カーディガン#10


帰りのバスも、行きのバスの座り位置とほぼ同じ座席に座っていた


朝も早かったせいだろう、バスが下道から高速に乗る頃には生徒の大半が眠っていた


ユウもシンの隣でスヤスヤと眠っている




不意にスマホが鳴る

LINEの画面には《アン》の文字

[横!]

シンは理解する前にふと窓を見る。窓の外にはH組のバスが並走し、アンとその取り巻きがこっちに手を振っている


シンは無反応のままスマホに目をやり

[反応に困る]

とだけ返す


H組のバスを追い抜くとスマホが鳴る

[ごめんね!シンくん見つけちゃってテンションあがっちゃった^ - ^]





トモ「肉食系女子だね。意外とアンは」


頭の上からの声に驚き、大きく身体を反転させるシン

背もたれのうえに肘をつきトモが笑って見ている


シン「人のLINE勝手にみてんじゃねえよ」

トモ「みえちゃったwアン意外だなー!顔に似合わず派手な行動するね」

シン「そんな子じゃないの?」


トモはしばらく考える


トモ「ねぇ、この体勢辛いんだけど。隣きて」

シン「めんどくせえよ。」

トモ「いいじゃん!お願い!」


と、少し肉づきがよい両手を合わせるトモの腕に挟まれたモノを見せられたシンの目線にトモは多分気づいたのか


すぐに手を離し恥ずかしそうにニヒヒと笑った



シンは席を立ち上がり、1つ後ろの最後尾の席に入ろうとする

しかし最後尾はすでに満席である


シン「いや入れないだろ」

トモ「詰めるからいいの!窓側きて!」

トモは寝ている友達を少し押して、シンの席を無理やり作った

作ったと言っても、最後尾5席に6人座るのだ、なかなか狭い席である

シン「狭くないか、これ…」

トモ「…別にいいじゃん、背もたれに立ってるより楽!」

トモは笑顔で半身シンの方を向く


トモの肩がシンの肩に寄りかかる


シン「お前も派手な行動するな」

トモの髪の香りが女の子を象徴させる


トモ「そう??普通じゃん?あれ?ドキドキしちゃう感じ?w」


トモがシンをニヤニヤと見る

シン「…さあね。まだ大丈夫かな」


シンもトモを試すように応える


2人はしばらく他愛もない話しを続けていた







トモ「シン。…眠い」

話し方がゆっくりになっていたトモが、不意に言う

シン「じゃあ寝ろよ。席戻ろうか?」

トモ「ううん。シンあったかいから。このまま…」

そういうとトモはカクンと首を前に傾けた


シンは席を立とうと腰を浮かそうとする

しかし、トモの手がシンのシャツを掴む

首を下に傾けたまま


シンはその場に坐り直し窓の外を眺める













学校に着いたのは16時ごろだった

ホームルームを終わらし、次の日の時間割だけを確認し下校となる




ユウ「シン!バスケ部いこうぜ!」

ユウが元気に声をかける


シン「今日やってるの?」

ユウ「わかんねえけど、行ってみよう!」


バッシュもなにも用意がないままシンとユウは体育館へ向かった






アン「シンくん?!」

体育館の前で声をかけられる


ピンク色のバスパンにTシャツ姿のアンが声をかける

アン「やっぱりバスケ部入るんだね!」

シン「いや、、付き添いで見にきただけ」


するとアンは体育館を開け声を上げる

アン「センセー!男子来ましたよ!」



体育館の奥から1人の男性が歩いてくる


教員「入部希望かね!?いやー!ありがとう!」

男性はシンとユウに握手を求める


ユウ「初めまして!C組のユウです!こっちはシン!今日は見学させてもらいます!」


ユウは握手しながら意気揚々と話す


シンは男の威圧に押されながら軽く会釈し握手する


男は180センチ以上ある身長に体格のいい風貌、50代ほどだか見た目よりテンションで若く見えた



教員「まあ入りなさい!アン!椅子2つ出してあげて!」




体育館の中にはすでにパイプ椅子が5つ、それに座る制服の女子が5人、入部希望者だろう


バスケ部の女子はアンを含めて5人

まだ練習が始まる様子はない


シン「…ユウ、また後で来ようぜ」

シンはそう言うと体育館を後にした


ユウ「待てよシン!あ、先生!また後で来ますね!」

ユウも続いて体育館から出る



シン「女子の練習見てどうするんだ?」

シンは校庭の可動式のバスケットゴールの根元に座る

ユウ「なんか見たいじゃん!!ってかおれ着替えてくる!もしかしたらやるかもだし」


ユウは走って体育館横の更衣室に向かって行った


ユウを見送るシン、するとユウと入れ替わるように、制服の女子が体育館から出てくる


やけに短いスカートから白い綺麗な脚を出し腰にはベージュのカーディガンを巻いている、黒染めしたような変に真っ黒い肩の下までおりている髪が特徴的な女の子


その女子はまっすぐにシンの目を見て、シンのもとに歩いてくる




女子生徒「ねえ。あんたC組のやつでしょ?」

シン「いきなりあんた呼ばわりか…そうだけど、どっかで会ったか?」

女子生徒「バスケ部入るの?」

「…」


シンはなにも答えないまま、バスケを始める


エナ「ねぇ。バスケ相手してよ。うち、エナ」

女子高生エナの行動に理解が追いつかないシンはエナの顔を見て、動きを止める


シン「どっかで会った?」

シンはもう一度おなじ質問をする

エナ「オリエンのバスケの試合見てた。」

シン「あぁ。俺のファンってことねw」

エナ「調子のりすぎwただ暇だから声かけただけw」


エナが笑顔を見せる


シン「さっき体育館で座ってたろ?今日から練習混ざればいいのに」

エナ「うーん…なんか雰囲気的にあんまり面白そうじゃないじゃん?まぁ練習見ないとわかんないけど、とりあえず始まるまで相手してよ!」

そおいうとエナはパスを求める


シンは丁寧にバウンドパスをする

エナはワンハンドでジャンプシュートを打つ


(女子のワンハンドか…)


シン「どこ中?」

エナ「つくば」

シン「わり、わかんねえや。強かったの?」

エナ「ううん、地区予選落ち」


160センチちょっとの女子にしては俊敏な動きとシュートモーションのエナにパスを出し続けるシン



ユウ「あのー。俺入りづらいんですけどーw」

いつの間にか運動着に着替えたユウがふてくされた顔で声をかける




シン「今、いいとこだから邪魔しないでくれるかな?w」

シンは意地悪な言い方でユウに答える

エナ「…。ごめんね!今シンに教えてもらってる所だからさw」


エナもシンに便乗しユウを除け者にする


ユウ「うわーーー!シン!俺も教えてくれよ!」


ユウがふてくされた顔で駄々をこねる真似をする



3人は一斉に笑う





その間に女子バスケ部のメンバーが体育館に続々と入っていく





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