第6話 調査隊、状況を見極める?



 突然の事態に僕らは混乱した。


 ウエダという男はシャルジュ様が王子である事を知っているだけではなく、僕らの事まで知っていた様だ。


 しかし、僕やエリーゼの事はそこまで詳しくは知らないのだろう。


 恐らく、彼が知っている情報はジョゼ君から聞き出したに違いない。


 僕は視線をエリーゼに送ると彼女も意図を理解したらしく、コクリと首を縦に下ろした。



「おい、アイラ! どないしてん!?」


「さて、どうしましょうかね?」



 頭を抱えてうずくまるアイラ君にカオル君が近づくと、ウエダという男は提案する様に僕らに微笑んだ。


 しかし、その瞳の奥は一切笑っていないように見える。



「おい、コラァ! アイラとジョゼに何やったんやッ!」



 見下す様に微笑む彼に、カオル君は激情し怒鳴った。



「池淵さんには『まだ』何もしていませんよ? ジョゼさんには街で出会った際にスキルを使わせて貰いましたがね」



 どうやらジョゼ君はウエダという男の何らかのスキルの影響下にある様だ。



 …………。



「そうですね、私と取引致しませんか?」



 そう切り出した後にウエダは話を続けた。



「シャルジュ王子の身柄をこちらに引き渡して下さい。そうすれば、あなた方の『命』は保証致します。あ、そうそう。どこかに隠れている騎士団のお嬢さん、手出しは無用ですよ?」



 …………。



 どうやらルベルレットさんの事もバレているみたいだ。


 ウエダは未だ姿を見せていない彼女に釘を刺すようにそう述べた。


 そして彼の提案に、シャルジュ様は覚悟を決めた表情でスッと前へ出た。



「……僕がそちらに行けばみんなの命は助けてくれるんだね?」


「ダメッ! アイツの言う事を聞いちゃダメ!」



 そう述べるシャルジュ様に頭を抱えていたアイラ君が顔を上げて叫んだ。


 ……彼女の目から大粒の涙が流れていた。



「アイラ。大丈夫だよ」



 そんな彼女にシャルジュ様は優しく微笑み掛けた。



 …………。



 状況的に今しかない。


 そう確信した僕はエリーゼに合図を送った。



「おい、コラァ。勝手に話進めんなや」



 カオル君の一言で、僕らは行動を起こす事を止めざるを得なかった。


 僕はエリーゼに合図し再びタイミングを見計らった。



「シャルジュはウチのご主人様やねん。ウチはコイツを守るって契約なんや」


「ほぉ」



 そう述べるカオル君にウエダは腕を組み面白そうにそれを眺めている。



「それにな。わけ分からんけどお前はアイラを泣かした」



 威圧感のある声でカオル君がそう述べると銃を構えている兵士達が一歩後ろにたじろいだ。



「やから、お前はシバクッ!」



 そう叫んだカオル君の髪は逆立っていた。



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【粗暴者(チンピラ)カオルのMK5】


・自分が馬鹿にされた場合。特に『馬鹿』という言葉に反応します。


・朝、無理やり起こされた場合。


・女、子供を泣かせた場合。← New!!



 ※MK5とは…『マジでキレる5秒』までの略称です。


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