ライバル#14





キョウ「アップはいらないの?」

シン「いらねえよ。っていうか、これが練習前のアップだろ?」

キョウと対面したシンが挑発する


キョウはボールをもらうとノーフェイクでドライブでシンを抜こうとする


レイアップにいこうと抱えるボールを叩かずに軽く触る

キョウは焦りはしたもののレイアップを決める


取ろうと思えば、ボールを取られていた


そう感じさせるプレーにキョウの顔がひきしまる

キョウ「本気でこいよ…」

シン「まぁ焦んなよ」

余裕のシンの表情にさらに熱くなるキョウ


シンはボールをもらうとドリブルで揺さぶり3ポイントを放つがリングに弾かれる


シンの同級生「シーン遊ぶなよーw!!」

壇上のチームメイトが茶々を入れる


キョウは前のプレーと同様に抜こうとするがシンにスティールされる

しかしこぼれたボールをシンは拾わずキョウに拾わせる


キョウ「手抜くなよ!!」

シン「あれ?自信あったんじゃないの?w」

悔しそうな顔でシンを睨むキョウ


猛スピードでゴールに向かい、レッグスルーでバックするキョウだがついていくシン

キョウのシュートフェイクに軽く飛ぶシン



シンの同級生「出た!あれだよ!わざとフェイクに引っかかって…」


チームメイトの解説通り、シンはフェイクに引っかかる

厳密には引っかかったふりで、二度目のジャンプでキョウの本当のジャンプシュートをブロックする




結果10対2でシンは圧勝する


シン「小学校上がりにしては上手いんじゃん?これから中学で揉まれろ。あと礼儀もな」


「…はい。」

キョウは悔しそうに俯く


シンの後輩「さすがシンさんっすね!引退してからは学校も来ないでバスケしてただけのことはあるw」

シン「うるせーよwほら!練習始めろ」



練習には少しずつ参加するシンとメンバー達





練習半ばが過ぎたころ

「「チャース!!」」

中学生達が挨拶をする方を見るとソウが走って入ってくる


ソウ「わりわり!練習なかなか抜けられなくて!」

ソウがへらへらした笑顔で入ってくる

シンは横目で見ながらシューティングをしている


顧問「じゃあせっかくだから、ソウがアップできたら5対5相手してもらおうか!」

顧問の提案に急いで着替えるソウ

ソウ「バッシュ履いたらいけますよ!走ってきたんで!」




中学生数人がソウを囲みキラキラした目で話している

まるで有名プロ選手が来たような雰囲気だ

それが気に食わずシンは無言でシューティングを続ける


「シンさん、あれは誰すか?」

キョウがシンに話しかける

シン「うちの代のキャプテン」

キョウ「え?!シンさんがキャプテンなんじゃないすか?」

シン「俺より断然うめーぞ?」

キョウ「まじか…シンさんの代結構強かったんすね?」

シン「弱かったよ…みんな個人技の塊でな」



ソウ「シンタ!!ボール貸して!」

ソウがキャプテンシンタに叫ぶ


ソウはゴールに走り片手でゴールを掴みぶら下がりながら派手にダンクを決める


「うぉーーー!」

体育館がどよめく



「んじゃ5対5用意して!」









練習終了後、顧問ミーティングで先輩1人1人から言葉をもらう

顧問「次、シン!こいつの素行は真似しなくていいからな!変なこというなよシン!」

顧問が皆んなを笑わす


シン「あー…お疲れ様。まぁ今年は生きのいい1年も入ったことだし、レギュラーはウカウカしないように練習しろよ。全員がライバルだと思うように!」


シンはキョウに目配せをする

それに気づいたキョウがシンに軽く頭を下げる



顧問「……じゃぁ以上だ!19時までには学校出ろよ!解散!」

「「お疲れ様シターー!」」

中学生達が着替え始めるなか

ソウはシュートをまだ打っている


ソウのシュートが外れシンの兄元に転がる


ソウ「シン。1対1してくれない」


元スタメン5人の間にしかわからないから不穏な空気が流れる



もともと仲がいいわけではなかったシンとソウ

多感な中学生時代だ些細なことでいがみ合っていることが多かった

しかし3年間のチームメイトとしての信頼でゲーム中だけは息が合っていたシンとソウ



シン「珍しいなお前から」

シンは脱ぎかけていたバッシュの紐を結び直す


コートの真ん中の2人体育館中が視線を送る

シンは髪を結び直しディフェンスする


ソウ「10点な」

そう言うとソウは高い打点で3ポイントを難なく決める

シン「いつからシューターになったんだよ…」


シンのオフェンス

シンも同じく3ポイントを構える、それに反応してジャンプするソウにファールを

もらいに行くシン

シュートとは外れたもののファールによって再度シンオフェンスで始まる



シンはもう一度3ポイントフェイクをかけて右に抜く

付いてきたソウをバックロールで左サイドからレイアップに行く



ソウの運動神経は化け物並だった

中学生のころ地区の陸上大会に出場し

100m走、幅跳び、高飛びにて2位を大きく引き離し優勝してる

ちなみにシンは1500m走の方で入賞し、唯一ソウに優っているのは持久力のみだと自他共に認めていた


そのソウのシュートブロックは他校にも恐れられるほどの脅威だった

シンと同じほどの身長だが、最高点までの到達スピードと高さは以上なほどだった


シンはそのブロックをダブルクラッチでかわしなんとかシュートを決める




シンの後輩「やっぱうまいっすねシンさんも…」

シンタがシンたちの代のメンバーに話しかける

シンの同級生「ファールをもらいに行くのも、バックロール、ダブルクラッチって、シンの得意技のオンパレードだなwみんなわかってるんだよ、あいつがうまいこと。初めて見た時からあんなうまいやつ見たことないって思ってた。でもソウが怪物すぎる、素人でバスケ部入ってあそこまで上手くなると誰も思わなかったよ。シンがそんなソウを気に入ってないこともみんな知ってる。シンがプライドも高いこともな」


シンの代のメンバーは真剣な眼差しで2人の1対1を見つめる


シンの同級生「俺らのバスケ部終わったんだな…」

「あぁ、卒業したんだなおれら」

「いいチームだったよな。勝てなかったけど」

「個性が強すぎるんだよw」

話をするメンバーの目にはうっすらと涙を溜める者もいた


シンの同級生「シン!!!最後くらい勝てよ!その怪物に!w」

メンバーの1人が叫ぶ




ソウのカットインを身体で止めるシン

しかし無理矢理シュートを打とうとするソウ


シンがそのボールを思い切り叩くが、ソウはビクともせずゴールを決める


シン「ゴリラかよ」

ソウ「うっせぇ猿」

2人は小言を言いながら続けた










ソウ「ラストな」


ソウ8点

シン6点


ソウはつぶやくと3ポイントを決める


シン「ラストスリーかよ。ってかそんなスリー打つようになったんだな」

「…」

ソウは無言で戻ってきたボールを拾う


シン「帝桜高校はどう?」

ソウ「おまえとの1対1がいちばんやりにくいな」

シン「そりゃどうも」


ソウのその台詞がどういう意味なのか、シンには理解していた


ソウ「バスケやめんなよ」


シンの顔が固まる

その台詞がどういう意味なのかは理解ができなかったからだ


シン「…おう」

シンは理解にくるしみながらも

一言だけ返した





帰り道、ソウは先に帰り

元スタメン4人だけで歩いていた

シンの同級生「ソウ、また上手くなってたな」

シン「…ありゃ止められねえよ」

1対1の負け惜しみではなく

シンは3年間の全てが素直に口から出た気分だったように、すっきりとした顔で言った


シンの同級生「高校で、みんなと試合したいな」

誰かのそんな言葉にシンは、タブーに触れるように口を開ける


シン「俺ってチームに必要だったか?」




クスクスとメンバーが笑っている

(そりゃ答えにくいよな)

シンは質問を取り消そうと

誤魔化そうと話をすすめる

シン「そうだよなwガラも悪いし自己中だし」


同級生「ちがうだろw俺らにじゃなくて、あいつにききたかったんだろw」

メンバーの1人がシンの心を見透かすように言う


と、同時にスマホが鳴る

【暁バスケLINE :シンが病んでるwソウに最後まで勝てなくてw】

メンバーの1人暁中のグループLINEにシンの心を広めるメッセージを送る


シン「おまえ!何やってんだよwやめろよ!」




するとみんなのスマホが一斉に鳴る、誰かが返信をしたようだ




【ソウ:シンがチームを引っ張ってくれたから、俺もみんなも上手くなれた。本当はシンがキャプテンやってほしかったよ。みんなもありがとう!いつか帝桜にかかってこい】



誰も予想しなかったソウの応えに

4人のメンバーが無言に各々のスマホを眺める



【シン:自惚れんなよ。待ってろ】


同級生「うわ!wシンカッコイイーw」

メンバーに茶化されながらも

嬉しそうに笑うシン



【ソウ:おまえがな!】




一生のライバルとは言わないまでも、少なからず17年生きた高校1年生にとってのライバルは青春の大きな見出しにはなるであろう


シンは克武バスケのLINEに一通送ってスマホを閉じた

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