海#18


ユウ「ヨウも行くでしょ?」


ユウの問いかけに少し考えるヨウ


ヨウ「イヤ、今日は行けないんだよね」


部活が終わるのは午後18時

帰路によって、ある程度グループ分けされる高校生活


ヨウ、カツ、タキ、シン

たまにノリとコウ

このメンバーはバスで方向が一緒のため

帰宅途中でファーストフード店などに寄ることが多かった



ユウ「なんだよー。今日俺用事ないからみんなと飯行けるのにー」


拗ねた顔のユウに両手を合わせるヨウ



ゴウとタケが着替えを終えると先に部室を出る

タケ「おつー!お先」

自転車通学の2人は駐輪場に向かう



シンからのLINEに気づいたユウが、また不貞腐れて言う

ユウ「えーー!シンも後からになるって…大城のおっちゃんとの話が長引くらしいよ」



カツ「まぁいいじゃん!先行って待ってよ」

ユウをなだめるようにカツがユウの背中を押して部室を出る



「ヨウ何の用?この後」

探るわけではなく、何気ない問いかけをするタキ


ヨウ「…んー。いろいろなw」


タキ「ふーん」


ヨウの濁した返答を聞きタキも部室を出る


1人最後に部室を出るヨウは

部屋の電気を静かに消した







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


大城「シン、今日もお疲れ、まぁここ座れや」


顧問の大城が職員室前のテーブルにシンを座らせる


大城「すまんなぁ、みんな待たせてるか?」

シン「まぁ、いや、大丈夫、1通だけLINEしてもいいすか?」


シンはスマホを開きアンにLINEを送る

[職員室前で大城と少し話す。何時に終わるかわかんないから、待てなかったらみんなと帰りな]



昼休みに、一緒に帰る約束をしたアンにLINEを送る

直ぐに既読がついたがシンは返信を待たずにスマホを閉じた



シン「オッケーです」


シンがスマホを仕舞うと大城は話し始めた



大城「まぁ、これからの男子バスケ部の方針というか、やること伝えるからみんなで分担してやってほしいんだ」


大城はそう言うと一枚の紙を取り出す

【全国高等学校総合体育大会 バスケットボール 東京都 】

いわゆるインターハイの説明用紙


大城「急なんだが、うちは共学になったばかりだから新設校扱いとしてエントリーを遅らせてもらってたんだが、これ男子はどうする?」


シン「いや、無理でしょ…」

シンは大城の問いかけに即答する


大城「そうか、まぁ経験しとくのも悪くないかと思ったんだがな、まぁ2.3日後に先方に伝えるから気が変わったら教えてくれ、後はこの部活のやることなんだが、ユニフォーム作りと、部室の使い方と…」


(公式戦の経験をさせるのは悪くないけど、今のチームじゃな…チームと言えるかも怪しいし…)

大城が淡々と説明していくのをシンは話半分に考えていた



大城「…だから、入部届を集めて欲しいんだ」

大城が話し終わるのを待ってシンがスマホを出す


シン「ちょっとメモ取っていいすか?」



スマホの待ち受けにはアンからのLINE通知が映し出されるが、シンは内容を確認せずメモの画面を出す


シン「えっと、じゃあ明後日の昼休みにバスケ部ミーティングってことでメンツ集めるんすね、んで入部届けもその時にと、、俺が集めるんすか?」


苦笑いで大城に問いかける



大城「お前しかいないだろwまぁ誰かにやらせてもいいが」


と大城が話してる途中、職員室から女の子が出てくる


女子生徒「失礼しましたー」


目鼻立ちがしっかりとして、クールな美少女の顔立ち、背は低いが大人っぽい雰囲気がある


その子を待っていたのか、物陰からもう1人の女の子が顔を出し、職員室から出てきた女の子を呼ぶ


サエ「チカ!こっち!早く帰ろう」


その2人を大城が呼び止める


大城「チカ!サエ!ちょっときてくれ」


あからさまに嫌な顔をするサエ


耳が隠れるくらいのショートカットの女の子はバックを男勝りに背負いながらテーブルに近づく


チカ「お疲れ様です」


チカは丁寧に挨拶する


大城「頼みがあるんだが、高1男子の入部届けも集めてくれないか?」


チカは2.3秒間を開け表情を変えずに口を開く


チカ「明後日ミーティングするなら、その時に全員持ってきてもらうのが効率よくないですか?女子は新入生少ないので私が集めますけど、高校は階も違うので行きにくいです」


はっきりと断られた大城は「んー」と頷く



(中3にしてはしっかりした子だな、顔は可愛いけど真面目でお堅い感じかね)

シンはチカを見つめる

シン「いや、その子の言う通りっすよ、みんなには明後日もってきてもらうよ」


チカはシンに向かって一礼し、サエと帰っていく



大城「まぁじゃあ、それで!これ、ユニフォームのカタログだから女子と合わせて決めてくれ」


そう言うと大城は席を立つ








【ごめん今終わった、どこいる?】

シンが校門を出ながらアンにLINEを送った

アン「シン君!こっち」


校門を出て直ぐのところにアンが立っている


シン「ごめんお待たせ、ずっとここいた?」


アン「うん、でも大丈夫、涼しくてちょうどよかった」


4月とは気温が読めないものだ

春らしく暖かくなったと思ったら、日が暮れるとまだ冬の寒さが残っている気がする

2人はバス停に向かって歩く


落ち着かない様子で会話が途切れないように他愛もない話をするアンから緊張が伝わってくる


シン「そんな緊張すんなよw急に誘ってごめんな」

アン「ううん!!私も話したかったから!急に誘われたのはびっくりしたけど、なんかあった?


シンは昼間の体育倉庫を思い出す



アン「いやぁ、なんかってわけでもないけど、そういう気分だったから」

意味深な言葉を発したシンは小さく微笑む


反応に困るアンは下を向いてソワソワと歩く



シンの家は学校からバスで40分、始発駅から終点、そこから電車で3駅のところにある


アンの家もバスで終点まで、そこからはシンとは違う電車だ



バスに乗り込むとシンは横並びの席の奥にアンをエスコートする


都バスの座席とはいいもので

観光バスとは違い、足場が少し高くなる

腰の位置ほどに膝がくる


女子高生の膝上のスカートが数センチさらに短く


アンの太ももが広がる




シンは横に座ると少しアンとの間を開けるように位置をずらす


アン「シン君って女の子慣れしてるよねw彼女いないの?」


悪意はないアンの台詞にシンは笑う


シン「女慣れって言うなよwそんな奴と一緒に帰るなんて、アンも度胸あるじゃん」


アン「うん、、結構ビビってるよほんとはw」


シン「トモが言ってたよ、アンは大人しい女子力高い系だって」


アン「あ、シン君トモとクラス一緒か!去年私トモと同じクラスだったんだよ!女子力は高くないけど、大人しいのかな私」


他の女子より制服をしっかりと着こなしていながらも、綺麗な脚を出して、気を使ってケアをしているであろう長い綺麗な髪、スタイルの良いアンは女子力が高く見える

運動部ながら、汗臭い雰囲気は全く見えない


アン「まあギャルではないよね、あいつみたいに」


シンが指すアイツとは女子バスケ部のヤンキー風のエナ


アン「あいつって?エナさん?」

アンもすぐに察したのか聞き返す


シン「そうそう、サン付けなの?あいつには」


エナは外部、いわゆるエスカレーターで附属中学校から上がってきたわけではなく

高校受験で外から入学してのである


(まぁ見た目もあんなだしな)


アン「女バスは内部が5人、外部が5人で、外部の子たちみんな怖くてさwその中でもエナさん1番怖くない?やっぱり外の中学校ってみんなああなのかな」


確かに克武高校は伝統のある女子校だったこともあり、清楚、真面目、お嬢様のような女の子が多かった


シン「まあエナは見た目があんなだけど、いい子だよ、バスケもうまかったし」


アンの顔が一瞬暗くなる

アン「エナさんとは仲良いの?」


シンも空気の読めないタイプではない、むしろ人の心の変化や場の空気など察知することは長けている


(早くもヤキモチかなwメンヘラ系かな)


付き合ってもいないシンとエナに対してのアンの反応をシンは楽しむ


シン「仲いいってほどでもないけど、この前バスケやった、あの子ワンハンドで打てるし上手いよね」


アンの反応があからさまに冷たくなる


アン「…ふーん」



数秒の間を置いてシンは話を変える


シン「そうだ、ユニフォーム決めるんだけど、女子ってどうなってる?なんか言われた?」




アン「なんか、男子の案を聞いて先輩たちがOKならそれに変えるみたいよ」


シンは大城がユニフォームの説明のときにそんなことを言っていたのを思い出す


そして、少しまだテンションの低いアンをみてシンが提案する




シン「じゃあ、アンと2人で決めちゃおっか」


思いもよらないシンの発言に目を丸くするアン、その顔が徐々に笑顔になる


アン「え!本当に?考えていいの?嬉しい!」


アンの笑った顔はとても可愛らしくシンもつられて笑顔になる


シン「アンはどういうのがいいとかある?ピンク好きなのはわかるけど」


ユニフォームのカタログをバッグから出しながら、シンはアンに問う


アン「え?ピンク好きって言ったっけ?!」


シン「いや、聞いてはないけど見てたらわかるよ、今日も着てるし」


シンは昼休みの体育倉庫で透けて見えたアンの下着を思い出す


アン「え…」


アンが戸惑って足を揃え直す


シン「昨日も今日もバスパンピンクだし、タオルも、スマホカバーもじゃん」


シンの言葉にアンは数回多くまばたきをした


アン「あ、あぁ…wそうだよね!わかるよね、そうなのピンク好きなの!えっと!!シン君はどういうのがいい!」


耳を赤らめテンパるアン


しばらく2人でカタログを見ていた




シン「他に好きなものは?」


カタログに目をやったままシンが訪ねる


アン「…海。海がすき」

アンが小さな声で呟く


シン「海か、俺も好きだよ」


シンは昔を思い出していた

マイアミビーチで友達もいない自分に、日本語混じりの英語でバスケに誘ってきた彼のことを




シン「じゃあ、これは?」

シンが刺したのは、パンツの裾サイドに3本のトンガリが流れるデザイン

シン「波に見えるじゃん」


アン「え、カッコいいかも」

アンは笑顔でシンの指差すデザインを見つめる


シン「じゃぁこれをみんなに打診してみるよ」


クスッと笑うアン

アン「打診ってwシン君ってたまに難しい言葉使うよね」

シン「ああ、へんな日本語の覚え方しちゃったのかな」


アンが驚きを見せるのと同時にシンは続ける

シン「小4までアメリカいたから、いまいち日本語上手くないかも」


アン「へえーじゃあ帰国子女なんだ!英語話せるの?」

シン「まぁ日常会話くらいは」









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