第3話 ヤンキー奴隷、勧誘を断られる。



 私は彼女が座るテーブルに歩み寄り、何気ない顔で向かいに座った。



「久しぶりー」



 ……ブフォッ!!



 私の顔を見るなり、魔法使いの少女は飲んでいた飲み物を盛大に吹き出した。



「なななななんで貴方がッ!」


「細かい事は気にせんと、ウチのパーティ入ってやッ!」



 私の提案に彼女は混乱した様子でアワアワと焦っていた。



「ん? どうしたの……ッ、何でお前がここにいるんだよッ!」



 すると、これまた見憶えのある少年が私と少女の間に割り込んできた。



「お、お前も久しぶりやなー、えーっと……名前何やっけ?」


ゲンだよッ!」



 そう、この二人は私を倒しに来た冒険者集団の中に居た少年と少女だった。



「あー、玄? 今、この子と話してるから後でな」



 何やら酷く怒っている様子の少年を宥めてから、私は少女の方へ向き直った。



「なーなーなー。取り敢えず、お試しとかでウチん所で後衛やってくれん?」


「…………」



 私はスイと呼ばれる少女に話しかけているのだが、彼女は俯いたまま何も話さない。



「勝手に話を進めるな! スイは僕と二人でパーティを組んでるんだ!」



 代わりにゲンという少年が敵意を剥き出しに怒鳴ってくる。



「へーそうなんや、でもウチアンタより強いと思うけどなぁ?」



 それを横目で眺めながら、私は独り言のように呟いて見せた。


 すると、少年は急に押し黙った。


 どうやら、少なくとも彼には私が強いと認識されているらしい。



「ぁの……私は兄さんとパーティを組んでるので……すいませんッ!」



 そう述べると彼女は走って逃げてしまった。



「あ、スイ! 待ってよッ」



 彼女を追いかけて少年もどこかへ行ってしまった。



「あー、フラれてもたかー」




 ***



 その日、ギルド内にいた魔法職の冒険者全員に声を掛けたのだが、既に別のパーティを組んでいるという理由で全員に勧誘スカウトを断られてしまった。



 __________________________________


【登場人物紹介(再)】


 【玄翠】Bランクパーティー

  ゲン:男 13歳 魔法剣士

  スイ:女 13歳 魔法使いウィザード


 双子の兄妹、ゲンスイの二人だけのパーティー。

 二人の間に前衛後衛は無く、双子兄妹ならではのコンビネーションで敵を翻弄し鮮やかにほふる事で有名。


 前回のカオルとの戦闘で、翠はカオルの事が軽くトラウマになっている模様。


 __________________________________


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る