第6章 カオル式新兵訓練計画 〜我は汝を漢に成す〜

第1話 奴隷冒険者、ギルドに馴染む?



「よっしゃーッ! 行けーッ!」


「やっちまえーッ!」



 ギルド内の食事処の一角にむさ苦しい漢どもが集まって、熱い声援を送っている。


 その中央には、テーブルを挟んで男と女が手を握り合い力比べをしている様子であった。



「おりゃーッ!」



 女が気合を入れる様にそう述べると、先程まで均衡が徐々に崩れ、男が苦しそうな表情を見せる。


 そして徐々に男の手の甲がテーブルに近付いていく、男は必死にそれを持ち上げ元に戻そうと足掻(あが)く。


 しかし、無情にも手の甲はテーブルに当たり、ドンっと重そうな音を鳴らした。



「「「ぉおーーーッ!」」」



 決着が着いた瞬間、周りにいた野次馬から歓喜が上がった。


 そしてその中央では、男は悔しさに打ちひしがれ頭を垂れており、女は意気揚々とエールを煽っていた。



「これで何人目だ?」


「7人だぞ、誰かあの女を負かせろよ」


「勝てばあの掛け金貰えるんだろ?」


「今いくらだよ?」



 …………。



 女の側には金貨が8枚置いてある。


 彼女はギルドここにいる冒険者達を相手に『腕相撲』で勝負し、現在のところ全戦全勝なのである



「なんやなんやー。ギルドここにいる力自慢の冒険者(ヤツ)はこんなもんなんかー?」



 女は挑発する様に、周りにいる冒険者にそう述べると、店員にエールをお代わりした。



 …………はぁ。



 その姿を少し離れたテーブルから眺める美少年はなぜか溜息を漏らしていた。



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【ルール・制度紹介】


【冒険者ギルド規約】

 冒険者ギルドは国境を越えた組織であり、如何なる国・組織もそれに介入することは出来ない。


 冒険者ギルドは、冒険者の行動・負傷・病気等の一切について責任を負わない。


 冒険者は実力によって階級ランクを与えらえ、その階級ランクに応じた依頼を受けることが出来る。

 ※受けられる依頼は、自身の階級ランク及び一つ上の階級ランクの依頼のみである。


 冒険者の最高階級ランクはSランクで新人冒険者はGランクからの始まりとなる。

 S、A、B、C、D、E、F、G(階級ランクの種類)


 依頼を失敗した場合は違約金が発生し悪質な場合はその者を冒険者ギルドから除名処分とする。

 ※再登録が出来ない場合があります。


 冒険者階級ランクに定められた期間内に依頼を受けなければ、冒険者ギルドから登録を抹消される。

 Gランク冒険者:1ヶ月以内

 F、Eランク冒険者:3ヶ月以内

 D、C、Bランク冒険者:6ヶ月以内

 A、S冒険者:1年以内


 殺人・略奪等の犯罪を犯した場合は、その者を冒険者ギルドから除名処分とする。


 冒険者同士の私闘は禁止である。


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