水の精霊VS木の精霊

「おはよぉー皆ー。梢復活致しましたぁー」

 

「お?もう風邪は治ったのか?」

 

「はい。宵さんの薬でもうすっかり」

 

「それは良かった」

 

「所で....葉月ちゃんと駿はどうしたのぉー?駿はともかく葉月ちゃんは絶対時間を守るのに」

 

「葉月は....色々あって奥の医務室で寝てるよ....駿が付き添ってる」

 

「え?あの駿が?嫌われてるのに?まぁでも良かったねぇ。葉月ちゃんも駿が隣にいて寝てるのなら心を開いたってことだよねぇ....」

 

「まぁ、そういう事になるな....」

 

そんなことを話していると後ろで扉が開く音がした

 

「おはようございます....」

 

「おはよう葉月。もう大丈夫なのか?」

 

「えぇ、もう充分休ませてもらいましたから」

 

「でも大事をとって今日1日はゆっくりしていろ。急ぎの任務もないしな」

 

「宵さんが言うならそうさせてもらいます....」

 

「そういえば梢が休んでる間に聞き取り調査の依頼が入ってたんだ。祐輝を連れて一緒に行ってくれ。」

 

そこまで宵が言うと今まで黙っていた祐輝が口を開いた。

 

「僕もですか?」

 

「この前は聞き取り調査では無かったからな。やり方とか教えてもらえ」

 

「分かりました。では行ってきます」


「行ってくるねぇー。葉月ちゃんもお大事にー」 

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「では、聞き取り調査していきましょーか」

 

そう言うと梢は小声で言った

 

「『証明の木』」

 

「よーし。これで準備OK!さぁ、どんどん調査するよぉー」

 

「あの、僕はどうすれば....」

 

「んー。君に聞き取り調査は出来ないから私の案内係かなぁー。宵さんからの目撃情報あったっていう資料みてそこに連れていってよ。」

 

「いいですけどそれまた何でですか?」

 

「私ねぇー。方向音痴だからすぐ道に迷っちゃうんだよねぇー」

 

あぁ、僕はその為の付き添いかと何となく理解した祐輝であった。

 

「まずは....?」

 

そう言いかけた祐輝の目線には1人の少女が居た。おかしな所は何も無かった....だがどうしても気になってしまった。

 

 

少女が何かを呟いた気がした....その瞬間僕は後ろに吹っ飛んだ....

 

「グッッ....」

 

思ってたより衝撃は来なかった。後ろになにかクッションの様なものがあったからだ 

 

「祐輝君大丈夫?立てる?」

 

「はい....何とか....」

 

そういい祐輝は後方を確認した。そこには手の形をした木の根があった

 

「梢さんこれは....」


「まぁまぁそう急かしなさんな祐輝君。時期に分かるから....そして危なくなったら絶対逃げて」

 

普段危機感というものが無さそうな梢が余裕が無さそうな顔をして言った。

 

「あら、気絶してくださったら楽でしたのに....残念ですわ」

 

声の主は先程祐輝が気になった少女であった。ゴスロリを来た何やらおかしな雰囲気の少女だった

 

「あれぇー?水の精霊使いさんがどうしてこんな所に?君は暗殺専門でしょー?」

 

「まぁ、説明は後にしてまずは自己紹介をした方がよろしいかと....そちらの男の子が困っていますわよ」

 

「暗殺者が呑気に自己紹介とは笑えるねぇー。まぁ、ご勝手にどうぞ」

 

梢がそう言うと少女は何やら自己紹介を始めた

 

「わたくしはマフィアの暗殺者大野宮 奈緒と申しますわ。ボスの命令により貴方がたどちらかを人質として連れ帰らなければなりません。さて?どちらが人質になって下さいますこと?」

 

「さて、」と奈緒が言った

 

「さて、おしゃべりはここまでにして大人しく誰か付いてきてくれませんこと?そうすれば戦わずにすみます。」

 

梢がすぐさま拒否した。その瞬間鋭いカッターのようなものが祐輝の頬を掠めた

 

「そうですか。それは残念ですわ....ならば力ずくで連れ去るのみ。出てきなさいウンディーネっ!!!」

 

そう言うと奈緒の背後に水の精霊が現れた

 

それは見た梢はすぐさま臨戦態勢に入った。


「こっちもいくよぉー。出てきてルーシー」

 

2人の精霊使いによる戦いだった。祐輝は何も出来ずただその場に突っ立っていた....

 

「ねぇ、奈緒ちゃん。卑怯じゃない。なんで水の刃物なんて飛ばせるのー」

 

「貴方は守ってばっかりですわね。少しは攻めてきたらどうですの?」


「あ、ちょっと相談タイムー」

 

そう言うと梢は木の根を自分達の周りを囲むようにして覆った。最初からこうすれば良かったのではと思っていると梢が小声で言った


「ここは私がどうにかするから隙を見て祐輝君は逃げて。そしてこのことを誰かに伝えて。」 

 

「で、でも....」と祐輝が言いかけたが梢は首を横に振った

 

「ダメ。能力にもね得意不得意があるの。祐輝君は近接戦タイプなんだからこうやって水の刃物バンバン飛ばしてくるような相手と戦ったら即、死だよ。良いからここは私に任せなさい」

 

祐輝は頷くしかなかった。祐輝が頷くのを確認すると梢は再び戦闘に意識を向けた

 

「さて、奈緒ちゃんだっけ?連れ去られる前に何故連れ去らなくてはいけないのか理由を聞こうか。」

 

少しの沈黙の後奈緒は口を開いた。そして衝撃を受けた。葉月が元マフィアだと言う事を聞いたからだ。そして、自分は葉月の元部下なのだと....

 

「まぁ、葉月さんがわたくしの元上司何て今回の任務には全く関係がありませんの。ただ一言ボスから連れてこいと言われた。わたくしはそれに従いここに来ただけですわ。」

 

理由は奈緒には分からないという。そこで梢にある考えが浮かんだ。「もし、ここで連れ去られればボス直々理由を教えに会いに来てもらえるかも知れない」と....そうとなれば祐輝にこのことを伝えねば....

 

「んー。まぁ、理由は分かったからさぁーもう刃物飛ばすのやめない?私防御するの疲れちゃった。それと私が捕まるからそこの男の子はちゃんと逃がしてあげてよ。」

 

祐輝は驚いた。さっきは隙を見て逃げろと言った梢が今度は自分から捕まると言い出したのだから。

 

「まぁ、そういう約束でしたからね。いいですわ。その代わり貴方は道中暴れないでくださいね。もう、帰っていいですわよそこの貴方。」

 

どうやら祐輝は本当に何も無いまま帰されるようだった。梢が考えていることが全くわからなかった

 

「あ、そうそう」と奈緒が思い出したかのように言った

 

「忘れるところでしたわ。貴方には伝言としてこれを葉月さんに届けてくださいまし」

 

「これは?」と祐輝が訊ねる

 

「わたくしも内容は知りませんの。ただボス直々の手紙ですことよ。ちゃんと渡してくださいましね。それでは」

 

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祐輝は風雷光に着くとすぐさま事情を説明した。

 

「ふーん。ボス直々とはそれはそれは....」

 

「葉月は行かなくていい。あたしと祐輝と雷光さんで行こう」

 

それを聞いた葉月は何か言いたげだったが宵が何を言っても許可をしなかった

 

「あの俺は....」そう口を開くのは駿だった。

 

「お前は葉月を見張っててくれ。どうしてもマフィアの本部に行こうとしたら全力で止めろ。いいな」

 

「了解」

 

「だって、これは私のせいなのに....」

 

そう呟く葉月の手元には先程奈緒から渡された手紙があった。

 

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私の親愛なる元部下葉月ちゃんへ

 

この前言った通り君にこちら側に戻ってもらおうと少々手荒なことをさせてもらった。勿論人質になった子には手を出さない。ただ人質の子を返して欲しければ君が私の元へ戻ってきなさい

 

------------------

これが手紙の文面だった。


「私はあんな所もう....」

 

そう呟く葉月に駿が自分の肩に葉月の頭を寄せた

 

「落ち着いて。大丈夫だからきっと無事に梢さんは戻ってくる」

 

葉月はまた何か言いたげだったが口を閉ざしてしまった 

 

 

 

それぞれが出来ることを考え梢奪還に動き出す


 


 



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天才少女の能力事情 深淵黒猫 @hukabuchi-kurone

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