ディケドンと虹のマント

第5話 ぶどうの森（もり） 〜 グレープタウンの一大事（いちだいじ）

次（つぎ）の朝（あさ）ディケドンはホルンを吹（ふ）き鳴（な）らすとポルポの所（ところ）へ行（い）きました。

虹（にじ）のマントを

まだ寝（ね）ているポルポに

そっとかけ

『〜バラの棘（とげ）が刺（さ）さらないよう、このマントを使（つか）って下（くだ）さい〜』

と手紙（てがみ）を置（お）いて帰（かえ）りました。

住人達（じゅうにんたち）は

「金色（きんいろ）のスカーフが無（な）くなった！」

と、大騒（おおさわ）ぎ。

ポルポは虹（にじ）のマントに大騒（おおさわ）ぎ

「星（ほし）が願（ねが）いを叶（かな）えてくれたわ」

ポルポは言（い）いました。

「流（なが）れ星（ぼし）の一つ《ひとつ》かな？」

「沢山（たくさん）星（ほし）が流（なが）れたのだから皆（みんな）の願（ねが）い事（ごと）も叶（かな）うはずだよ」

「じゃあ金色（きんいろ）のスカーフが無（な）くなったのは何故（なぜ）なんだい？」

「星（ほし）が金色（きんいろ）のスカーフと交換（こうかん）したのかも」

「私（わたし）は交換（こうかん）なんかしてないわ。

目覚（めざ）めたら虹（にじ）のマントと手紙（てがみ）が置（お）いてあったんだもの」

ポルポは置（お）いてあった手紙（てがみ）を皆（みな）に見（み）せました。

手紙（てがみ）には山栗（やまぐり）の棘（とげ）が沢山（たくさん）ついています。

「この手紙（てがみ）を書（か）いたのは、ディケドンじゃないか！」

∵

♬12回（かい）のお昼（ひる）のホルン

ご飯（はん）の用意（ようい）は出来（でき）たかな？

皆（みな）はスカーフが無（な）くなったので元気（げんき）がありません。

ディケドンの所（ところ）へ行（い）き

「虹（ニジ）のマントを作（つく）ったのはディケドン、君（きみ）だろう」

と聞（き）きました。

「この美（うつく）しい虹（にじ）のマントはどうしたんだい？」

ディケドンは黙（だま）っていましたがラシャ湖（こ）で見（み）た光（ひかり）のカーテン

金色（きんいろ）のスカーフの事（こと）全（すべ）て話（はなし）ました。

「こんなに素敵（すてき）なマントは見（み）た事（こと）がないわ。

ディケドンありがとう」

ポルポはお礼（れい）を言（い）いました。

タウンの住人達（じゅうにんたち）は頭（あたま）をひねり

「………みつばちの羽（はね）はどうかな？」

「虹色（にじいろ）のうちわができるんじゃないか」

「スープを冷（さ）ますのにちょうどいい！」

そこで皆（みな）はディケドンに作って貰（もら）おうと蜜蜂（みつばち）の羽（はね）を集（あつ）めます。

ディケドンは再（ふたた）びラシャ湖（こ）へ向かい

蜜蜂（みつばち）の羽（はね）を光（ひかり）のカーテンに投（な）げ入（い）れてみましたが

虹色（にじいろ）に光（ひか）る事（こと）は無（な）く

風（かぜ）に飛（と）ばされてしまいます。

次（つぎ）は葡萄（ぶどう）の皮（かわ）。

ディケドンは何度（なんど）もラシャ湖（こ）に行（い）きますが

蜜蜂（みつばち）の羽（はね）も葡萄（ぶどう）の皮（かわ）も全（すべ）て無理（むり）でした。

「金貨（きんか）が無（な）くちゃ！」

「金色（きんいろ）のスカーフであれば虹色（にじいろ）に輝（かがや）くのよ」

「ではソリットさんにキャンディを届（とど）けよう。また金貨（きんか）が貰（もら）えるよ」

♪

ディケドンの肩（かた）に乗（の）っかってタウンの1人（ひとり）がラドット村（むら）へ出（で）かけます。

「蜂蜜（はちみつ）キャンディはいりませんか？」

「ソリットさんのお家（うち）はどこですか？」

大（おお）きなディケドンと、小（ちい）さなタウンの住人（じゅうにん）に村人（むらびと）達（たち）はびっくり！

ですが

キャンディを見（み）ると

「美（うつく）しい声（こえ）になる蜂蜜（はちみつ）キャンディは君達（きみたち）が作（つく）っているのかい？」

１人（ひとり）の村人（むらびと）がディケドン達（たち）に話（はな）しかけてきました。

「はい。グレープタウンから参（まい）りました。

カロットマーさんが道（みち）に迷（まよ）っていた時（とき）

ソリットさんがご案内（あんない）してくれたのです。

大事（だいじ）なお手紙（てがみ）でしたので

タウンの住人達（じゅうにんたち）はとても喜（よろこ）びました」

ラドット村（むら）の村人（むらびと）達（たち）は小（ちい）さな小（ちい）さなグレープタウンが見（み）つかったと大興奮（だいこうふん）！

「キャンディーを１つ私（わたし）にも売（う）っておくれよ」

村人（むらびと）は金貨（きんか）を渡（わた）し

キャンディを食（た）べました。

蜂蜜（はちみつ）がとろ〜りお口（くち）に広（ひろ）がって

キラキラと輝（かがや）く美味（おい）しさです。

感激（かんげき）した村人（むらびと）は

ソリットさんのお家（うち）を案内（あんない）してくれました。

🎶

ソリットさんのお家（うち）からは歌（うた）が聞（き）こえ

大勢（おおぜい）の人（ひと）が音楽（おんがく）を楽（たの）しんでいます。

「美味（おい）しい蜂蜜（はちみつ）キャンディーを作（つく）られた方々（かたがた）ですね。

歌（うた）えるようになってすっかり元気（げんき）になりました。

今日（きょう）は歌（うた）を聴（き）いていってくださいね。」

今度（こんど）は素晴（すば）らしい演奏会（えんそうかい）に招待（しょうたい）されました。

美（うつ）しい声（こえ）になると評判（ひょうばん）の蜂蜜（はちみつ）キャンディは大人気（だいにんき）！

持（も）って行（い）ったキャンディは

全部金貨（ぜんぶきんか）に変（か）わりました。

🎶

「これで虹（にじ）のマントが作（つく）れるぞ」

「早（はや）く金貨（きんか）を鍛冶屋（かじや）に！」

「ほら蜂蜜（はちみつ）を絞（しぼ）って！」

♪ポコロン ポコロン ポコポロン♪

皆（みな）は大忙（おおいそが）し！

♪

トントン、カンカン、鍛冶屋（かじや）が叩（たた）く

トントン叩（たた）けば金（きん）の皿（さら）

カンカン叩（たた）けば金（きん）の盆（ぼん）

もっと叩（たた）けば金（きん）の羽衣（はごろも）。

柔（やわ）らかな羽衣（はごろも）が出来上（できあ）がり

いよいよディケドンはラシャ湖（こ）へ。

凍（こご）える寒（さむ）さの中（なか）

羽衣（はごろも）を持（も）っていてもすぐにオーロラは現（あらわ）れません。

静（しず）かな氷（こおり）の大地（だいち）はディケドンを見（み）つめているようでした。

ディケドンは空腹（くうふく）でしたが魚釣（さかなつ）りの葡萄（ぶどう）の蔓（つる）も無（な）く

木（こ）の葉（は）も土（つち）も全（すべ）て凍（こお）っているラシャ湖（こ）には

食（た）べ物（もの）は見（み）つかりませんでした。

空（そら）からは雪（ゆき）が降（ふ）りディケドンは手（て）の平（ひら）に集（あつ）めるとそれを食（た）べました。

そして身体（からだ）は冷（ひ）えきり動（うご）けなくなりました。

シャー……… ララ………

音（おと）のような音（おと）

眩（まぶ）しい光（ひかり）の空（そら）

氷（こおり）の大地（だいち）

七色（なないろ）に輝（かがや）いて

ディケドンは力（ちから）いっぱいスカーフを投（な）げ入（い）れました。

金色（きんいろ）の空（そら）を見上（みあ）げ

疲（つか）れ切（き）ったディケドンは

氷上（ひょうじょう）で寝（ね）むってしまいました。

∵

「キャンディはできたかい？」

「蜂蜜（はちみつ）が足（た）りないよ！」

グレープタウンの住人達（じゅうにんたち）も大忙（おおいそが）しで帰（かえ）りを待（ま）っています。

「虹（にじ）のマントは出来（でき）たかな？」

「金色（きんいろ）のスカーフだから大丈夫（だいじょうぶ）」

「あっサワーブレッドが焦（こ）げてるぞ！」

「蜂蜜（はちみつ）が硬（かた）いよ！」

「いったい今（いま）は何時（なんじ）なんだい？」

ディケドンのホルンが鳴（な）らないので

料理（りょうり）も失敗（しっぱい）ばかり。

戻（もどら）ら無（な）いディケドンを心配（しんぱい）し

住人達（じゅうにんたち）はラシャ湖（こ）へ探（さが）しに行（い）く事（こと）にしました。

とても寒（さむ）い氷（こおり）の大地（だいち）はタウンの住人達（じゅうにんたち）には広（ひろ）すぎて

歩（ある）いて行（い）くのは大変（たいへん）です。

「蜜蜂（みつばち）にソリをひかせよう」

葡萄（ぶどう）の葉蔓（はづる）を編（あ）みソリを作（つく）ると

蜜蜂達（みつばちたち）に結（むす）び付（つ）けました。

風（かぜ）に乗（の）り山道（やまみち）を進（すす）むと

森（もり）の出口（でぐち）が真（ま）っ白（しろ）に輝（かがや）いて。

冷（つめ）たい空気（くうき）が流（なが）れると

音（おと）が消（き）え

静（しず）かな銀世界（ぎんせかい）の湖（みずうみ）と

七色（なないろ）の光（ひかり）は

心（こころ）が洗（あら）われるようでした。

「なんて綺麗（きれい）な風景（ふうけい）なんだ……」

何度（なんど）もディケドンを呼（よ）びましたが返事（へんじ）はありません。

皆（みんな）も凍（こご）えそうでした。

風（かぜ）が記（しる）したのか

七色（なないろ）の光（ひかり）が揺（ゆ）れると

虹色（にじいろ）に輝（かが）く大（おお）きな山（やま）が目（め）の前（まえ）に現（あらわ）れました。

「虹（にじ）のマントよ！」

駆（か）け寄（よ）ると

虹（にじ）の山（やま）は

マントに包（つつ）まれ凍（こお）っているディケドンでした。

「早（はや）くディケドンを助（たす）けて！」

皆（みんな）は大急（おおいそ）ぎで蜜蜂（みつばち）を集（あつ）めると凍（こお）ってしまったディケドンを温（あたた）めます。

蜜蜂（みつばち）は隙間無（すきまな）くディケドンを包（つつ）み込（こ）み

高熱（こうねつ）を出（だ）すと氷（こお）りを溶（と）かしていきました。

「ディケドン！目（め）を覚（さ）まして！」

ポルポも叫（さけ）びます。

降（ふ）り積（つ）もった雪（ゆき）で小（ちい）さなポルポも凍（こご）えディケドンの頬（ほほ）に寄（よ）り添（そ）いました。

ディケドンはそっと目（め）を開（あ）けポルポの雪（ゆき）を払（はら）い避（よ）けます。

凍（こお）っていたディケドンを包（つつ）み込（こ）んでいた虹色（にじいろ）のマントは消（き）えて

元（もと）の金色（きんいろ）のスカーフに戻（もど）りました。

「良（よ）かった…。

ディケドン…

君（きみ）のホルンがなくちゃ困（こま）るんだから」

「ありがとうディケドン。

虹色（にじいろ）の光（ひかり）のカーテンは素晴（すばら）らしい景色（けしき）だったよ」

「私達（わたしたち）をここへ連（つ）れて来（き）てくれてありがとう」

タウンの住人達（じゅうにんたち）は皆（みな）泣（な）きました。

∵

∵

∵

∵

ドンッドンッ、ザーザー、バタン、ドシン。

今日（きょう）もグレープタウンでは力（ちから）を合（あ）わせて美味（おい）しい食事（しょくじ）を作（つく）っています。

蜂蜜（はちみつ）キャンディは大評判（だいひょうばん）！

ポルポは虹（にじ）のマントを羽織（はお）り薔薇（ばら）の花（はな）を摘（つ）みに行（い）きます。

もう棘（とげ）は痛（いた）くありません。

アルカはぶどうスープ作（つく）りが熱（あつ）いのでシロツメクサ草（くさ）を編（あ）みマントを作（つく）りました。

「私（わたし）の虹（にじ）のマントよ！」

ディケドンはフレンチホルンを吹（ふ）き鳴（な）らし

今日（きょう）も元気（げんき）にグレープタウンに時間（じかん）を知（し）らせます。

終（おわり）