第4話 ヤンキー奴隷、ヘコむ。



「おや、カオル殿。まだ居たのかね?」



 テーブルに突っ伏してした私に、仕事を終えたのだろうアイヴォンのんべぇがやって来た。


 ギルド中の魔法職に誘いを断られた旨(むね)を伝えると、アイヴォンのんべぇ自ら魔法職の冒険者を紹介してくれる事になった。



「それじゃあ夜の街に繰り出すとするかのぉ」


「おーーッ!」



 私とアイヴォンのんべぇはノリノリだったが、残りのメンバーはそうでもなさそうだった。



「シャルジュとジョゼは先帰って寝るか?」



 私なりに多少気遣って聞いてみたが、色々心配なので付いて行くという事であった。


 ……その理由が、なぜか釈然としなかったのは事実だ。




 ***




 アイヴォンのんべぇと一緒にやって来たのはギルドから程近い酒場だった。



『サンディスから離れなさいこの女狐ッ!』



 酒場に入るなり聞き覚えのある声が店内に響き渡っていた。



「ギルドマスター? 珍しいですね」


「ほほほ、ちょっとした用事での」



 その中心に居たのはサンディスイケメンだった。



「あーーッ! 出たわね、カオル=アサヒナ!」



 先程から大声を張り上げているのはサンディスイケメンのパーティメンバーのエリーゼつりめだ。


 彼らのテーブルには、いつだったかの忍者みたいなヤツと神父さんみたいなおっちゃん、それから髪飾りの子も一緒にいた。


 髪飾りの子は私の顔を見るなり、サンディスイケメンの陰に私を避けるかのように隠れた。



 ん? あのローブのヤツは知らんな……



 サンディスイケメンを挟んで髪飾りの子の反対側に、ローブを頭から被って顔を隠している輩が座っていた。



「立ち話もなんですし、座ったらどうです?」


「そうじゃの、取り敢えず乾杯するぞい」



 サンディスイケメンに勧められるまま私たちは同じテーブルを囲い、乾杯をした。




 ***




 いつの間にか和気藹々と宴が盛り上がり、ジョゼはヴィンセント忍者もどきと、シャルジュはマルカルロ神父のおっちゃんと意気投合したらしく熱心に話をしていた。


 私たちは、アイヴォンのんべぇサンディスイケメンエリーゼつりめハナ髪飾りの子、それとエリーゼつりめから『女狐』と呼ばれるローブの女とで話をしていた。


 話と言ってもたわいも無い世間話をエールを飲みながらバカみたいに笑っていただけだ。


 強いて言うなら、エリーゼつりめハナ髪飾りの子は会話には参加せず、終始サンディスイケメンに身を寄せる『女狐』にピリピリしていた。



「そういえば何の用だったんです? ギルドマスター」


「おー、そうじゃったそうじゃった。忘れるところじゃったわ」


「え? 何すんの?」


「ほれ、其方に魔法職の冒険者を紹介すると言ってたじゃろ」



 アイヴォンのんべぇに言われて酒場ここに来た理由をようやく思い出した。



「そんで、その魔法使いはどこにおるん?」


「彼女じゃよ」



 私の質問にアイヴォンのんべぇサンディスイケメンに寄り添っているローブの女に視線を送った。



『なーんだ♪ あぃらにー、用だったんだねー』



 すると、彼女はローブの下から不敵な笑みを浮かべたのだった。



 __________________________________


【登場人物紹介(再)】


 【聖なる盾アイギス】Bランクパーティー

  サンディス :男 24歳 騎士ナイト

  ヴィンセント:男 27歳 盗賊シーフ

  エリーゼ  :女 19歳 剣士フェンサー

  マルカルロ :男 42歳 神官プリースト

  ハナ    :女 15歳 弓使いアーチャー


 サンディスをリーダーとする、バーウィッチで一番有名な冒険者パーティ。

 彼が編み出す、様々な作戦で百戦錬磨の活躍を見せている。


 パーティ名の通り、『聖なる盾』として長年この街を守り続けている。

 

 リーダーのサンディスには女性のファンが多数いるが、実際に彼に接触できた者は少ないらしい…

 

 __________________________________


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る