先輩の部活

第2話

「おはよう、涼」

「あっ、ナナ、おはよう」

 学校に行く途中から、いつも通りにナナと一緒になった。ナナは中学からの親友で、本人は絶っ対に認めないんだけど、かなりの美少女。

 ナナは雪村七月って書いて、ゆきむらなつき。何か、七月に生まれたからそんな名前なんだって。それなら夏生って漢字にして欲しかったって中学のときにぼやいてたっけ?でも、ボクはナナの名前、結構好きなんだよね、漢字も含めて。だって、雪なのに七月なんだよ?何かロマンティックじゃない?ナナに言ったら絶対に怒られるけど……。

「何にやにやしてんの?」

「べ、別に何でもないよ!ナナの名前が好きとか、そんな……あっ!」

 考えてたことが顔に出ちゃってたみたい……。うぅ……、しかも、自分で墓穴掘っちゃったし……。

「はぁ、もう慣れたからいいけどさ。ところで、今日から部活の仮入部が始まるけどどこにするか決めた?」

「もちろん、陸上部!」

 だって、先輩がいるんだから!

 これは声に出しては言わなかったけど。

「もしかして、会長目当て?」

 うぅ……何でバレちゃってるんだろう……?

「ち、違……」

「やっぱりそうなんだ」

 否定させてもらえない……。事実なんだけど……。そんなに分かりやすいかなぁ……?

「まぁ、止めはしないけど、そんな理由じゃ長続きしないんじゃない?それに、運動部なんだし。涼ってそう言うの苦手じゃん?」

「うぅ、それって、遠回しに止めようとしてるんじゃ……?」

「まぁ、そうとも言うね」

「ひどいよ、ナナ。ボクの恋路を邪魔したいの?あっ!もしかして、ナナはボクのことが好き、だったり……?」

 絶対に違うって分かってるけど、何か言い返してみたくて言ってみたんだけど……、

「友達、としては好きだよ」

 うぅ……また冷静に返されちゃったよ……。ボクにはナナにうまく言い返すなんて無理なのかなぁ……?

「だからこそ、わたしは涼を心配して言ってるの。フられて傷つくのは涼なんだから」

 何か、胸がキュンってなっちゃったよ……。ボクは先輩一筋(なはず)なのに!

 でも、ナナはいっつもそうなんだよね。クールに見えて、実はすっごい優しくて……。だから、ボクがフられるといつも慰めてくれて……。それで、ボクもついいつもその優しさに甘えちゃってて……。

「ナナ、ありがと。でも、ボクは大丈夫だよ?だって、もう高校生なんだから!」

「いや、それは関係ないから……」

 うぅ……、呆れられちゃったよ……。でも、ナナの優しさに甘えないためにも、ボクも頑張らなきゃ!

「とにかく!ボクは陸上部に入部するの!あっ!そんなに心配ならナナも一緒に入ろうよ?ナナは足速いんだし」

「はぁ……、多分そうなるんだろうなぁとは思ってはいたけど、本当にこうなるなんてね……」

 ため息つきながらそんなセリフ言わないでよぅ……。何だか寂しくなって来ちゃうよ……。

「まぁ、仕方ないか。わたしも陸上部に今日は行ってみるよ。でも、入るかどうかは別だし、涼も会長のことだけじゃなくてちゃんと考えて決めなさいよ」

「……は、はぁい……」

 なんか、お母さんみたいだよ、ナナ。前から大人っぽかったけど、もうそんなんじゃないよね……。

 でも、正直言うと、1人じゃ心細かったからナナが一緒に来てくれて嬉しいな。また優しさに甘えちゃってる気もするけど……。

 その後、ボクたちはいつも通りいろんな事を話しながら学校へ行った。って言っても、ボクがほとんどしゃべってるだけなんだけど……。

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