第9話 薫風団、問題児の集まり?



 当たり前の様にテーブルに着き、エールをグイッと傾けるギルドの最高責任者にその場にいた全員が動きを止めた。



「ぎ、ギルドマスター、ここで何してるんですか?」



 我に返ったダルベルトが恐る恐るアイヴォンのんべぇに尋ねた。



「ホホホ、お主らを労おうと思っての。ここ最近、主らには少しばかり無理をさせとるからのー」



 アイヴォンのんべぇの言う通り、ここ数日高ランクの冒険者たちは高難易度の依頼に従事させられている。


 今日、私たちが壊滅させたゴブリンの集落の件も本来は複数のパーティで行う様な依頼だ。


 恐らく、聖なる盾アイギス白竜団パロロコンも同じ様な依頼を請け負っていたのだろう。



「冒険者として当たり前の事ですよ」



 サンディスが爽やかな笑顔でそう答えると、他の連中もうんうんと頷いている。



「儂らも原因を調査しておるんじゃなが、未だ原因が掴めんのじゃ」


「別にウチは暴れられるんやったら何でもええでー。あ、ウチもエールで」



 お代わりを頼むアイヴォンのんべぇに便乗して、追加のエールを頼む私にシャルジュとジョゼが苦笑していた。



「明日も、ちと大変になるじゃろうが、宜しく頼む…『あぁーッ!』」



 運ばれてきたエールをいそいそと口元へ運ぶアイヴォンのんべぇの言葉を遮るように、ギルド内に大声が響き渡った。



「マスターッ!! こんなところでサボってたんですね! さあ、仕事に戻りましょう」


「ギャスタン君、少し待ってくれ。儂の、ワシのエール……」



 ギルドの奥から現れたギャスタンと呼ばれる男性はアイヴォンのんべぇを捕まえると、名残惜しそうにエールを見つめるアイヴォンのんべぇを引きずりギルドの奥へ消えていった。




 ***




 翌日、冒険者全員に召集が掛かり私たち薫風団もギルドに集まっていた。



「ふぁ〜……こんな早くに何やねん」


「何いってるんですか、もう昼ですよ」



 大きな欠伸をする私に、ジョゼが小さく耳打ちをした。



「今回集まって貰ったのは……」



 冒険者達の視線の先には昨晩ギャスタンという副ギルドマスターに連行されていたアイヴォンのんべぇだ。


 あの後も仕事をしていたのだろう、彼の目の下にはくっきりとクマが出来ていた。



 …………。



 今回、冒険者が召集されたのは、街道で頻発する魔物モンスター騒ぎをギルド全体で対処に当たる為らしい。


 低ランクの冒険者は、街道沿いの警備と出現する魔物モンスターの討伐。


 中ランクの冒険者は街道沿い、バーウィッチ近郊の森にて魔物モンスターの掃討戦。


 そして、私たち高ランクの冒険者は、複数のパーティ合同で森の奥へ向かい、原因の調査という事らしい。


 調査に高ランクの冒険者が複数パーティで向かうのは、余りにも高ランクの魔物モンスターが頻繁に出現する為らしい。



「それで調査へ向かうパーティの組み合わせなんじゃが……」


「はいはーい! あぃらはサンディスさんと一緒じゃないとこの依頼放棄しまーす!」



 アイヴォンのんべぇが調査の組み合わせを発表しようとした時、薫風団うちアイラあほが突然そんな事を言い出したのだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る