第2話 「初恋」


真っ暗な視界からゆっくりと瞼を開けると茶色い地面が見えた。

自分の両の掌を見て不思議な事に気付いた。


小さな手.....。


これは子供の手.....。


辺りを見渡すと運動場のような場所で周りには沢山の園児達が楽しそうに遊んでいる。


「おい!悟!!早くこっちでサッカーやろうぜ!」


「う、うん」


私は何処かで見覚えのある子ども達に手を引かれるまま輪の中に入った。


何故か自分の意識と半分違う誰かの意識を共存させた感覚のまま、サッカーを楽しんだ。


そして、少しづつ周りの風景に懐かしさを感じながら理解をし始める。


そう、私は5歳の頃の私になっているのであった。


タイムスリップ、夢、現実、。。。


説明も理解もできないまま、ラインを越え転がっていったサッカーボールを拾い、校舎のガラス越しに見た私の姿は紛れもなく幼い頃の自分の姿であった。


そういえばいつもワザとボールを校舎側に蹴っては取りに行き教室で1人で座ってる女の子を笑わせてたな....


いつも一人ぼっちで寂しそうだったから、いつもこの時だけは必死に笑わせてたんだ。


笑った顔がとても可愛かったんだ。




名前も知らなかったけどこれが私の一番最初の初恋だったのーかもしれない。


見た目は5歳の小さな私は少し物思いに耽り、また輪の中へ戻った。


そして太陽の強い光に吸い込まれるが如くまた、意識は遠のいて行った。

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