第5話

 その後の練習も全然ダメだった……。全然ついていけないし……。やっぱり、ボクなんかが運動部に入るだなんて無理なのかな……?先輩にも迷惑かけちゃっただろうし……。

「涼、やっぱりあんたには無理じゃない?全然ついて来れなかったでしょ?」

「ぅ……、そ、そうだけど……」

 ナナもそう言ってくるし、やっぱり、諦めて他の部活にした方がいいのかな?でも、先輩のいない部活なら……。

「竹田さん、雪村さん、お疲れ。最初は辛いかもしれないけど、頑張ってね」

 後ろからのその一言でボクは決めた!

「は、はい!頑張ります!せ、先輩もお疲れさまでした!」

「うん、今日はゆっくり休んでね」

 そう言って先輩は笑顔で去っていった。

「ナナ、ボク、頑張るよ!」

「頑張るのはいいけど、程々にね。会長は涼のことを単なる後輩の1人としてしか見てないだろうし、これからもそうだろうけど」

「わ、分かんないよ!何があるかなんて分かんないじゃん!」

「確かに分からないけど、それでも、何も起こらない方が確率高いと思うよ?」

「ナナの意地悪!応援してくれてもいいじゃん!」

「はぁ、涼が普通の恋をしてるなら友達として応援もするけど、そうじゃないでしょ?元々叶う見込みの薄い恋なんだから、むしろ、諦めることを勧めるよ。それに、」

 そこで言葉を切ると、ナナがこっちを振り向いた。何か、すっごい真剣な表情で。

「私は涼のが恋とは思わない。単なる憧れじゃないの?」

「違う!ボクは、本当に先輩のことが好きで……」

 必死に否定をしようとするけど、ナナの目を見ると何も言えなくなっちゃう……。本当に、ボクは先輩のことが好きなのに……。

「涼も会長も女なんだよ?普通に考えたら……」

 ナナはそれ以上は言わなかったけど、ボクには分かってる。普通に考えたら先輩は男の人を好きになる、って。でも、好きになっちゃったんだから仕方ないよ……。

「ナナは、叶わないと思ったら諦められるの?自分のことを好きになってくれるから相手を好きになるの?違うよね?だから、ボクは……」

 ナナの顔を見ると、驚いたような表情をしてる。

「涼って普段は違うのに、たまにまともな事を言うよね。今回はわたしが、間違ってた、かな。ごめん」

「え?う、ううん。ボクこそごめん。ナナはボクを心配して言ってくれてたんだよね?」

「涼は中学の頃からずっとそうなのに、今更だよね?」

「そ、そうだよ」

 ちょっと拗ねたように言ったらナナは笑ってくれた。

「早く着替えて帰ろう。会長のことは、うん、反対はしないでおいてあげる」

「うん」

 反対はしないで、ってことは、応援はしてくれないんだね?何か寂しいけど、それは言わないでいた。ナナにいつまでも甘えてちゃいけないからね。

「ナナは無理にボクに付き合って陸上部に入らなくてもいいんだからね?」

 だから、ボクはそう言った。ナナの返事は分かってるけど。

「最初からそのつもり。色々見るつもりだったから、今日は涼に付き合っただけだから」

 やっぱり!僕の思った通りの返事だった!

「それじゃ、早く帰ろ、ナナ?」

「そうだね」

 部活で疲れてたけど、不思議と気持ちは楽だった。きっと、先輩と一緒にいられたからだね。


 次の日、本当にナナは別の部活に行っちゃった。しかも、先輩も生徒会の仕事で休みらしいし……。一年生の数もなんか昨日よりすっごい減ってるような気もするし……。昨日の練習が辛くて辞めちゃったのかな?ボクも体中筋肉痛で痛いし……。

 でも、ボクはそれでも頑張ったよ!それでも全然できなくてみんなに迷惑かけたけど……。昨日の方が付いて行けたけど……。

 もっと、頑張らないと!


 その次の日からもナナは仮入部期間中は来なかったけど、最終日だけは来てくれた。

「涼がどれだけできるようになったか見に来た」

 ってそう言ってたけど、やっぱり、ナナに心配をかけてたのかな?

 先輩は、一日置きに部活には顔を出してた。でも、相変わらずボクは話をすることもできないで……。しかも、先輩には励まされてばっかで……。

 ナナにも、先輩にも、そんなんじゃダメだよ!うん、もっと頑張らなきゃ!

 今は、まずは、練習に付いていけるようにならなきゃ!


 結局、ナナはボクと一緒に陸上部に入ってくれた。他に入りたいとことかなかったのかなぁ、って思ったんだけど、

「特にはないし、涼が無茶しないように監視しなきゃいけないからね」

 って言われちゃって……。監視って……、ボクってナナの中でどんな扱いなの?時々不安になっちゃうよ……。

 とにかく!これで、部活を頑張って先輩と近づかなきゃ!たまぁに、本当にたまぁに位はナナに手伝ってもらったり……できないかなぁ……?

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