本日晴天そして厄日なり

風雷光に向かう私に視線が突き刺さる。当たり前だ。この暑い日に長袖長ズボンという服装だそんな変人がいたら誰だって振り返りたくなる。だが私はこの服の下の醜態を人に晒す訳には行かないのだ。

「今日もいい天気だ!死にたくなるよ!」私『森 葉月』ははっきりと言ってしまえば死にたがりだ。宵と風雷光の存在があって今ここにいるような人間だ。だが勘違いしないで貰いたい。別に死を尊重している訳ではない。ただ、自分の汚れたかこの数々そして親に捨てられたその時点で私の存在は無いも同然だろう。そんな汚れた過去を持つ死にたがりの私は今日も唯一の居場所『風雷光』に向かった筈なのだ。いや、筈ではない。確実にいつも通り向かっていた。ただ今日という日が厄日だった事が唯一の私の誤算だ。私は見つけてしまったのだ。ふと見た路地裏で足に重そうな鎖をつけここからではよく分からないが恐らくは人であるそれに殴られているのを。普段の私なら殴られて居るだけならばただの揉め事だろうと見過ごす。いや、本来ならば見過ごすべきではないのだが如何せん私はそういう事に見慣れてしまっている人間だ。だが、今回はどうだろう。私よりも恐らくは年上だろうが殴られている以前に足に鎖と来た。そして思い出してほしい。私は今進行形で寝不足なのだ。如何しても過去の自分の姿と重なってしまった。あぁ、頭が痛い....けれど助けなければ。けれども如何しても体が動かなかった。動かさなければ....私は一歩を踏み出し

「そこの少年に暴行してる人やめなさい」

あぁ、とうとう言ってしまった。そこからの記憶が私には無かった。気付けば風雷光の医務室のベットの上だった。隣には社長が居た。

「あぁ、葉月起きたか。宵を呼んでこないとな。良かったわ。私はお前が途中で自殺でも図って死んだのかと思ったわ。」

 

「すみません社長。足に鎖を付け暴行されている少年を見かけ声をかけたのはいいのですがこちらの方が倒れてしまったみたいで」

 

「そうか。お前の過去はある程度は知っておるが聞いたこと以外私は知らん。私よりも宵の方がしっているだろう。それとその少年は今、隣のベットで寝とるよ。後で話は聞くがまずはお前だ。宵を呼んでくるから少し待っとれ」

私ははい。と返事し天井を見上げた。私はあの時どうなったんだろう。いつもは誰もが羨ましがるその脳みそをゆっくりと回転させながら考える。寝不足で頭痛のする頭ではそんな簡単な答えも出ず宵が部屋に入ってきた。

「おー。良かった。生きてて」

 

「お陰様で生きてますよ。倒れてたと言うより恐らくは少年と一緒に暴行されてた私と少年を助けここま運ぶように手配してくれたのは宵さんでしょう。私は見殺しにしてくれても良かったのに....」

 

「葉月。お前睡眠不足で悪夢見ながら死にたいか?」

宵の発言が何を意味しそして頭痛のする頭で思うことのまま発言してしまった事全てを理解した時には遅かった。

「あ、すみません。生きてて良かったです…なので睡眠薬下さい。」

 

「あ、その事何だが今日の事もあるしあたしが昨日睡眠薬渡し損ねたこともあるしで安定剤も数日分出しとくわ。数日は睡眠薬飲んでも悪夢見ると思うしお前も覚悟しとけよ。」


「やっぱり見ちゃいますかねぇ。マフィア時代の夢ならまだしも暴行の夢ねぇ....宵さん。明日は迎えに来てくださいね。なるべく早くに」

 

「あぁ、任せろ。そんであの少年の事なんだが....お前はどうしたいんだ?」

 

「社長に頼んで雇ってもらいます。あの子能力者ですよ。」


「お前倒れたのに何で少年が能力者だと思うんだ?」

 

「鎖ですよ。私も同じもの付けられましたから。能力者に付ける能力を無効化する鎖を」

 

「だからお前倒れたのか。不思議だったんだよ。普段鎖を見ても嫌そうな顔はするが特に倒れもしないのになんで今回は倒れたんだろうって。なるほどなぁ。能力者か....どんな能力なんだろうな」

 

「んー。攻撃系の能力者と言うことまでは分かるんですけどねぇ。それ以上は本人から聞かないと何ともって感じですね」

 

「まぁ、なんで分かるかまでは聞かないでおくよ。お前今酷い顔してるしな。取り敢えず睡眠薬あげるから今はゆっくり休みな。魘されてたら起こしてあげるし」


「ありがとうございます宵さん。まぁ、ゆっくりは休めないと思いますけどね。それと頭痛薬も貰えますか?朝からずっと頭痛くて」

 

「頭痛薬は駄目だ。その代わり即効性の睡眠薬あげるから我慢しろ」

 

「ねぇ、宵さん。今日は晴天ですね。私の心とは別に」

意識が落ちていく寸前ふと口にした。

宵がそんなことないと思うけどなぁと言っているのを意識の底で聞きながら

私は思った。

『あぁ、今日は晴天そして厄日だな』

 


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