タトゥー#17




女子のゲームの間、各チームで作戦会議が開かれていた


タキ「リバウンドが取れなさすぎてる。カツ、ヨウどうにかできる?」

カツ「ゴウがあんな動けると思わなかったけど、わかった、どうにかする」

ヨウ「…俺もどうにかしてみる」

タキが中心になりメンバーに指示を出すが、カツは悔しそうな表情を見せる


カツは

初心者のゴウと

更に同じポジションになりうるコウに

リバウンドをほぼ奪われ何もできていなかった






シン「ゴウ上出来だ!後半は3ポイントの練習だと思ってユウとタケでどんどん打っていけ」

シンはタケにスクリーンプレイを教え、外から打つように指示する


ユウ「どうだ?ゴウとプレーしてみて」

ユウがコウに話しかける

コウ「あ、あぁ…初心者とは思えない活躍だな、負けてらんねえな」


笑ってはいるが、どことなく顔がひきつるコウ

自分の居場所が取られるのではという気分、実力的にはコウが優っているのは一目瞭然だが

コウの心境は複雑だった






シン「ゴウ、コウ次もリバウンド取ったらすぐに外に戻せよ!!タケもユウも狙ってけ!」


シンの大声での指示を合図にメンバーがコートに入る




シンがゴウに話しかける

シン「5本目だ。4本、俺らのチームがスリーを打ったら、次のオフェンスリバウンドは外に出すフリしてシュートにいけ」


ゴウにしか聞こえない声で指示を出す






ゲーム展開は前半と変わらずにいた

シンのチームは1回のセットオフェンスで2本はスリーを放つ

そして5本目のスリーポイントをタケが放つ

ヨウは腰を落としゴウをスクリーンアウトする


ゴウは必死にゆっくり押し込むが

ヨウも負けじと押し返す


突然、ヨウは力を抜き、ゴウが押していたコースを開ける

ゴウは勢い余ってゴール下を通り越しエンドラインを超えてしまう


落ちてくるボールを拾い速攻を決めるハヤト


シン「やられたなwあれはしゃーない。次のリバウンドだぞ、拾ったらパスフェイクからゴール下シュートな」

シンが出す指示に首だけを振るゴウ



ユウのスリーポイントが放たれる前からゴウはヨウを背中で抑える

ユウが放ったシュートは大きく弾かれ

ゴウがリバウンドを取る


シン「ゴウ!!!」

シンの叫び声にみんなが反応する

ゴウは一瞬シンを見る

ディフェンスはシンにパスを入れさせまいと、コースを潰す




ゴウは油断しきったヨウの上からシュートを放つ


完全に出し抜かれたヨウは飛ぶことすらできずシュートが入るのを見守っていた


シン「ナイッシュ!ゴウ!完璧!」

シンとハイタッチを交わすゴウ



点差が離れてきたこと

リバウンドが取れないことで

タキは指示を出す

タキ「一本大事に!中から攻めよう」


ゴウとタケがディフェンスしている

ヨウとタキのところから攻めていくタキのチーム


しかし中に入るとシンのヘルプに潰される


逆にシンたちは

タケの初の3ポイントも決まり

3ポイントで得点をかさねる




48対28

終わってみれば大差をつけていた




シンが男子メンバー全員を集める

シン「はっきり言ってウチのゴール下はかなり弱い。敵チームにただデカイだけのやつでもいれば、リバウンドはほぼ取れないだろう。そういう時の対処も考えていこう。ゴウとタケは初のゲームだったが充分だろ。全員に言えることだが、何かで1番になれ。それだけでレギュラーも取れるし、ゲームでの使いどころが増えていくからな。次の練習から自分の武器を考えて練習しろよ」


悔しそうなカオをするカツ

初の3ポイントに喜ぶタケ

自分の武器に不安になるヨウ


そして未だに心のモヤモヤがとれないコウ





シン「コウ!ちょっといいか?」

シンがコウを呼び止める


その光景にゴウとユウも立ち止まる


シン「昨日は悪かったな。具体的な指示も出さないまま。今日のゲームどうだった?」


ゴツ「…まぁ、リバウンドは2人いたから楽だった…今日は制したって言っていいのか?」


シン「まぁこの点差だ、ゴウのリバウンドも10本以上と上出来だろ。コウもゴウもいたからタケ、ユウがリラックスしてシュートを打てた。しかも、相手チームの外からのシュートも減って止めやすくなった、それが結果だ」


シンの言葉に何も返さないコウ


シン「でもな、この流れはゴウが作ったわけじゃない、俺とかユウが煽った結果だ。あれだけ外から狙って、ゴウにリバウンドを取らせようとしてな。確かにゴウはリバウンドを取ってたけど同じくらいお前もとってたろ?あの煽りがないとき、しかもそれ以上にリバウンドが取れなかったらどうする?」

話を続けるシンに何も出てこないコウ




するとコウの背中から声がする

ユウ「お前だよ大黒柱!」

笑顔のユウ


シン「そ、このチームの大黒柱は、コウお前だよ。センターのおまえがチームの皆の勝敗をわけるんだよ。それがリバウンダーだ」

シンはそう言うとコウのお尻を叩き

その場を去る



コウは小さく微笑み、思いっきり深呼吸をした





女子の試合が終わると顧問大城が声を張り上げる

大城「まだ時間余っちゃったから!もう1試合ずつやるぞ!男子から入れ!シンとノリはチーム変わってやってくれ!」


突然の提案にシンが首を傾げため息をつく




シンは急いでコート脇で白シャツに着替える


シンのタトゥーが露わになりざわめく体育館


ヒナ「ねぇ。みたアン?シン君の腕!やっぱりヤンキーだね」

女バスがアンに話しかける


エナ「うわwあいつ墨入ってるのかよ」

笑い話ほどで気にしていないエナ


女子の先輩もシンの話題で話し始める



ヨウ「おいシン。おまえタトゥー入ってんのかよ。みんなに見られてるぞ」

ヨウに声をかけられ体育館中をキョロキョロと見回すシン


女子達の半分以上は慣れないヤンキーを見る目でシンを見ている


シン「視線がきもちいいなwまぁとりあえず練習に集中しよう」

シンは髪を結び直しコートに入る


ゴール下の、カツに耳打ちをしたシン

それを見逃さずコウがチームのメンバーに声をかける

コウ「シンとカツがなんかやってくるぞ!気をつけていこう!リバウンドはさっきのままだ!外からガンガン狙ってくれ!」


らしくなったコウを見てユウが笑う



シンもコウを見て小さく笑う


ゲームが始まる

ゴウとコウは同じようにゴール下でリバウンドを待つ


相当フラストレーションがたまっていたのか

ノリが突っ込みジャンプシュートを打つ

シンのチェックでシュートはズレ

リバウンド争いになるが、コウはすんなりリバウンドを取りゴール下を決める


あっけなくリバウンドを取ったコウは違和感を覚える


周りを見ると、ディフェンスについているはずのカツがいなかった


そう気づいたときには、ヨウのスローインからシンに、速攻を走るカツにつなぎシュートを決める


シンがカツに出した指示は『奇襲』リバウンドを捨てることだった


(まずは勢いをつける…)

大差で負けているチームには点を取る勢いがない

まずは、点を取り勢いをつけさせようとしたシンの作戦だ


しかも、シンのディフェンスはユウにボールを運ばせずオールコートでべったり付いていた


タケとノリではセットオフェンスのコントロールはできず

24秒が20秒も残っている状態でノリがシュートを打とうとするが

ハヤトとタキのダブルチームによりシュートがズレる


今度はヨウがリバウンドを取り前線に

タキとシンで速攻を決める



シンとタキとハヤトでオールコートマンツーでボールを運ばせなかった


シンとハヤトが、ノリとユウにボールを持たせず

初心者でドリブルもおぼつかないタケをタキが狙う

ボール運びに苦戦する間に4ゴールも奪う




隙をついてノリがボールをもらいフロントコートに入る


ユウはすっかりシンに抑えられてしまっている


ノリが無理やりジャンプシュートをうつ

ゴウとコウは久々のオフェンスリバウンドに飛ぶためにスクリーンアウトをする


ボールはゴウの上に跳ねる

同じサイドのシンもリバウンドに向かう

ゴウはヨウをスクリーンアウトしながら飛ぶ

シンは落ちて来るボールをサイドライン側にチップする

そこから、すかさず2度飛びリバウンドを奪う


カツ「前ー!!」

シンが叫ぶ時にはすでにカツがゴール下に向かって走り出していた


シンは3ドリブル目にはフロントコートに入り

カツに合わせてボールを上方に投げる


カツ「おい!!」

カツは焦って声を出した

パスと言うには高すぎる

一瞬シュートかと思ったがコースが違すぎる


しかし取らなければいけない


そう思ってカツはボールを掴みに行く


右手でボールを取れたが

前方にゴールがぶつかるかもという、危機感から左手で

ゴールを抑えようとする

しかし

頭とゴールが当たるわけもなく、そのまま着地するカツ

そしてゴール下を決める


シン「おい!今いけたろ!直接!」

シンが叫ぶが、何のことだかわかっていないカツが目を丸くする









ラスト10秒

始まるころは20点も開いていた点差が

現在54対50

シンがボールを運ぶ


「時間使うなよ!」

シンはディフェンスのノリを引き連れたまま

ゴール下に突っ込む


ハイポストにいるヨウを横切り右からレイアップにいく


ヨウがリバウンドに入ろうとゴール下に入ってくるのに合わせて

ノールックで、背中からパスを出すシン


「「おおっ!」」

度肝を抜くパスに、体育館中から声が出る


それはヨウも一緒だった

飛んできたパスを身体で止めたものの

手元を狂わせゴール下を外す



リバウンドをコウが拾い速攻をだす

ユウがブザービートを決めた



シンは首を傾け下唇を噛む


ヨウ「わ、わりぃ」

ヨウがシンに声をかけるが

シンは手で合図するだけで目を合わせなかった



ヨウは拳を握りしる






大城「シン。終わった後10分いいか?」

声をかけたのは顧問大城だった

「…おう」



ハヤト「なんだろうな?シンよばれてたぞ」

ユウ「まぁチームの方針についてじゃねえか?」

ユウとハヤトが不思議そうに見ていた




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