第7話 ヤンキー奴隷、マジギレ寸前。



 大魔導士アークウィザードアイラギャルが加わり、私たちはCランクになってからの初依頼に挑んでいた。



「ちょー無理、マジ疲れたんですけどー」



 樹々が鬱蒼うっそうと立ち並ぶ森の中で、愚痴を呟きアイラギャルはその場に座り込んだ。



「とりま、茶でもしばいて、休みたいんですけどー」


「シャルジュ、アホがなんか言ってるでー」



 私は辺りを警戒しながら先に進もうとする主に声を掛けた。



「それじゃあ、少し休憩しようか」


「さすシャルMKマジ感謝


「てか、お前何もしてないやんけッ!」



 街を出発して半日、彼女は現れる魔物モンスターとの戦闘には一切参加せずただひたすら文句を言いながらここまで歩いていただけだった。



「えー、あぃらこのパーティのアイドル的な存在じゃん? あぃらがいるだけで華があるっていうかー、マジ天使的な?」


「あ? しばくぞワレ」


「さーせん、まじさーせん。カオちーマジぱねー」



 キレる限界ギリギリの私にアイラギャルは手鏡とマスカラでまつげを整えながら、適当な返事をする。



「マジでしばかなアカンみたいやな」


「姐さん。今は落ち着きましょう」


「あーそれねー、ジョーさんマジ神ってるわー」



 アカン、マジでしばきたい。



 私がブチ切れる寸前、アイラギャルが突然立ち上がった。



HK話は変わるけど、超やばたにえんじゃね?」



 彼女は私たちの後ろを指差し、軽い感じでそう述べた。



『グルルルゥゥゥウッ』



 そこには体長10mはあろう巨大な熊が立ち上がってこちらを伺っていた。



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魔物モンスター図鑑】


 『マーダーグリズリー』

 体長10m程の巨大熊。気性は荒く雑食の為、出会った動物や魔物を全て喰らう大食漢。

 巨大な腕から繰り出される斬撃は、防具をも切り裂くと言われている。


 爪や毛皮、肝は高値で取引され、その肉も珍味とされている。


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