第3話 それは、安全な変身魔法。
LARPの良さを指折り数えたら、両手両足を家族全員ぶん合わせても足りないのですが(笑)、何よりも最初に伝えたい、他にはない特徴と思っているのが
『安全に、自分を変えられる』
という点です。
『安全に』というのがミソ。
LARPをプレイしている人はみんな『役者』であり、LARP中に行われた行動は全て『舞台で起こったこと=現実社会に影響を及ぼさないこと』です。
サスペンスドラマで殺人犯が殺人を犯しても、『殺人犯を演じた役者』に罪はないですよね。作中で殺人犯は断罪されるけど、役者は別。
同じことがLARPでも起こります。
LARP中に何を言おうとも、それは『役』が言ったこと。その言葉、行動の責任は『役』が負うけど、中の人……つまり、役者(PC、NPC)が負うものではない。
「野郎、ぶっ殺してやる」とか「貴女の瞳の輝きは星のようだ」とか、普段の生活では300%言えないだろうセリフも、LARP中ならば言えます。
LARP中においてあなたは『現実社会では言えないこと』を好きに言っていい。それによって現実社会が揺らぐことはない。
――『自分はこんな風に変わりたい』を、安全に実行できる。
『自分を変えたい』は1億人中9,000万人が一度は思ったことがあることですが、実行できるかどうかは別問題。変えたいと思って変えられる人も、変えられない人もいます。
変えられない原因は色々ですが……『周りの反応』を恐れている人も多いのではないでしょうか。
自分を変えたいけれど、周りの反応が怖くてできない。変わった後の人生が想像できない。あるいは『周りの反応が怖いという理由をつけて』行動しない。
変わりたいという思いと、変わることへの恐れの間で揺れ動くのはよくある話です。
では
あなたがどう変わろうと、現実は変わらないという保証があったら?
『理想の自分』の振る舞いを、茶化さず受け止めてくれる環境があったら?
その『安心して変われる環境』がLARPです。
LARPを楽しんでいる人は全員が『役』。
そういうものだと思って動いていますから、あなたの行動に対して『役』として対応することはあっても、あなた自身に対する見方を変えることはありません。
しかも、LARPは固定のセリフがありません。あなたが言いたいことを言える。やりたいように振舞える。
「でも、結局はLARP内でのできごとでしょう? 現実は何も変わらないでしょう?」
そんな風に思うかもしれません。
それが、変わるんです。
確かに、LARPで演じた『理想の自分』は現実社会と関わりません。
でも、あなたの中に『理想の自分を演じた経験』が刻まれています。
今まで言ったことのなかった言葉、やったことのなかった行動をした『経験』が、あなたの中にあります。LARP前は踏み出せなかった一歩を、踏み出した状態になるのです。
熱血漢で仲間を率いる役をLARPでやった人は
『熱血漢で仲間を率いた経験』を持って現実に戻ります。
異世界へとワープした少年が、冒険の果てに現実に帰り、少したくましくなっているように。
魔法でアイドルのフリをしていた少女が、魔法を手放した後、人を魅了する笑顔を見せるように。
LARPとは『安全な世界で、望む自分を演じ、経験を持ち帰る』場になりえるのです。
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