第9話 ヤンキー奴隷、真髄を披露する。



 ハンパない、マジで……



 私はわざと大げさな魔法でみんなを驚かせるつもりだった。


 勿論、そのせいで魔力不足に陥ったのは少し反省しないといけないと思う。


 けど、目の前で巨大熊マーダーグリズリー相手に一方的な攻撃を繰り出し続ける彼女に私は度肝を抜かれている。


 巨大熊マーダーグリズリーは確かに強い。けれど、私クラスの冒険者なら勝てない相手ではない。



「ジョゼ! 攻撃が来るよッ」


「ぜ、全然効いてないように見えるんだが……」



 それでも、シャルたんやジョーさんがそうであるように、普通は彼奴らに有効攻撃を加える事すら難しい筈なのだ。



「よっしゃーッ! 次やッ」



 しかし、彼女はそんな事関係ないと言わんばかりに『素手』で有効攻撃を巨大熊マーダーグリズリーに叩き込んでいる。



「ちッらちが明かないぞコレ」



 やはり、ジョーさん達は苦戦しているようだ。



 つか、そろそろいけんじゃね?



 私は自分のステータスを確認した後、詠唱省略ギャルスラングを使用した。



「ブチアゲ、チョベリバッ!」



 詠唱した魔法は強化魔法エンチャント弱体化魔法デバフだ。


 シャルたんとジョーさんに全ステータス上昇の強化魔法エンチャント巨大熊マーダーグリズリーには全ステータスを低下させる弱体化魔法デバフを掛けた。



「あれ? 急に体が軽く……」


「アイラが強化魔法エンチャントを掛けてくれたみたいだね」



 流石さすシャル、ぱねぇ。



 取り敢えず、これで彼らは何とかなるだろう。


 さて、魔力飴コレのお陰で魔力は大方回復したし、彼女の手助けでも……



「どぉーーんッ!!!」



 彼女の掛け声と共に爆発音が鳴り、巨大熊マーダーグリズリーに何かが炸裂する。



「はぁ♪ たまらんなぁーッ」



 頬を紅潮こうちょうさせて、悶える彼女の目の前には2門の大砲が白煙を上げていた。



「マジパネー。大砲とかまじアリエンティー」


「おい、アイラ何見てんねんッ。動けるんやったら彼奴あいつら助けたれよ」


「いぇあ、秒でいきまーす」




 ***




「俺らでマーダーグリズリーを4体討伐か……マジか」



 あぃら達の目の前には3体の巨大熊マーダーグリズリーが転がっている。


 ジョーさんの言う通り、正直最初はこのパーティでは無謀だと思っていた。


 しかし、シャルたんもジョーさんもこの間までG・Fランクだったとは思えないくらい奮闘していたし、何より一人で2体の巨大熊マーダーグリズリーを倒した彼女が凄すぎる。



「とりま、カオちーのアイテムボックスに入れといてよー」


「はぁ? お前も持ってんねんから自分のに入れや」



 あ、やっぱ知ってるんだー。



「え? アイラはアイテムボックス持ちなの?」


「まーねー」



 まあそれくらいは別にいいか、みんな悪い人じゃないみたいだし。



「ほな、コレはアイラが持って帰って「無理」」


「は?」


「なんかー、アイテムボックスが汚れそー、ていうか無理みたいな、マジで」


「あ? んな訳ないやろ。シバかれたいんかワレ?」



 このパーティなら上手くやっていけそうかも。



「カオちー、ガチ怖ーいッ」


「シ・バ・くッ♪」


「「姐さん(カオル)、落ち着いてッ!」」



 でも、やっぱ今時ヤンキーは無いわ。



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【アイテム解説】


【魔力飴】

 アイラ=イケブチのユニークスキル『異界錬金術マカフシギ』によって生成された異界の飴。


 使用すると魔力を少量回復し、使用中の魔力回復速度を飛躍的に加速させる。


 見た目は、チ◯ッパチ◯プスで、調合する素材によって味が変わる。

 アイラのお気に入りの味はストロベリーフレーバー。


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