練習試合#26



「「よろしくお願いしゃす!!」」



克武メンバー男女の声が

山陽の体育館に響き渡る



山陽の監督が大城にぺこぺこと頭を下げる



メンバーはコート横を通り

体育館2階の観覧席に案内される



ヨウ「結構デカいやついるな、ゴウビビるなよ?」



ゴウ「あ?余裕だよ!スクリーンアウトは高さじゃねえんだよ」



克武のメンバーが相手を見て話しながら歩いているのと同じように


山陽のメンバーも数人は集まって

克武のメンバーを見て何かを話していた




観覧席への階段を上ろうとすると

大城がヨウを呼び止める 


大城「ヨウ、あちらさんに挨拶しに行くぞ」



ヨウは大城に連れられて

体育館の壇上に造られたテーブル席に座っている

山陽の監督、顧問、コーチであろう3人の元へ向かった



ユウ「やっぱりシンより印象いいヨウが挨拶だよなw」



シンは何も聞こえなかったように

無視して歩みを進める







ヨウ「よろしくお願いします」


ヨウが丁寧に先生方に挨拶すると

山陽の先生が山陽のキャプテンを呼ぶ


山内「お願いします。キャプテンの山内です。1年しかいないって聞いたけど、うちもIH1回戦負けレベルだから、よろしくな」


ヨウ「あ、はい。よろしくお願いします。」




山内の後ろから1人

シャツを肩まで捲り上げたおしゃれ坊主の生徒がヨウに話しかける


リョウタ「そういえば、克武のバスケ部の誰かがウチの1年と一緒に補導されたって聞いたけど、誰かわかる?」


口は笑っているが目は笑っていない


ヨウはなんのことか察していたがあえて何も言わずにとぼけた


(補導?シンのことだよな?補導されたんかあいつ?)








山陽コーチ「じゃあ20分後に男子から試合開始でお願いね」


山陽の若いコーチがヨウに声をかける



ヨウが着替えに戻ると

男子メンバーは全員着替え終わっていた



シンプルな白黒のリバーシブル、デザインはパンツの裾、襟元の3本ラインだけ、胸には筆記体でkokubuの文字の練習用リバーシブルユニフォーム



まだ開けたばかりの真新しい匂いが更衣室に充満していた




シンはバッシュの紐を結ぶと、鏡の前で髪をお団子に結う




ヨウ「シン、おまえ補導されたの?

山陽の子と遊んだとき」


シン「あー、あれは俺じゃねえよ、俺の友達と山陽の女の子だと思う、ルナの彼氏見つけた?」


シンは顔を洗いながらヨウの質問に答える


ヨウ「あれがそうかわかんねえけど、おしゃれ坊主のやつに声かけられた」



シン「OK、とりま試合には関係ねぇよ、先行くぞ」


シンは1番に更衣室を出た















大城「んじゃぁ、初の練習試合、どうなるかわかんないけど、楽しんでこい!シン円陣いけるか?」



試合開始まで後2:00を示していた



シン「じゃあ言った通りスタメンはユウ、コウ、ゴウ、ヨウで全員いつでも行けるように心構えしておいて、タケも心の準備はしとけよ。

全員最初から全力だ、相手の力を見ようとか考えんな、俺らのできることはなんもねえ、それぞれの得意分野で試合をモノにしろ


じゃあ行くぞ」


シンは右手を前に出す

全員がその手に、手を重ねる


シン「気合い入れてけよ!」

全員「「おらぁー!!」」

シン「勝ちに行くぞ!」

全員「「うらぁー!」」


全員「「1.2.3!!うぉい!!」」



メンバー

スタート

3 新谷 芯 (シン)176センチ

5 鴨志田 優 (ユウ) 166センチ

10 郷田 学(ゴウ) 182センチ

77 菊池 陽二 (ヨウ) 182センチ

99 要 光太郎 (コウ)179センチ

ベンチ

8横浜 隼人(ハヤト)171センチ

9瀧 直生 (タキ)172センチ

14 武田 修斗(タケ) 166センチ

69 黒川 紀之 (ノリ)174センチ

24 一ノ瀬 勝也(カツ)185センチ



山陽に向かう電車の中で

ゴウをスタメンで使おうという

笑い話しから


大城も納得し

ゴウがスタートメンバーに選ばれていた



ベンチには中学女バスマネージャーのチカがスコアを書きに来てくれていた

隣には中学女バスのサエの姿もあった



サエは気だるそうに両腕をくみ深く椅子に座る


チカは両足を綺麗に揃え

中学の制服であるセーラーの上にグレーの大きめのカーディガンをきて

大人しくコートの中を見つめる





山陽は190近くあるキャプテンの山内と

おしゃれ坊主リョウタもスタメンとして並んでいた




ジャンプボールに山内が入る


リョウタ「ヤマさんお願いしゃす!」


キャプテンに敬語を使う

すなわち1年か2年



先程の言動といい

シンには理解できていた



シンは長袖の黒のインナーで試合に臨む



ジャンプボールは山陽ボール


山内がセットポジションのローポストでボールを呼ぶ


ユウより少し高いくらいの身長のリョウタがボールを入れる


コウのディフェンスを気にもせず

山内が初得点を決める




ヨウがスローインしユウがボールを運ぶ


ディフェンスにはリョウタが腰を低くしてつく


ユウ「とりあえず1本取ろう!」


そういい指を高く上げるとカットインフェイクから3Pのモーションに入る


(打たせっかよ)


リョウタが即座に飛び上がるのをみてユウはシンにボールを回す


シンは左45℃の位置でボールをもらいトップ側にカットインする


明確にいえばカットインを装いボールを持ったまま、ユウのディフェンスにスクリーンをかける



シンからボールをリバースされたユウが3Pを放つ



ボールは若干短く手前にハネ戻り

シンの手中に収まる


シンはワンドリブルをついてスクープショットでゴールを決める




アン「よし!!ナイッシューー!」





シン「おいおい、オープニングショットをあげたのに…緊張してんすか?w」


ユウ「うるせー!1本目なんてあんなもんだよ、シンナイシュ」


ユウとシンは軽く手を合わせるとディフェンスにつく





克武6対14山陽

1Q残り4分



ゴウ「はぁはぁ…」

山陽PF「よし、もう一本こっち!入れろ」


リョウタからインサイドへのパスが

やすやすとユウの頭上を通る



山陽のPFはゴウをワンドリブルで抜き去り

簡単にシュートを決める



シン「ゴウどうした?もうバテたか?」

ゴウ「いや、全然…」


というもののゴウは既に肩で息をしていた


(流石にまだ早かったかな)



シンは審判に声をかける

「次タイムアウトで」

そして大城にもそれを伝えた





シンはユウからボールをもらうとトップの位置からドリブルをつきながら膝を曲げシュートフェイクをかける


ディフェンスが前に出てきたところを抜き去ると山内がヘルプにくる



シンはバックシュートの体制にゴール裏を回るが、素直には打たず2歩目で止めた


山内の身体は止まらず宙に浮く


シンはすかさずファールをもらいシュートを決める



審判「ピー!プッシング白4番、フリースロー」


審判2「ピー!タイムアウト黒!」




シンはゴウの腰を叩くとベンチに歩かせる


シン「ゴウ一回交代だ、雰囲気に馴染んでいこう」


ゴウは頷きもせず

ただ息を整えている













山陽ベンチ

リョウタ「やっぱり1年チームですね、ガンガン行きましょう!」


山内「どうだ?リョウタ、初のスタメンは」


リョウタ「余裕っすね!問題ないっす」


リョウタは山内だけでなく監督にもアピールをしているように見せた












克武ベンチ



シン「一旦カツ入ろう、コウ、ヨウ、カツでリバウンド重視、オフェンスリバウンドもディフェンスリバウンドも全く取れてないからセカンドチャンスで点取られてる。全員がしっかり最後までスクリーンアウト抑えろ!

ゴウ、もっかいあとで戻すから、リバウンドをどうやって取ってるかちゃんと見てろ!」



いつもに増して口数が多いシンに


メンバーの顔が緊張を物語る



シン「あと無駄なシュートが多い!ユウとコウ外しすぎ!ビビって打たないよりはいいけど、リバウンド拾えてないんだから大切にフィニッシュまで持ってけ!」



コウは口を開けたまま頷き


いつもハイテンションなユウは

口を結び神妙な顔をする


シン「返事は!!」


コウ、ユウ「「オウ!」」





大城「声が出てないぞみんな!緊張してんのか?とりあえず声は切らすな!」


全員「「ハイ!」」





タケ「おかえりwやっぱりきついの?」


タケのいつもの調子にゴウは乗ってこない


ゴウ「キツイとかよくわかんねえよ、何が起きてんのかわかんネェ」


はじめてのスポーツ

初めての試合

スタメンに選ばれたってことは

それなりにできるんじゃないか

スラムダンクみたいに

桜木花道みたいに

初心者でもヒーローになれるんじゃないか

そう思っていた自分が恥ずかしい

現実は漫画じゃない、現実なんだ


ゴウはシンに言われたようにじっとコートを見つめた






シンは2本ともフリースローを決め

ディフェンスにつく


シン「ユウ!抜かれてもいいからプレッシャーかけろ!簡単にポストに入れさせんな!」



しかしリョウタのパスからまたもやハイポストの山内にボールが渡る


しかしコウからカツにディフェンスが変わり、簡単には抜けない山内


カツも高校初めての試合に気合が入っていた、華奢な身体ながらも、長い手を活かし必死のディフェンスで抑える


その間にもシンが挟みにくる


シンの腕が山内の死角からボールを奪う



シン「ユウ前!」


シンの合図でユウが前線を走る


しかしリョウタを振り切れないユウ


シンは猛スピードで前線に追いつき

アウトナンバーをつくる



シンのスピードを見て

ユウは中を開けるように左45℃の3Pラインで待つ


台形のトップで待ち構えるリョウタ


シンはバックビハインドでユウへのパスを出そうと、ボールを回す


リョウタはそれを察知し

ユウとシンの間に入るが

シンのボールは背中をまわり、再度シンの前に戻ってくる


そのままシンは2歩目をグッと踏み込み精一杯のダンクを見せた



おぉーー

という会場内からどよめきが起こった後

克武のベンチ、観覧席で見ていた女バスは大盛り上がりを見せる



「キターー!シン君ナイッシューー!」




シン「一気に追いつくぞ!!」


「「オウ!」」



コウ、ヨウ、カツ、ユウはディフェンスに気合いを入れた





克武10対16山陽

1Q残り2:16

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