3W     佐々木さんの天井じゃない


 街の電気屋さんとして電気工事をしていた最中、交流200Vを直に食らって感電した俺は意識を取り戻した。どうやらここは200V《ボルト》のエアコンを納品しにきた、依頼主の佐々木さん家じゃないらしい。ここは病院のベッドなのか? と思っていたが、見知らぬ天井だ。状況が違うらしい……。


 意識がハッキリした俺の容姿は、佐々木さんの工事現場と同じ、街の電気屋さん作業着に帽子をかぶり、工事をするためのバッグに電気ケーブルと工事部品と小物を入れ、工具を入れた腰道具が装備されている。


 このベッドから見える光景は、俺が住んでいた場所と違う空気と景色で、パッと見たところ電気コンセントもない。照明もなく、西洋の石とモルタルと木がアクセントに使われている建物みたいだ。横を見ると、俺に話しかけていた魔法使いの少女がいる……。ここはドコなんだ??


「あなたは襲雷人シュライトですね? 私は国王直属の入国管理ギルドから、襲雷人を管理する任務に就いているシ・アタック・ハートという者です」


 魔法使いはシ・アタック・ハートと言う名前らしい。どうやら俺のことを、襲雷人シュライトと呼んでいる。そしてただの魔法使いではなく、入国管理ギルドという訳の分からない組織に所属をして、任務に就いている小柄な少女みたいだ。俺は現実世界ではなく、異世界にいるようだ。ということは……街の電気屋さんの俺が異世界にいるということか? 夢か? 目の前の魔法使いの可憐な容姿とは裏腹に、厳格な口調に変っていく。


「王国に入国した者に対して、入国管理ギルドのルール第24条に従い、私が即座に入国ビザの確認をしなければなりません」


 そう言い放つとベッドで横になる俺に対して、でんきやさんの命である装備品の作業道具を勝手に調べ出す。俺は抵抗を試みたが、街のでんきやさん腰袋の道具を一つ一つ確認している。そしてすべての道具を並べて、入国ビザを持っていないことを悟ったのか分からないが、表情が強張り、強い口調で言い放つ。


「ビザを持たない襲雷人は入国ルールに従って抹殺するか、強制奴隷にするかを決めなければなりません! あなたはどちらを希望しますか?」


 えっ? ちょっと!! なんだろうこの急展開? しかもベッドで寝ている人に対して、勝手に俺の大切な仕事道具まで没取されそうな雰囲気……。俺ちょっと涙が出てきた。この魔法使い、究極の2択を迫ってきた? いやこれは孔明の罠? むしろ1択だよね? 何を言っているんだよ??!!!


 ちょっと待ってくれ! 俺は、依頼主の佐々木さんのエアコンの納品と取り付け工事をしに来たんだ! 入国した覚えもないし、抹殺されたくもないし、強制奴隷にもされたくない! そもそも襲雷人ってなんだよ! 俺はベットから重い体で、大きな声を魔法使いに張り上げた。その声が室内に響き渡る。


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