第10話 ヤンキー奴隷、一杯食わされる?



「なーなーなー、アイラの飴ちゃんってどこで買ってるん?」



 それは新しい借家の居間で、皆が各々好きなように寛いでいる時の事だった。



 …………。



 冒険者ギルドにパーティ登録した際、優遇サービスとして一軒家を格安で借りる事が出来たのだ。


 今日はパーティでの初依頼が終わり、丸一日オフという事で各々が自由気ままに過ごしていた。


 シャルジュは長椅子にちょこんと座り、分厚い難しそうな本を静かに読んでおり、反対側では一生懸命に自らの爪の手入れをするアイラが座っていた。


 居間から見える庭ではジョゼが暑苦しくも自主トレに励んでおり、今は木剣で素振りをしている。


 私はというとそんな皆の姿を眺めながら、一人エールを煽っていた。



 …………。



 うん、めっちゃ暇や。



 そんな時に、ふと気になったのでアイラにそれを尋ねてみたのだ。



「アレー、手作りなんですけどー」


「マジで!? あんなん作れんの?」


「まーねー。あぃらの『異界錬金術マカフシギ』で作るんだけどねー」



 アイラは視線は爪に向けたまま、返事だけをこちらに返してくる。



「あー、アイラのユニークスキルやっけ?」


「そーそー、ぶっちゃけこのマニュキアとかもそれで作ったんだー。異世界ここじゃどこにも売って無いしねー」



 私はあまりそういう事に詳しくは無いが、言われてみれば異世界ここでそういった化粧道具を見た事はなかった気がする。



「マジで!? めっちゃ凄いやん! どうやんの?」


「んーーー、ちょいまち」



 そう言ってアイラはマニュキアが乾くのを少し待って、私の所へやって来た。



「おまたー」



 そしてアイラは徐にテーブルの上に大きな鉄製の鍋を出した。



「これで何すんの?」


「『異界錬金術マカフシギ』の実演的な?」



 どうやら『異界錬金術マカフシギ』は素材と素材を掛け合わして物を作るスキルらしく、今は何らや適当に素材を突っ込んで鍋の中身を掻き混ぜている。



「まんま魔女みたいやなー」


「…………」



 しばらく棒で鍋を掻き混ぜていると、鍋の中身が突然光った。



「出来たみたい。ほい」



 そう言ってアイラは鍋の中身を私に渡す。


 見た目はゼリービーンズの様なお菓子に見えるが、これは一体なんだろうか?



「とりま、食べてみ」



 アイラに勧められるまま、私はそのお菓子を一粒口の中に放り込んだ。


 その瞬間、彼女が笑いを堪えているのを私は見逃さなかった。



「クソまずいやんけッ!」


「あーそれね。なんとかビーンズの鼻くそ味だけしか出来無いレシピだから仕方ないよー」


「あ? お前わかっててウチに食わせたやろッ!」



 私は彼女の胸倉を掴み怒鳴った。



「てへペロッ♪」


「今日こそシバくッ!」



 __________________________________


【スキル解説】


異界錬金術マカフシギ


 アイラ=イケブチのユニークスキル。


 この世界の素材を組み合わせて調合する事により、異世界の物を作り出す事が出来るスキル。

 レシピ等は存在せず、何が出来るかは作ってからのお楽しみである。


 __________________________________


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る