第4話 「ミュージシャン」



私はこの後のミュージシャンを目指しその世界にドップリと浸って行く。

田舎育ちの自分が東京という大都会で活躍しようと奮闘しているそのくらいの頃に3回目のタイムスリップしていた。


瞼を開けると、ここも心に残っている懐かしい景色だった。


東京でようやくライブが出来る。


初めての東京のライブハウス。


その看板を数秒眺めて、苦節何年ようやく地方の片田舎からここまで来たのかと、しみじみとかみしめていたその場所だった。


ライブハウスに入るとスタッフのお姉さんから一通のお手紙が渡された。


「先ほどファンの方からお手紙を預かりましたのでお渡ししますね。」


嬉しかった。


東京にも自分たちの事を知ってくれている人がいるんだと感動した。


慌てて封を開け読んでみると、暖かいメッセージと応援が手書きで書かれていた。


でも名前は書かかれてなかった。


そして、その日から数年、何本もの失敗と成功を繰り返し壮絶な苦労を重ねて私たちはようやくメジャーデビューする事になる。


雑誌やテレビの取材も増え、動員もファンレターも何百倍にも増え調子のよさを感じていた。


宛名のない手紙はその日まで毎回届いた。


そしてステージから観るスポットライトに吸い込まれてまたタイムスリップするのを予感した。

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