第9話
そうして、急いで着替えて外に出てみると、先輩は本当に店内を見てた。
「お待たせしました、先輩!」
そんな先輩に後ろから声をかけると、先輩は振り返って笑ったくれた。
「その服、どうする?買う?それとも、他のお店見てからの方がいいのかな?」
「え、えぇと、この服もすっごく可愛いんですけど、他のお店も見てみたいです」
本当は、先輩の選んでくれた服だから買いたかったけど、そしたら、それで先輩とお別れになっちゃいそうで……、それが嫌でついそんな事を言っちゃった。だって、先輩とまだまだずっと一緒にいたいんだから!
「そっかぁ、それじゃ、他のお店に行こうか?あ、それはわたしが戻しておくね」
そう言いながら、先輩はボクの持ってた服を元の場所に戻しに行った。ボクはそれを見ながら、次に来たときにすぐに見つけられるようにしっかりと場所を覚えようとした。記憶力、自信ないんだけど……。
「お待たせ。それじゃ、行こうか」
「え、えぇと、先輩はいいんですか?さっきも見てましたよね?」
「ん?わたしはいいの。この前買ったばっかだしね」
そう言って、先輩は先に出て行っちゃった。ボクは慌てて店を出ると、先輩が待っていてくれた。
「ほら、行こ」
そう言って先輩はボクの手を握って進み始めた。
そう、今、ボクと先輩の手は繋がってるんだよ!それだけですっごいドキドキするよ!このまま2人っきりの時間がずっと続けばいいのに……。
なんて考えてたら先輩が話しかけてきた。
「はい、到着。ここがわたしのよく、と言うか、たまに来るところ」
「そうなんですか!じゃぁ、早速中に入りましょう!」
中に入ると、さっきのお店より高そうな感じの服がたくさんあった。でも、先輩らしい感じがすっごいした!
ここでも、ボクは先輩のお勧めの服を試着してみたけど、ボクには似合わないかな……。
その後も何件か服のお店だけじゃなく、アクセサリーや小物のお店を回ったりした。
次はどんなお店に連れて行ってくれるのかなぁ、って考えてたら先輩の携帯が鳴り始めた。
「ごめん、竹田さん。ちょっと待ってて」
そう言って先輩は携帯に出ながら離れて行っちゃった……。
何だろう……?声聞こえないけど、何か、先輩謝ってる……?もしかして、ボクのせい?何か予定があったとか……?もしそうだったらどうしよう……?
あっ、携帯しまって戻ってきた。ボ、ボク、どうしたらいいんだろう……?
「ごめん、お待たせ」
「本当は何か予定とかあったとか……」
「大丈夫。ただ、本を買いに行くにしては帰りが遅いからお母さんがちょっと心配になったたけだから」
笑いながら先輩はそう言うけど、ボクは不安になっちゃうよ……。先輩がもう帰っちゃうんじゃないかって。
「そ、そうなんですか……。でも、それなら、今日はもう帰るんですか?」
「可愛い後輩に偶然会ったからゆっくり買い物をして帰るって伝えたから大丈夫。それで、わたしはまだゆっくりするつもりだけど、竹田さんはもう帰りたい?」
「そ、そんな事ないです!ボ、ボクも先輩とまだまだずっと一緒にいたいです!」
そうだよ、せっかく会えたんだからもっとずっと一緒にいたいよ!
あれ?ボク、今、先輩にすごい事言っちゃった……?気、気のせい、だよね……?う、うん、そう言うことにしよう!
「それじゃ、お腹も空いたし、ご飯食べようか?」
と、先輩がそんな素敵な提案をしてくれた!迷う必要もなく、
「は、はい!」
と答えた。だって、先輩と一緒にご飯だよ?こうやって休みの日に一緒にいられるだけでも夢のようなのに、ご飯まで一緒だなんて、もう、今年最高の幸せだよ!今年じゃない、今まで生きてきた中で一番だよ!
「竹田さんは何か食べたいものある?」
「ボクは……、何でも大丈夫です!」
先輩と一緒なら。ここまで言ってたら先輩はどう思ったんだろう……?
「それじゃ、あそこにする?今日はいつもより空いてるみたいだし」
そう言って指さしたのは某有名ファーストーフードのチェーン店。先輩の言うとおり、休日なのに席が少し空いてて座れそうな感じだった。
「はい!あそこにしましょう!」
先輩のお誘いに断るはずもなくそう答えると、2人で店に向かった。
注文をして、先輩と空いていた席に座る。先輩もボクもCMでやってる期間限定の商品。
何か、先輩と一緒ってだけですっごい嬉しいね。
「そんなに食べたかったの、これ?」
だからなのか、先輩がそんなことを聞いてきた。先輩と一緒だから、とかそんなことは言えないけど。
「えと、は、はい。CMでよく見ますよね」
「実はわたしも気になってたのよね」
こんな何でもない会話をしつつ、食べ終わると、
「次はどこのお店に行こうか?」
って先輩が聞いてきた。ボクは何も考えてなかったから、
「先輩に任せます」
としか答えられなかった。それに、先輩と一緒ならどこでだってボクは嬉しいから。
「じゃぁ、任されてみようかな」
って、笑顔で言ってくれた。でも、すぐに何か、マジメな顔になっちゃった。どうしたのかな?って思ったら、先輩がこう言ってきた。
「竹田さんって、いつも元気で悩みとかあんまりなさそうだよね」
「あ、ありますよ!部活とか、勉強とか……」
それとか、先輩とのこととか。
「ごめんごめん。いつも明るいから悩んでる姿なんて想像できなくて」
「でも、そんな先輩の方こそ、悩みなんてないんじゃないんですか?何でもできるじゃないですか」
「そう見える?こう見えてもわたしだって悩みはあるんだよ?」
「何か、意外です……」
先輩の悩みって何だろう……?ボクと違って勉強もできるし、運動もできるし……。まさか、恋!?でも、先輩みたいな素敵な人だった……うぅ……。
「先輩!ボクに力になれることがあったら言って下さい!」
まずは聞かなきゃ分かんないよ!それに、先輩に悩んでる姿は似合わないし!と言うより、想像できないけど……。
「ありがと。その気持ちだけで十分だよ」
笑顔でそんなことを言ってくれた……。
「それに、これはわたし自身でどうにかしなきゃいけない問題だから」
でも、なんか、寂しそうな表情だよ……?それに、わたし自身でってどういうこと?
「本当に、大丈夫ですか?ボクならいつでも相談に乗りますよ!頼りないかもしれませんけど……」
「それじゃ、相談をするときは竹田さんにお願いしようかな?」
あっ、さっき感じた寂しそうな雰囲気がなくなった。
「はい!任せて下さい!」
「それじゃ、混んできたし、そろそろ出る?」
言われて周りを見ると、先輩が言ったとおり、混み始めてきてた。
「そうですね。次はどこに行きますか?」
「先に本屋に寄らせてもらってもいい?」
「あっ……、はい、いいですよ」
そう言えば、先輩がここにいるのって参考書買うためだったっけ……?ボクのせいで遅くなっちゃった……?
「ごめんなさい!あの、ボクのせいで……」
「気にしなくてもいいよ。それに、わたしが好きで竹田さんに付き合ってるんだから」
優しく笑ってそんなことを言ってくれた。
「は、はい、ありがとうございます」
何か、ついお礼言っちゃったけど、間違ってる……?
「うん、それじゃ、行こうか」
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