リバウンド#15


体育館に入って来た2人組にバスケ部の視線が集まる


大城「シン!!ちょっといいか?」

2人組の1人はシンと同じクラスのタケだ

大城は練習が始まる前のアップ中のシンを呼び出す


シン「どうした?」

大城の横にタケ

タケの横に並ぶゴウ


タケ「俺らバスケ部入りたいんだけど」


後ろで見ていたユウが飛び跳ねながら話に割り込む

ユウ「オォーー大歓迎だよ!!ってかサッカー部は?」

タケ「辞めた!wってかケンは?」

ユウ「辞めたよ。性に合わなかったのかな」


大城「よし!顔馴染みだったか入れ入れ!今日は見学だけでもしていってくれ!」


タケたちの後ろから顧問大城が声をかける


タケとゴウは大城に肩を取られ体育館に入る

大城「ちょうどいいや!男子集合!」

大城は男子全員を集めて口を開く


大城「仮入部期間は終わったからとりあえず部長を決めなくちゃな!シン!!でいいと思ってるんだが、どうだろうみんな」



みんながシンを見つめる中シンは口を開く


シン「いいのかユウ?カツ?バスケ部作ったのは実質お前らがメンバー集めてくれたからだろ?」

ユウ「うん!シンがいい!1番うまいし!」

ユウはニコニコと賛成している


周りのメンバーも賛同してくれている



ここで克武男子バスケ部が改めて完成した

仮入部のメンバーから

ケンが辞め、ハヤトは陸上部との掛け持ちでたまに参加

仮入部でタケのゴウを含めた10名だ




最後まで悩んでいたヨウはシンの誘いを断らずに入ることとなった



大城「では改めて8月の区大会に向けて気合を入れていこう!!!」

大城の大会発言にみんなが目を丸くする


タキ「区大会あるんですか?」

1番冷静なタキが大城に聞く


移転した先の港区では毎年8月に区大会がある

勝ってもその上の大会があるわけではないが、毎年の恒例となっている


シン「蓮城も出るんですか?」

シンが大城に聞く


蓮城とは過去に都大会ベスト8まで行った経験のある強豪校だ


大城「ああ!蓮城も出るぞ!今回はウチを入れて6校戦だ!」


大城はバスケ繋がりで他校との交流がよくあるらしい


シンが不安そうな顔で尋ねる

シン「ってことは当面の目標はそこだな。試合慣れしてないメンバーが多いし、高校のレベルも知らない。おっちゃん。練習試合とかって組めるの?」


大城「もちろんそのつもりだぞ!2週に1回は組むと思っといていい!」


ノリ「よっしゃ!気合いいれてこ!」

ノリが拳を叩きながら盛り上げる


シン「でもお前は基本からだぞノリw」

シンのツッコミにメンバーの笑いがこだまする



監督の手腕以前の問題で、今のメンバーの実力がどの程度通用するのか、ましてや自分のプレーがどこまで通用するのシンは不安に考えていた







その日の4対4シンが始まる前にゴウとタケに話しかける


シン「ゴウ、バスケの試合って見たりする?」

ゴウ「いや、全く」


シンは考えていた

このチームの圧倒的弱点はゴール下が薄いことだ

シン「バスケにおいて1番大事な仕事は何かわかるか?リバウンドだよ。ほらスラムダンクでも言ってたろ?リバウンドを制すものがなんちゃらって。あれマジだからな。この試合よくコウを見とけよ」


ゴウ「オウ。よくわかんないけど、わかった!」


シンは辞めたケンにも同じことを話していた

長身がいない、1年生しかいないこのチームでリバウンダーを作ることは至難の技だった

1番の長身であるカツは線が細すぎて本物のセンターには太刀打ちできないのが目に見えていた

そこでケンやゴウのように、まだ何もわからないメンバーにリバウンドのみに専念させようと考えた行動だ


シン「線が細いやつばっかだから、ゴウみたいなガタイのやつは助かるよ」

シンはゴウの肩を叩いてコートに向かった


シンはチームのコウ、ユウ、ノリに指示を出す


シン「このゲームは勝敗は気にしない。リバウンドの大切さをゴウ達に教えてやりたい。」


コウ「おっしゃ!俺の見せ場ってことな!」

嬉しそうに満面の笑みのコウに、シンは一切の笑顔を見せず言葉を放つ


シン「コウ。意味わかるな?1本も取られる」

コウ「お、おう…」

シンの面持ちにコウは食われそうになる

しかし

コウの笑みの中にも覚悟の目が光る


ユウ「キャプテンからの指示って感じだな!シンで正解!」

茶々を入れるようなユウの台詞を皮切りにポジションにつく


シンはもう1つ指示を出した

シン「ユウ、ノリから目を離すな。もちろん俺からも。ノリ、ゲームの意図はわかってるか?」

ノリ「…なんとなく」


ユウ「わかってねえなこいつwいいかノリ、パスもらったらすぐに打て!カットイン禁止!わかった?」

ユウの上から口調に一瞬ムッとなったノリだが、静かに首を縦に降る






ゲームの展開はシンの指示どおりスリーポイントの乱発だった

それをコウが8割がた拾っていた


このチームでゴール下を制しているのは紛れもなくコウだった


1Q終了後

シンのチームは22対12で負けていた


コウ「はぁ…はぁ…おまえら…ちょっとは入れろよ…」

完全にバテているコウは膝に手をつきバテてている






シン「コウ、口だけか?」


いきなりのシンの発言に笑顔で見ていたゴウとタケも含めて空気が止まる

その言葉の意味はだれも理解できていなかった


ユウ「いや、すげーだろ!ほぼコウのリバウンドだぜ!」

ユウがフォローに入るがシンの指摘は止まらない


コートの逆サイドで大城からの指示を出されているカツ達を指差すシン


シン「あんな線の細い奴らからですら制圧できないのか?」

コウは何も言わずシンを睨む


コウにはナゼこんなに言われなければいけないのかが本当に理解できていない様子だ



2Qが始まってからコウは冷静に考えた

制圧とは?リバウンドとは?シンは何を見たがっている?自分の存在意義とは?







気がついたら試合は終わっていた




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