第10話

 先輩と一緒に店を出て、大きな本屋に向かった。そこは市内では一番大きくて、近所の本屋と比べると10倍くらいありそうなところ。マンガなら平気だけど、文字ばっかの本がこんなにあると頭が痛くなりそうだよ……。

 そこに着いたら先輩は真っ直ぐ参考書の棚に歩いて行っちゃった。もしかして、普段から買ってるのかな……?ボクなんて買ったことないよ……。

「先輩はいつもそういうの買ってるんですか?」

 だから、棚の前で何冊か見てる先輩に思い切って聞いてみた。

「いつも、ってわけじゃないけど、買うことは多いかな。先生に聞いてもいいけど、時間が合わないことも結構あるからね」

「すごいですね……。ボクなんてテスト前にノート見るくらいしか勉強なんてしないですよ。後はナナに教えてもらうか……」

「何か竹田さんらしいね」

 ん?ボクって先輩の中ではどんなイメージなんだろう……?

「でも、それでもうちの高校に入れたんだったら、ちゃんとやれば相当じゃないかな?」

「そ、そんなことないですよ!受かったのも奇跡みたいなものですし、入試前もナナにずっと教えてもらってやっとですから……」

 何か、自分で言ってて悲しくなるよ……。

「だったら、今度のテスト大丈夫?赤点取ったら追試だよ?」

「えっと……、自信ないですけど……、が、頑張ります!」

 授業とか全然分かんないのにどうしよう……?特に数学とか全然意味不明だよ……。

 もし、追試になったら部活って出れないのかな?もし、そうだったら先輩との時間が!

「えと、あの、追試になったりしたら部活って……」

「うちの部活は赤点取ったら追試まで休みにされるよ?」

「そうなんですかぁ……」

 うぅ……、だったら、絶対にいい点取らなきゃ……。

「そんなに厳しいの?何だったら、わたしが教えてあげようか?」

 えっ?先輩がボクに……?

 先輩の目を見ると、本気で言ってるっぽい……。

「せ、先輩がご迷惑でないならお願いします!」

 先輩と2人っきりでの勉強……想像しただけでドキドキするよ!

「でも、自分でもやらなきゃダメだからね」

「は、はい!」

「それじゃ、わたしはこれを買ってくるから待ってて」

 いつの間にか持ってた参考書(?)を持って先輩はレジの方に行っちゃった。

 ボクは……どうしよう……?あっ!今日はファッションの勉強に来たんだから、ファッション誌でも見て待っていよう!でも、ファッション誌ってどこにあるんだろう……?

 適当に歩いてみたら、レジの近くにあった。あっ、先輩が並んでるのが見えるよ。

 雑誌を読もうと思ったんだけど、何か、すっごい種類多くない?どれを見たらいいの……?

 うん、とりあえず、表紙のイメージとかで選ぼう。まず、あれとかギャル系はイヤだから、却下。それから、あっちの大人っぽいのもボクにはきっと似合わないから却下。あ、でも、先輩にはきっと似合いそう……。

 じゃぁ、他のでいいのはどれだろう……?あっちの方は他のお客さんがいて取りづらいし……。あっ!近くによさそうなの感じのがあった!

「お待たせ」

 ちょうど本を手に取った瞬間、先輩が後ろから声をかけてきた。

「いえ、全然大丈夫です!」

「竹田さんはそう言うのがいいの?」

 ボクの手、さっき取った雑誌を指さして先輩が言った。

「いえ、適当に取っただけで……。こう言うの、読んだことないから分かんないんです……」

「そうなんだ。でも、竹田さんならそう言ったのもいいと思うよ」

 笑顔でそんな事を言ってくれた。

 胸が、ドキドキするよ。こんな近い距離に先輩の笑顔が……!

「先輩がそう言うなら、ボクはこれでファッションの勉強をします!」

「でも、わたしが言ったからじゃなくて、竹田さんがどうしたいかで選んだ方がいいよ?」

「は、はい……。でも、ボクもこれがいいと思います」

「そう?だったらいいんだけどね」

「それじゃ、これ、買ってきます」

 レジはそんなに混んでなくてすぐにボクの番だったけど……。

 でも、ファッション誌って、こんなに高かったんだね。もう少し安いと思ってたよ……。

 先輩のお勧め(?)のファッション誌を買って、戻ると先輩が他の雑誌を立ち読みしてた。

「お待たせしました、先輩」

 声をかけると、先輩は読んでた雑誌を元あった場所に戻した。

「それじゃ、次はどのお店に行こうか?」

「ボクはよく分からないので、先輩に任せます」

「うん、任されてみる」

 そう言って、先輩は歩き始めた。

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