第8話 ヤンキー奴隷、互いに実力を示す。



「マーダーグリズリーだ……」



 今回の依頼は未確認危険種の調査と討伐だった。


 恐らく、この巨大熊が今回の騒ぎの当事者だろう。



「マーダーグリズリーってAランクの魔物モンスターじゃないですかッ!」


「お、お俺らじゃコイツの相手は無理だろッ」



 シャルジュとジョゼは突然現れた危険種にビビり、震えていた。



「あ? 何や、ただの熊やんけ。脅かすなや」


「まじウケるー、ジョーさんとシャルたんビビり過ぎー」



 一方、私とアイラギャルは臆(おく)する事なく件の魔物モンスターと対峙する。



「ほな、お前が相手しいや」


「カオちー、マジ鬼畜きち



 アイラギャルはそう言いつつも、どこからとも無くチ◯ッパチ◯プスの様なキャンディを取り出し、それを咥えた。


 そして、スーッと息を整えた彼女の周りに光の粉が舞い始める。



宜保ぎぼれ』



 彼女が訳の分からない言葉を口にした瞬間、巨大熊マーダーグリズリーが突然暴れ始めた。


 しかし、どこを攻撃する訳でもなく巨大熊は空中を引っ掻き回す。



『カム着火インフェルノーォォォオオウ』



 再び彼女が訳の分からない言葉を唱えると巨大熊は炎に包まれ、跡形も無く消え去った。


 そして巨大熊がいた辺りには大きな魔石が一つ転がっていた。



 …………。



 巨大熊マーダーグリズリーを一瞬で焼き切った規格外の攻撃に全員が驚きに目を見張っていた。



「アイラ……凄過ぎでしょ」


「つか、あんなの秒で終わるっしょ」



 シャルジュが驚きに声を漏らすと、アイラギャルは大した事ないとつまらなそうに飴を舐めていた。



「さて、お客さんはまだおるらしいで」



 動揺を隠せない、シャルジュとジョゼに私は残酷な現実を突き付けた。



『『グルルルゥゥゥウッ』』



 どうやら巨大熊マーダーグリズリーは1匹ではなく複数体いたらしく、私たちは周りを囲まれてしまっていた。



「ヤバイ、パナい! あぃら魔力切れなんですけどー」


「しゃーないな今度はウチが相手したるやんッ。シャルジュとジョゼはそっちの1匹やで」


「「ぇえッ!?」」


「ほな行くでぇ、気張って行きやー」



 私は短剣ナイフを二本取り出し、巨大熊マーダーグリズリーの目に向かってそれを投げ、走り出した。


 短剣ナイフは見事巨大熊の両目に刺さり、熊は悶え苦しむ。



「おりゃーーッ!」



 私は熊の鳩尾みぞおちに正拳突きを加え、そのまま連続で正拳パンチを加える。



「おりゃおりゃおりゃおりゃーーッ!」


『グアアァッ!』



 熊もすかさず腕を振り下ろし私に攻撃を仕掛ける。


 勿論、すぐさま後ろに回避した私に攻撃が当たることなく熊の爪は空を切った。


 着地後、私はすぐさまジャンプし熊の脳天にかかと落としを喰らわせる。


 そして体勢を崩し凄い勢いで倒れ込んだ熊に、私は大剣でトドめの一撃を入れる。



『グオォォ』



 すると、熊は悲鳴の様な雄叫びを上げて絶命した。



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【スキル解説】


異界詠唱術ギャルスラング


 アイラ=イケブチのユニークスキル。


 異界の言葉に魔力を込めて詠唱する事により、魔法を発動する事が出来る。

 詠唱時間が短い分、魔力消費が通常の魔法を使用するよりも遥かに大きい。


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