事後処理
その後の事はそう難しくは無かった。
学園に戻り、事態を報告。教員は全員に招集命令が下され、旧演習所が調査された。
今回の事件の首謀者である、エーリカとミハエルの退学はその日のうちに決定した。理由としては禁術の使用と教師の誘拐。荷担した生徒達は一週間の停学処分が下された。
エーリカが手に入れて、ミハエルに与えた禁術の魔術書はエーリカの個人的なツテによって厳重な偽装を施された上で送られてきたものであるらしい。
帰ってからソルファもジーンもすぐさま病院に担ぎ込まれた。幸い、酷い怪我もそれほどもなく数日横になっていれば復学出来るという診断結果が下りた。
事件は闇へと葬りさられ、関係者には口封じが徹底された。
勝った二人が褒め称えられることは決して無かった。
全部終わった後、お見舞いに来たマリアに「ありがとう」と言われたのが、唯一の賞賛で得たものだった。
それだけで、ジーンとソルファには十分だった。それだけのためにそこまで走って行ったようなものだったから。
退学になったミハエルとエーリカの噂は少しだけ聞くことが出来た。エーリカは家の面子を潰したことによって自宅である屋敷に軟禁され、ミハエルは家へと連れ戻されたがその後行方不明となったらしい。
ミハエルをソルファが最後に見たのは退学になり、教師に連行されていく姿だった。その時にも以前のような精悍な顔つきでは無く、魔術書を手に入れてからの笑顔を常に浮かべていた。
ソルファは、魔術書が彼を狂わせたというよりも、魔術書が強烈な原体験となって彼の性格を変えたのだろうと思った。
そうなれば、恐らく以前の目標には戻らない。あの魔術書を手にしたときの原体験を求めて出て行ったのだろうと思った。
季節は秋から冬へと移り変わり。年明けに卒業試験が行われた。ソルファがミハエルのいたところを埋めて一位になり、ジーンは相変わらずだったが、それでも自分のやれる限りのことをやって、卒業の単位を獲得した。
「結局使えるようにはならなかったな」
試験後にジーンはつぶやく。
「でも、別に良いじゃないか。君は強いし、みんな認めてくれたじゃないか。それに僕とやってる訓練でも少しずつ成果は見えてきているし……」
ジーンとソルファは、事件後も地道に教え合いを続けていた。ジーンは魔術を使えるようにはなれなかったが、わずかに手がかりをつかむことは出来るようになって来ていた。
「ま、それもそうか。気長にやっていくかね」
そう言って気楽に笑った。
以前のような切迫した複雑な気持ちも抱いてもいないようだった。
卒業まではあと数週間を切っていた。ここで出会った人達ともう一生合わなくなるかもしれないと思いつつ、ソルファは日々を過ごしていた。
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