ダブルチーム#28

克武30対35山陽

2Q残り1:15




シンはヨウとゴウに指示をだす



シン「ゴウ、山内にボールが入ったらすぐ囲んでプレッシャー与えろ、ファールだけは気をつけろよ、自分のディフェンスはシカトしちゃっていい、ヨウすぐにカバーで頼む」



シンは自分の相手に余裕を感じていた




ゴウにいつもの笑みが戻る


ゴウ「オッケー!絶対潰す!」








ビーー


ゴウがディフェンスリバウンドを拾うと同時に

2Qの終わりを告げるブザーが鳴る



克武32対35山陽

2Q終わり




シンの指示通り

2Qが終わるまでゴウとカツのディフェンスにより山内に点を取られることはなかった








タイマーがすぐに10:00の数字を映し出し

すぐに9:59と進んでいく


女バスがアップを始める




アンもアップを始めるために列をなすが

横目でシンを見つめる



(シン君すごい、1年生だけで十分やり合ってる…私も負けてられない)


アン「声出していきましょーー!!」


女バスキャプテン「お、いいじゃんアン、よーしみんな声出して!」



アンにつられて

女バスが盛り上がりながらアップを始める













大城「上出来、上出来!少しシンに頼りすぎな部分あるけど、リバウンド取れてきたぞ!インサイドのプレッシャーもこのままかけていこう!シン、メンバーどうする?」




メンバーがシンの顔を覗き込む



シン「とりあえずこのままいこう、ノリとゴウが以外とやれてる。ヨウと俺で下のカバーするから、ノリも周り見てカバーしてみて」


ノリ「オーケー」



(気分よさそうだな、ノリのやつ

このままの調子ならありがたい)


シンは予想外にも

ノリのプレーを止められていないこと

ゴウがインサイドのプレッシャーを与えられていることを

認めているようだった







やっぱりいける

全然通用する

もうあんな思いはめんどうだ

ここで目立つ

俺がエースになる



ノリはそんな遠くない

昔のストリート時代を思い出していた





シン「ただ、ノリもうファール2つだからな、ファール禁止、相手を休ませることにもなるし、勢いも止まる、足使ってターンオーバーを狙え」





ビーー

ハーフタイム残り3:00を知らせるタイマーがなると女バスがゾロゾロと引き上げる



シンは真っ先にボールを持ってシューティングに向かう


相手チームもまだコートに入っていない


シンは3Pを打つ


ボールはリングに弾かれ

女バスの集団の方へ転がる



アンがそれに気づきボールを取りにいき


シンへ両手で丁寧にパスをする



アン「頑張って」


笑顔はなく

真剣な眼差しにアンに

シンはただ頷く







(あいつスリーもあるのか)


リョウタが山陽のベンチから

シンを見つめていた



3Qが始まると

山陽のメンバーにはリョウタが戻っていた




リョウタがスローインを受け取ると

真っ先に指示を出す


リョウタ「ダイチさん、外に広がって!中スペース作って!」



山陽はリョウタの指示通り山内を残し外に広がる


ゴウは自分のディフェンスであるダイチが3Pラインまで広がったことに動揺した


シン「ゴウ気にすんな!台形から出るな!」


一瞬のゴウの動揺の隙に

リョウタは山内のいるハイポストにパスを入れる


すかさず、山内の横へ向かって走り出し

山内から手渡しでリターンをもらう



咄嗟にカットしようとしたノリの手が

リョウタの身体に当たる



「ピッ!黒69番」


ノリ「あ"ぁ!」



イラついたノリの声が上がる





ゴール下からのスローインは難なく山内へ渡りシュートを決められた





ノリ「クソっ!ボール!」


悔しそうな、イラついている表情を見せたノリが

ノリは急いでボールをもらいにいく



カツ「ノリ落ち着いて!ファール3つだよ!」



カツの台詞もノリの耳には入っていない


ノリはボールをもらった流れで反転してドリブルをつこうとする



がその刹那


ノリの身体が壁にぶつかる



そこになかったはずの壁


自陣に戻ったはずの山内が

ノリの行手に大きく手を広げ立っていた


ただ、立っていた



ノリは身体は反転した勢いを殺せず


山内の身体の正面に体当たりした


山内はわざとらしいリアクションを取り

その場に尻餅をつく



「ピッ!……黒、オフェンス!」



頭に手を当てる大城


ため息をつくタキ




何が起こったかわかっていないノリ



シン「ユウ!!審判、メンバーチェンジ!」




シンの叫び声でユウは急いでジャージを脱ぐ





チカの横で見ていたサエの、誰にも聞こえない声で呟いたのを

大城だけは聞き取って苦笑いをした


「ばっかじゃないの」






ノリは勢いよくベンチに座り

床を大きくひとつ踏み鳴らした



ゴウ「まぁまぁwあれはしゃぁない!運が悪かった」



タケ「ノリ速攻戻ってきたなww」



ノリ「うるせぇよ!!」


ノリのイラついた大声が体育館に響く


タケ「はぁ?何キレてんの?自業自得じゃん!」

タケが反論する




大城「黙れ!!」


大城の怒ってはいないが

真面目な顔の一声で

ベンチのメンバーは口を結ぶ






シン「ユウわかってるな?ゴウのフォローを見とけよ、フリーになるやつが出てくるから声出していくぞ」



ユウ「OK!」




24秒ギリギリの3Pのシュートは外れるが

山内にリバウンドを取られ、決められる







ユウがボールを運ぶ


シンはローポストのカツをスクリーンに

Vカットで外に出ようとするが


カツも同じタイミングで外に出てきてしまう



ユウ「カツ、下がれ!」



ユウはシンへパスを出したいが

それを察したリョウタはシン側へのパスを執拗に遮る



右45℃のヨウにパスをするが

ヨウは抜ききれず

台形下で囲まれる


ゴウは何もできずに動けずにいた


(クソッ、何したらいいかわかんねぇ)



ヨウの無理なシュートは簡単に山陽に拾われる



山陽が速攻を決め点差がみるみる開く







大城が見かねてタイムアウトを要求する




克武32対46山陽

第3Q残り6:20




大城「最初の元気がなくなってきたぞ?お前らここまでか?初勝利が遠のいてるぞ?」



シンは苛立っていた


簡単に点を取られるディフェンス

それをヘルプに行きかさむファール

シンが引きつけてからのパスを簡単に外すチームメイト

流れを読まないシュートセレクト

時間配分ができないPG




シンは初めて

ベンチに戻ってから

指示を出さなかった






カツ「まだだよ!そんな離れた点差じゃない!全然まだ大丈夫!」


コウ「そうだ!まだまだ食らいついていこう!」




(お前らが言うなよ、何本やられてるんだ、何本リバウンド取られてるんだ、外してるんだ)



シンは目線をコートに向けたまま口を紡いだ





大城はヨウを外し、コウのインを指示した



山陽もメンバーチェンジを指示


インサイドを1枚減らし


身長の低いプレイヤーが入ってきた




そしてついに山陽が差を広げるべく動き出す





シンのディフェンスはボールを触らせないディナイディフェンス


そして、シンの近くにいるディフェンスもシンよりに身体を寄せていた



シンはディナイディフェンスを振り切りボールをもらう



その刹那シンにダブルチームが来る



先程、克武が山内にしていたように

シンに2人つき

そのほかの3人でフリーのプレイヤーをカバーする




カツがシンのディフェンスの1人にスクリーンにこようとするが


シンはそれを止める



シン「いい!カツ広がってろ!」



シンはダブルチームのサイドから

無理矢理にカットイン


必ず止めよう

という山陽の指示が仇になったのか


ディフェンスは簡単にシンの

ジャンプシュートのフェイクに引っかかる


シンは身体を当てた後

シュートを沈める




「何のためのダブルチームだ!しっかり止めろ!」


山陽のコーチの檄が飛ぶのを横目に

シンはフリースローを決める




山内を止めるために必死だった

カツの体力も

3Q終盤には限界を迎え


オフェンスもシン頼みのシーンが

増えていた




ビーー

3Qが終わる頃には

点差はさらに広がり

20点もの差がついていた



第3Q終了

克武42対62山陽





第4Qに入っても点差は広がるばかり

シンがかろうじてダブルチームから

点を取るが

ディフェンスは全く機能せず


試合終了まで残り4分

克武50対75山陽



大城がメンバーチェンジの指示を出す

同時に山陽も山内とリョウタを残し

他をベンチメンバーに変えた


ユウに変わりタキを入れ

カツの代わりにヨウを戻した





タキがボールを運ぶのを見て


シンがダブルチームを振り切る



シン「ヘイ!入れろ!」



しかしそれを手を上げて止めるタキ


タキ「一旦落ち着いて」



シンは驚いた


それだけではなく

コート内のメンバー

山陽のコーチも驚きを見せる



タキが一本指を高くかざしコントロールする


タキ「とりあえず一本決めよう!確実に!」




(ほほう、まだ冷静でいられるか)



シンは走りを緩め

深呼吸する



タキはカットインするふりをしてアウトサイドのヨウにパスを出す


タキ「ゆっくり、ノードリブルで」


ヨウは言われたように

ドリブルはせず周りを見渡す



タキはその足でゴール下のゴウのディフェンスにスクリーンをかける


タキ「ゴウトップへ」


フリーになったゴウはフリースローラインあたりでボールを受ける



(え、これ打っていいのか?こんなところから入んねえぞ?)


ゴウが一瞬考えている間に


真横をシンが通り抜ける


シン「貸せ!」



ゴウは手渡しでシンにボールを渡すと


ゴール下でアウトナンバーができ

シンのシュートで終わる






ディフェンスに戻る間際

タキがシンに言う



「まだまだだよ」


ポーカーフェイスのタキから放たれるその言葉は



この試合はまだ終わってないよ

ここから反撃するよ

克武というチームはこれからだよ

シン、お前はまだまだだよ



いろんな意味にとらえられたが



タキの真意はシンにはわからなかった







タキ「シン、ディフェンス変わって。

タテのライン切って」


シンはリョウタのディフェンスにつく



リョウタはこれまでのセオリー通りに

山内にボールを入れようとするが


シンはそれをカット


そのままリョウタと一対一に持ち込む




シンはレッグスルーのチェンジオブペースからバックステップで3Pを沈める






ディフェンスに戻ると

山内がコウとタキに挟まれていた



リョウタはタキがフリーにした

控えプレイヤーに3Pを打たすが外れ

リバウンドをシンがとる



またもや突っ込もうとするシンをタキが止める


タキ「ボール…」



シンはタキの顔をみてボールを戻す



タキは再度指を掲げる



タキ「1本確実に!」








モエ「なんかリズム変わったね」


アン「うん、タキ君が入ってから楽に点とった…」




タキはヨウのスクリーンをつかいカットイン

ピック&ロールでヨウがシュートを決める





克武59対77山陽

第4Q残り1:30



シンがダブルチームから再度ジャンプシュートを決める




シンとタキは目配せをする

シン「タキ!上からあたるぞ!」



リョウタがボールをもらうとシンが行手を阻む、7秒ギリギリでハーフコートを割るリョウタは(シュート後にスローインされたボールは8秒以内に、ハーフラインを超えなければいけない)勢いそのままに山内にパスを投げる


しかしコウによって弾かれる


ヨウがボールを拾おうとするが

山陽にルーズボールを取られる



ルーズボールを取った山陽の控えがシュートを打つ



山内「落ち着けよ!」


リバウンドはゴウが拾い

ボールはシンに渡る


シンはそのまま突っ込みバックシュートを決める










残り時間30秒



山内へのパスを再度カットしたシンは



バックが戻るのを待つ


リョウタをバックロールで抜き去る



リョウタ

(くそっ!最後までこいつは)



さらにシンはヘルプに来た山内の上をスクープショットで決める




山陽の最後のオフェンスは2度外すものの

山内にリバウンドを拾われたところで



ブザーがなる








克武65対71山陽

試合終了


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