の放課後、授業が終わって教室で待ってると約束通り、先輩が来た。

「ここじゃ人も多いし、集中できないと思うから、場所変えようか?」

「はい」

 ボクは急いで荷物を持って、先輩の後に付いていった。それで、着いた場所って言うのが……。

「あの、ここって生徒会室ですよね?使って平気なんですか?」

 たぶん、ボクには一生縁がない生徒会室。場所も今初めて知ったし。

「大丈夫。先生にはちゃんと許可取ってあるから」

 先輩の話を聞きながら中を見ると、意外と普通だった。何か、もっと色々あるような気がしてたんだけどなぁ。

「文化部の人とかも部室で勉強したい、って人結構いるから、去年から顧問の先生に事前に言えばできるようになったらしいよ」

「そうなんですかぁ……」

「去年の会長の功績、かな。うん、おしゃべりはこれくらいにして、勉強始めるよ?」

「はい……」

 去年の会長さんのことは知らないけど、何か寂しそうな目してた……。知り合い、なのかな……?

 って、今からは勉強。先輩ともっと仲良くなりたいけど、今は勉強に集中しなきゃ!イヤだけど……。

「それで、宿題はちゃんとやった?」

「はい、えぇと、範囲は……」

 言いながら、ボクは教科書をカバンから出して、先輩に見せた。

「ここまでです。それで、分からないのは、こっちのページのこの辺りとか、後、こっちのこれとか……。それから、こっちの方もです……」

 昨日見て分かんなかったところを先輩に言っていったんだけど、何か、ほとんど全部言ってるような気がするよ……。

「それじゃ、最初からやっていこうか?わたしの説明で分からないところがあったら遠慮なく言ってね」

「はい、お願いします」

「えぇと、ここら辺の問題とか解いたりした?」

「はい、昨日解いてみました」

 昨日解くのに使ったノートを取り出して、先輩に見せようかと思って中を見てみると、その問題も他のも全然できてなかった。そんなのを先輩に見せるのは恥ずかしかったけど、思い切って先輩に見せた。

「こんな感じなんですけど……」

 先輩はそれを受け取ると、ゆっくりと見始めた。他のページも同じようにしてしばらく見てた。

 全然ダメダメでやっぱり呆れちゃったかな……?なんて思ってたら、先輩がノートを置いた。

「たぶんだけど、基本はちゃんと分かってると思うな」

「でも、ボク、その問題もできなかったし……」

 先輩は分かってる、って言ってくれたけど、渡したノートも全然解けてない問題ばっかだったし、本当に分かんないところの方が多いのに……。

「例えば、この問題。途中で止めちゃってるけど、このまま解けば大丈夫だよ?たぶん、だけど、計算が複雑になっちゃったから止めちゃったんじゃない?間違ってたらごめんね」

「その通りです……」

 先輩の言うとおり、それは何か複雑になってきて、分かんなくなってきちゃって止めちゃったんだけど……。

「よし、それじゃぁ、この問題を諦めずにやってみよう。せっかく、途中まではあってるのにこのまま止めちゃったらもったいないよ?」

「はい、やってみます……」

 先輩に言われるまま、やってみた。そしたら、計算が大変だったけど、解けちゃった。

「あっ、解けました!」

「でしょ?答えも、うん、あってる。他の問題も同じ様なのがいくつかあったから、今まで損してたんじゃないかな?」

「それじゃ、他の問題もチャレンジしてみます!」

 うん、先輩にそう言われたらやる気出てきた!頑張ろう!

「そう、その意気。頑張って。分からないところがあったら教えるから、遠慮なく言ってね」

「はい!」

 それから、ボクは問題を解き始めた。途中で投げ出した問題をもう一度。そしたら、できない、って思ってたはずの問題が解けた!

 やっぱり、先輩の言ったとおりだったのかな……?これだったら、テストも大丈夫かな……?でも、そしたら、先輩とこうして一緒にいる時間もなくなっちゃう……?それはイヤだけど……うぅ……。

「竹田さん?考え込んじゃってるけど、分からないところあった?」

「えっ?あ、い、いえ、あの、その、えと……」

 今考えてたことなんて言えないよ……。せっかくボクのためにこうやって時間作ってくれたのに、他のことを考えてたなんて……。しかも、考えてたのは先輩のことなんだし……。

 チラッと先輩の方を見ると、先輩は自分の勉強の手を休めてた。

「ごめんなさい、大丈夫です……」

「そう?とりあえずノート、見せてみて」

 そう言って、先輩はボクのノートをのぞき込んだ。

「うん、ちゃんとできてるよ。もっと自信持ってもいいと思うな」

「はい。ありがとうございます」

 うぅ……、心配してくれてるんだ……。ちゃんと、やんなきゃ……。

 それからは、ボクもマジメに他のことは考えないように頑張った。

 それからしばらくして、ボクがちょうど問題を解き終えたら、先輩が話しかけてきた。

「きりがよかったらちょっと休憩する?」

「はい」

 ボクはもちろん、その提案にうなずいた。と言うより、先輩が言うならボクは何でも……。

「それじゃぁ、飲み物買ってくるけど、竹田さんは何かいる?」

「はい、えと、ボクが買いに行きます。先輩は何がいいですか?」

「じゃぁ、2人で行こうか?」

「はい!」

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