第11話

 その後、先輩と行ったお店はボクが買った雑誌に載ってるような感じの服のお店。ボクはよく分からなかったんだけど、先輩がそう言ってたから。

 その後には先輩も入ったことがないっていうギャル系のお店。ここは、ボクも先輩も全然趣味じゃなくて、店を出た後は2人で思いっきり笑ったりしてた。

 その時の先輩の笑った顔はいつも以上に素敵で、顔が赤くなってなかったかすっごい不安。でも、先輩は何も言わなかったからたぶん、大丈夫だったんだよね……?

 他にももう少し色々と回って、そのたびに先輩が色々と服を選んでくれて。ボクはそれを試着するけど、先輩の前だと何かすっごい恥ずかしかった……。でも、先輩が選んでくれた服はどれも素敵で、ボクも楽しかった。

 でも、ボクは一着も買わなかった。だって、買っちゃったらそこで今日は終わりになっちゃいそうだから……。本当は、先輩が選んでくれたものなら何だって買いたかったんだけど……。

「ねぇ、竹田さん?わたしの趣味で選んじゃってるけど、よかったかな?もちろん、竹田さんに似合いそうなのを選んではいるんだけど……」

 って先輩に言われたときは悪かったかなぁって思った。

「そ、そんなことないです!先輩の選んでくれる服はどれも素敵なのばかりです!」

 ボクがそう答えたら先輩は安心したように笑ってくれたけど。

 その後に行った雑貨とかのお店で、ボクは先輩とお揃いのストラップを買っちゃった。シンプルだけど、可愛い感じの。

 最初は先輩が「買ってあげる」って言ってくれたけど、ボクに付き合ってもらってるのに、買ってもらうのは悪いから自分で買ったけど。


 お店から出ると、今度はボクの携帯が鳴り始めた。先輩に謝ってから(先輩は気にした様子じゃなかったけど)電話に出た。

『やっと出た。いつまでも遊んでないで早く帰ってきなさいよ』

「え?あ、う、うん」

 お母さんからだったよ……。その後もしばらく小言を言われて、電話を切った。

「えと、今お母さんからで、早く帰ってきなさい、って……」

 先輩の方に振り返って、そんな風に言うと、先輩は時計を見て、

「あっ、もうこんな時間だったんだ。ごめんね、こんな時間まで付き合わせちゃって」

「謝ることないですよ。先輩がボクに付き合ってくれたんじゃないですか。だから、むしろ、ボクの方こそごめんなさい……」

 ボクが謝ると先輩は優しく笑ってくれた。

「ううん、わたしも今日は楽しかったし、謝る必要はないよ。それに、何か、いい息抜きになったかなぁって。だから、今日はありがと」

「そんな、ボクの方こそ楽しかったです!」

「あ、そうだ」

 そう言って先輩は携帯を出した。

「連絡先交換しない?」

「は、はい!」

 突然で驚いて、でもすごく嬉しくて……。だから、携帯を出したら手を滑らせて落としちゃって……。

「そんなに慌てなくても大丈夫だよ」

「あ、は、はい……」

 うぅ……恥ずかしい……。でも、これで先輩の連絡先ゲット!

「それじゃ、また明日ね」

 連絡先を交換した後、先輩は歩いて帰っていっちゃった。

 ボクはまた電車に乗って帰ったけど、今日のことを思い返すと顔がニヤケちゃうよ。


 家に着くとお母さんが、

「遅くなるなら連絡くらいしてね」

 って言ってきて……。うぅ……ごめんなさい……。

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