薄いココロ
@yabutagui2
ココロ
ある国に、男の子がいました。その男の子はお金もそこそこ持っていて、頭も悪くはなかったそうです。なので普通に暮らすには、不自由がありませんでした。しかしその男の子は「ココロ」というものを持っていませんでした。なのでその男の子は、周りの人々から、「愚か者」と呼ばれ侮辱され、殴られ蹴られ時には死にかけた時もありましたが愚か者はそれほど気にしていませんでした。ある時魔女が、人々から暴行を受けている愚か者を見かけました。見るにみかねた魔女は、愚か者に問いました。
「なぜあなたは人からあんな愚行を受けているのですか?やり返してみてはいかがですか?」
すると愚か者は、
「僕が「ココロ」を持っていないのがいけないのです。僕が他の人とは違うからいけないのです。やり返す権利はどこにもありません。」
それを聞いた魔女は愚か者を哀れに思い、彼に魔法をかけました。「ココロ」を与える魔法です。魔法をかけた後で、魔女はこう言いました。
「その「ココロ」は所詮魔法で作った偽物。だから強い「ココロ」への衝撃を与えられてしまうと壊れてしまうの。どうか気をつけてくださいね?そして「ココロ」が壊れた暁にはあなたは死んでしまうの。だから楽しいことだけをやって生きていきなさい。」
それからというもの男の子は、楽しいことばかり、やって生きていきました。「ココロ」がなかった男の子にとっては、何もかもが新鮮でどれもやりがいを感じ、楽しかったそうです。
働き者の男の子は大層評判が良くなり、人々から尊敬されるようになっていきました。青年は、このような楽しい日々をくれた魔女に感謝と憧れを抱いていました。しかしそれはいつしか、恋情へと変わっていきました。
そしてついに青年は魔女を探すことにしました。何日も何日も何ヶ月も、何年も探しました。「ココロ」を授かったとき二桁の年齢にも満たしていなかった男の子は、いつしか青年になっていました。
青年がもう見つからないのかもしれないと考え始めるようになったとき、ようやくたった一つの情報を手に入れました。あの魔女はなんと、青年が住んでいた国の王女様だったのです。青年は喜びました。とても喜びました。やっとあの魔女に会えるのだと。しかし相手はあの王女です。そう易々と会うことのできる相手ではありません。しかし幸いなことに翌日、お城で祝宴会が開かれるそうです。
そして翌日、お城は大勢の人で賑わっていました。男は、王女を探しましたが見当たりません。見つからないままお昼になってしまいました。お昼ご飯を食べながら王女様を探しているとついに王女様がいらっしゃいました。しかし何やら変です。白いドレスを見に纏っています。それに整った顔の男が隣にいます。突然音楽が流れました。幸せそうな音色です。男の目からほおに何かがすぅっとつたっていきました。それは止まりません。二人ともまるで太陽のように明るい顔をしていました。鉄の歯車が軋むような音がしました。そして胸が熱くなりました。流星のように流れるように熱くなっていき、そのまま男は………………
薄いココロ @yabutagui2
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