第7話 調査隊、状況を確認す。
『やから、お前はシバクッ!』
そう言ってカオルは帝国軍に向かって走りだした。
「カオル! 待ってッ」
僕は慌ててカオルを追いかけようとした。
しかし、突然現れた大きな壁に行く手を遮られた。
「……シャルたん。落ち着いて、シャルたんが行ったら元も子もない」
いつもは気怠げに話をするアイラが真っ直ぐに僕を見つめ、そう述べた。
どうやらこの壁はアイラが創ったものらしい。
「いくらカオルでも、帝国軍相手じゃ……」
壁の向こう側からは戦闘が始まったらしく、聞いたこともないダダダッと何かが打ち出されるような音と共にカオルの雄叫びが聞こえてくる。
「カオちーなら大丈夫」
アイラは先程も飲んでいた見慣れない回復薬をグイッと一気飲みすると、僕に近づき微笑んだ。
「我々も同意見です。今のカオル君はどんな相手だろうと、止める事は出来ないでしょうね」
壁の向こう側を気にするサンディスと共に
「アイツが放っていた殺気……ああ、思い出したくもないわッ!」
「あの時は……怖かった」
「全滅する所じゃったからのぅ」
サンディスの話に他のみんなも感慨深げに頷きながらそう述べていた。
***
「ぇえ!? それじゃあバーウィッチの戦闘で街を破壊したのはカオルなの!?」
サンディス達からあの日の詳細を聞かされた僕は驚きに声を上げた。
「カオル君の力は人の域を超えています」
「そんなの当たり前だよ。あぃら達は
…………。
『
魔王がこの世界にまだいた頃に異世界より現れた強力な力を有する勇者達の別名だ。
彼らは御伽噺の中の存在としか思われていなかった。
しかし突然現れた彼らは、瞬く間に魔王を倒し、その後消息を絶っている。
「アイラもカオルも勇者……なの?」
アイラの唐突な話にその場にいた全員が面を食らった様だ。
「あぃらは違うよ? 最近、半年前くらいに、突然こっちの世界に来たの。多分、カオちーもそうだと思う」
彼女の話がもし本当なら、カオルやアイラの凄まじい力も納得出来る。
「もしかして、ウエダって人もそうなの?」
僕がそう述べると、アイラはゆっくりと首を縦に振った。
「帝国軍はカオちーで何とかなると思う。けど、アイツだけは無理だと思う」
深刻な表情でアイラはそう述べ、話を続けた。
「あぃらはジョーさんを助けたい。お願いします、力を貸して下さい」
深々と頭を下げたアイラの声は震えていた。
…………。
「そんなの当たり前でしょ?」
照れ臭そうにエリーゼがそう切り返すと、他のみんなもうんうんと頷いている。
「あ、ありがとう……」
瞳に涙を浮かべて、感謝を述べるアイラにエリーゼは「調子が狂うじゃない」と悪態を吐いていた。
「でも、敵陣のど真ん中にどうやって行くの? それにジョゼはウエダって人の能力下にあるんでしょ?」
仮にジョゼの所まで行けてもジョゼ自身に反撃されるかもしれない。
冷静に考えても、かなり難しい。
思いついく限り問題点を上げた僕に、アイラは涙を拭っていつもの調子で応えた。
「あぃらがガチれば、ワンチャンあるっしょ!」
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【伝承・伝説情報】
【
この世界に危機が迫っている時に現れると謂れている異世界人の総称。
この世界の人々より遥かに強大な力を有し、半世紀ほど前に魔王を倒した勇者一行も
彼らはこの世界にない知識・技術を有しており、それらはこの世界に革新的な発展を
冒険者の『
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