バイク#22



4人は足並みを揃えて学校を出る

一緒に帰ろうと誰かが言ったわけではないが

わざわざ一人で帰ろうというのも逆に変だと感じていた


エナを除いては




エナは学校を出るとスマホを片手にキョロキョロと周りを見渡す


それとほぼ同時に、学校前の一方通行の道に黒いバイクが入ってきた


エナは3人に軽く手を振り挨拶すると

そのバイクにまたがる


バイクの男がエナに何かを言う

3人には聞こえない声で


エナはバイク男の背中を殴るとバイクは発進した


アン「エナさん、、やっぱり怖い人なのかな」


アンは2人のバイクの後ろ姿を見送りながら呟く


(バイク=怖いなのかな、この子にとっては)


シンの思いを察してかヨウが口を開く


ヨウ「怖くねえよ、メットもちゃんと被ってたし、俺もじいちゃんの後よく乗せてもらってたわ!ってかどうせシンも乗ってんだろ?シンも怖い人なの?w」


アン「えっ!?シン君もバイク乗ってるの?…シン君は、もう慣れたから怖くはないけど…」


シンは鼻で笑って歩き始める







3人を乗せたバスが7駅目の停留所に止まる


前からいかにもな高校生2人組が乗ってくる

1人は学生鞄をリュックの様にだらしなく背負い大声で話しながら


そのうちの1人がシンに気がつく



男子学生1「おい、シンいるじゃん!何してんの!?久々!」


そのセリフにバスの乗客だけでなく運転手も目線をやる


アンはシンとヨウ、乗ってきた不良を交互に目をやる


シンは組んでいた腕の指だけ上げて挨拶をした


話の内容的には、シンと同じ中学らしいその2人組はこの後の集まりにシンを誘っていた


男子学生1「なんなら、そこの可愛い子も一緒に連れてきてよ!ってか彼女?シンの新しい子?」


2人組の1人がシンに話しつつもアンに問う


アンはいつもより多く瞬きし愛想笑いも出ない


シン「来る?」


アン「えっ…い、いや、私は、だ、大丈夫です。」


男子学生2「そだよなーwなんかめっちゃ真面目そうな子だもんな!シンの彼女なわけないかw」

2人はシンをよく知る友なのだろう、シンを知った口調で続ける


男子学生1「大丈夫?シンにまだ食われてない?

こいつまじで気をつけなね!中学の時は『ヤリシン』で有名だったからさww」


シン「やめろよバカ」

旧友のノリに笑顔で会話をするシン


シンはこの後の友人達の流れを一通り聞くと

いつもは違う停留所で席を立った


シン「ヨウ、明日の午後の練習酒臭かったらわりいwじゃあねアンちゃん」





ヨウとアンは座席を前後に座ったままバスが進み出す



ヨウ「柏木(アンの苗字)…ああいうの全く抗体ないでしょw

月島(エナの苗字)のバイクの時もそうだったけど、今日は驚いてばっかだな」


アン「う、うん…。全く、なんか世界が違うよね」


ヨウが降りる停留所まで、2人は前後の席のまま話を続けた




アンはきっちりと靴を揃えて玄関にあがると

廊下にカバンとマフラーを置きリビングに入る


アン母「おかえりー。遅かったわねー」

アン「うん、なぜか部活の後先生に残されて、ユニフォーム変わるからその話ししてた」


アン母「あら、あながユニフォーム決めるの?ユニフォーム変わっちゃうのね残念、伝統あるユニフォームだったのに。どんなのになるの?」


アンの母が料理を続けながら話を続ける




パーーーー!!!!



遠くから聞こえる元気のいい車の音を聞き

眉間に皺を寄せるアンの母


アン母「うるさいわね…

本当嫌ね。ああいうのは。

アン、共学になって大丈夫?変な男の子とか気をつけなさいね。」


アン「わかってるよママ、変な人はあんまりいないから」

アン母「なによ!?あんまりってことは、やっぱり少しはいるのね?ほんと気をつけてね!」

アン「はいはい。じゃあご飯できたら呼んでねー」



アンは部屋に戻ると窓を開け

マンションの14階にあるアンの部屋から、大通りを走る車を見下ろした


アン「ちゃんとした人ってだれよ。」


アンはスマホのLINEを開き


すぐに閉じた




大手ではなく、街の個人経営であろう人気のないカラオケ

その部屋の一室で制服を派手に着崩した男女8人が談笑している


男子学生1「あ、シンついたらしいよ」

女子高生1「まだ増えるのー?部屋狭いよもー」

男子学生1「ごめんごめんw後1人だけ!外見はいい奴だから許して!」



ドアが開きシンが部屋に入ると一斉に視線が集まる


シン「あー、、遅れましたー」


男子学生2「シン愛想悪ww」

男子学生1「とりあえずシン盛り上げて!まだみんなスイッチ入ってないからw」


シンの友人が言う通りカラオケの部屋の中の温度は聞いていた話とは違うと、シンは感じていた


シン「ハハハ…ま、まぁとりあえず落ち着かせてくれよ」


シンは入り口から1番近い友人の隣に座る

シン「(おい!この空気なんだよ!)」

男子学生3「(いや、悪いまだ盛り上がってないwどうにかしてくれ)」



シンはため息をつくとテーブルの上のピッチャーに入っている液体をグラスに注ぐ


シン「とりあえず、俺も乾杯していいかなー?」


シンが一口飲む


シンは口の中の予想だにしない味に盛大吹き出した


シン「プーーー!!な、なんだよこれ!酸っぱ!!んで酒じゃん!」


女子高生1「ハハハ!!wwなに!?ウケるんだけど」


部屋中に笑いがおこる


どうやらこの店は制服であろうとアルコールの注文は黙認されているらしい


男子学生1「この店昔から使ってて、絶対に口外しない約束で飲めるんだよねw」


シンは納得するが、レモンサワーもどきとも言えるこの飲み物の味では皆スイッチが入らないのも納得した


シンはちょっと待っててというとピッチャーを持ち、部屋の外のドリンクバーへ向かった


戻ってきたシンの持つピッチャーは

少しカサが増している


シンは自分のグラスを一気に飲み干し新しく作ってきたであろう飲み物を注ぎ直し一口飲む


シン「オケ。絶対こっちの方がうまい」


それを聞いた女子高生を含めた友人達皆んなも持っていたグラスの飲み物を、我慢した顔で飲み干して

シンと同じ様に注ぎ直した


女子高生1「え!めっちゃおいしくなってるんだけど!ウケる!」

口々に皆んなシンの作ってきたドリンクを褒める



しかし、1人の女子高生は元々入っていたドリンクをチビチビと不味そうな顔で頑張って飲み進めていた


シンは何気なくその子の飲んでいた不味い飲み物を自分のグラスに移し

新しく注ぎ直す


女子高生2「あ、ありがとう」


男子学生1「んじゃ、改めまして、これで酒が進むし乾杯し直し!カンパーイ!!」


そういうと部屋の温度がグッと上がったのは

部屋の外からでもわかるくらいであった




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