缶ビール
4月のわりには少し蒸し暑いような夕方の気温
シンはバスケットボールを拾い、引いていないフリースローラインに立つ、正確に言うならばフリースローライン辺りに
シンの放ったフリースローは見事に外れる
ユウ「外すんかいw」
ユウが拾ったボールをシンに戻す
シン「フリースロー苦手なんだよね俺w」
シンが苦笑いする
ユウ「じゃあ、C組負けさそうとしてたの!?」
シン「いや、そういうわけじゃないんだけど…あの場では外さない気がして」
ユウ「さすがwすぐ夕食だってさ」
シン「まじか…部屋にシャワー付いてたよな。浴びてからいくわ」
シンは部屋に向かうためコートを後にする
ユウは嬉しそうな笑顔でスリーポイントを打つ
まだ明かりを若干保つ夕暮れの空には三日月がくっきりと写っていた
シンはシャワーを浴び
タンクトップを着る、バスケットをやるには華奢に思える肘には、蜘蛛の巣をバスケットゴールに見立てたタトゥーと、二の腕を巻くようにトライバルの柄とゴールに向かうボールのタトゥー
シンはそっと腕を掴み鏡越しに自分を見る
〜
克武バスケ部男子「今年の推薦はソウだってよ」
シン「…あぁ知ってるよ」
練習試合の帰り道、いつもの3人で帰りながら話していた
暁中学からは代々、一学年から一人帝桜高校に推薦で入学する
8年ほど前に暁中から帝桜高校行った学生がキャプテンとなった年に全国大会に出場させてから、そのような推薦の流れが作られた
克武バスケ部男子「まぁ当たり前だよな!今日もあいつ30点くらい取ってたろ!wバケモンだな!」
笑ってシンのチームメートが話す内容は、シンには全く笑えなかった
克武バスケ部男子「来週で最後の大会だし、ソウに爆発してもらわないとな!」
シン「……そうだな」
シンはまだ明るい空を
遠い目で見ていた
(あいつがいなくたって…)
〜
シンが食堂のドアを開ける
アベ「…というわけでスポーツ大会の優勝は…」
話していたサッカー部の顧問兼B組の担任アベ先生の横の扉が開く
扉から入ってきたシンを見るアベ
アベ「…こちらのバスケットで大活躍だったシン君率いるC組でーす!」
嫌味ったらしくシンを指差すアベ先生の言葉とは裏腹に笑顔はなかった
まばらな拍手と、凍った空気にいたたまれなくなったトモが声を上げる
トモ「ア、アベ先生!6人7脚も1位だった!!」
アベ「そだな!わりぃわりぃ!んじゃC組にはご褒美でメロンあるから!飯終わったら取りに来い!」
ハヤト「先生!準優勝には!?みかんくらいくれよ!」
H組のハヤトが皆んなを笑わす
ホッとした表情のトモとユウが席に招く
トモ「シン入ってくるタイミング悪いよw」
ユウ「1人だけ汗流してずるい!」
夕食を食べ終わって明日の朝の集合時間を告げられて各自解散となる
現在19時、テレビもない部屋に帰っても仕方ないのでシンとユウは中庭のゴールにいた
ユウ「シン!1on1やろうぜ!」
シュートを打ちながらユウが提案する
シン「さっき風呂入ったから嫌だよ!汗掻きたくねぇし」
ユウ「んだよー!誰か来たな…」
ハヤト「おーいユウ!シン!」
ユウ「ん?ハヤト?」
暗い中からの声にユウが反応する
宿舎の裏でH組が集まっていた
ユウ「うわ!めっちゃ宴会やってるやん!」
ユウは光景を見てはしゃぐ
ハヤト、ゴウ、カツ、ケン、タキ、それにタケもなぜかいる
ユウ「なんでタケもいんの!?」
タケ「俺、ガイと同中なんだよね!」
タケはすでにH組と仲良くなっていた、その片手には缶ビールが空けられていた
シン「ここばれねえの!?」
タキ「ここ、中庭からしか来られない。誰か来たらこの窓から入ればバレずに部屋に戻れる。」
冷静にタキがシンに答える
「ってことは!俺らのも!」
ユウがワクワクした顔で尋ねる
ハヤト「は?ねぇよ!人数分しか買ってねえもん!」
シン「あ、そいえばバスケ勝ったから奢ってくれるんだろ?」
シンはニヤりとケンに笑う
カツ「そいえばそんな約束してたな!んじゃおれ買ってくるよ!シンとユウビール?」
ユウ「いや!おれは…アイスでいいや!」
カツは小銭を確認して、バスの中から発見したコンビニに向かった
シンはおもむろにポケットからタバコを取り出す
ケン「パーラメントかよwマジヤンキーだなw」
シン「ちげえよ。親がずっとこれだから」
ケンも続いてタバコを取り出し火をつける
ゴウ「これ見つかったら、入学初日でやべえなw」
ゴウは強面だが笑うと意外と愛嬌がある
他愛もない談笑をしているなか
ハヤトがユウに尋ねる
ハヤト「ユウ、バスケ部のメンバーは集まったのか?」
ユウ「んまー、シンだろ…ハヤトだろ…あと誰かやんねえ?」
シン「俺まだ決めてねえよ」
ハヤト「俺またバスケ部入んのかよwまあ陸上部と掛け持ちでいいなら!」
ユウ「なあシン。D組のヨウってのはバスケやんねえのかな?」
シン「やらねえらしいよ。ピザ職人目指してるんだってw」
ユツ「そっかぁ、あとはJ組のインサイドのやつかな…」
シン「ノリは?水色バスパンのやつ」
ユウ「あいつはなぁ…」
ユウの話の途中でカツが帰ってくる
カツ「おい!!!タバコはやめろよ!バスケ部作れなくなるぞ!」
少し怒った顔でシンに向かって言う
2.3秒シンはカツの顔をみる
シン「カツ、バスケ部つくるのか?」
カツ「うん。シンも入ってくれ。だからタバコは消せ」
シン「俺とバスケ部はまだ関係ねえから、タバコは消せねぇな。あと…俺に命令すんなよ」
シンは立ち上がりタバコを咥えたままカツを睨みつける
ハヤト「おい、やめとけよおまえらw」
ハヤトの制止を聞かずにシンが口を開く
シン「酒はよくて、タバコはだめってなんだよ?みんなでワイワイやってるが楽しくてこの場にいるくせに、自分も片棒かついでんだぜ」
カツは気まずそうに手に持っていたビニール袋を見る
カツ「…俺はこの高校でバスケ部をつくる。シン。シンも入ってくれ」
カツは真面目な顔でシンに言う
ユウも立ち上がり頭を下げる
ユウ「シン、俺からも頼む」
シンはおもむろにスマホを取り出し電話をかける
シン「よう!おきてたか!ちょっと、おもしろいことするから、中庭のコート来いよ」
数分後に中庭に来たのはヨウだった
ボールを持ったシン
シンの表情から何かを悟ったヨウが口を開く
ヨウ「またバスケかよ。バスケ部の入部試験って感じ?w」
シン「そんなとこだ。俺とヨウと2対2しろ」
そう言うとユウにボールを渡す
ユウはボールをシンに戻すと口を開かずディフェンスにつく
ヨウ「おいw準備運動もなしかよ!」
シン「大丈夫。勝ち負けじゃねよ」
笑顔で話すヨウに対して、笑みを見せずに返答するシン
シンはユウを一気に抜き去り試合で見せたダンクをする
シン「ユウ、本気で来いよ」
シンはパーカーを脱ぎ黒のタンクトップになり髪を結い直す
シンのタトゥーに誰もが目をやるが、口に出すものはいない
タトゥーよりもシンの本気の顔に皆圧倒される
ユウ「10点勝負な」
シンがユウにボールを渡すと、すぐさまユウはロングシュートを放つ
しかし、シンはそれをブロックする
跳ね返るボールが再びユウ手に戻る
インサイドでパスを呼ぶカツに、ユウはパスしようとするが、シンはそれをもカットする
カツ「どんな反射神経してんだよ…」
ぼそっとカツが呟く
シンはドライブで抜こうと、一歩出る
ポストでヨウのディフェンスをしているカツがヘルプに出られるように半身出るが
シンは半身出た方とは逆側に、ヨウを動かす様にパスを出す
ヨウはパスを取りそのままシュートをきめる
「今のはパスがよかったな…」
タキの台詞に、バスケ初心者のケンの頭に、はてなが浮かぶ
タキ「パスに誘導されてシュートのコースが見えたんだ。なかなかやるな…」
タキの言う通り、必死にヨウが食らいついたパスはゴールへ向かう為にはドンピシャな位置だった
シン「ナイスキャッチ、ヨウ!」
シンの声かけにヨウの眼が変わる
ヨウ「…おう、よっしゃディフェンス!完封してやるよ!」
ユウとカツの眼も、観戦しているタキとケンの眼も徐々に変わる
シン「8対0だぜ」
ユウ「うるせえ、まだ終わってねえよ」
シンをディフェンスしながらユウが言う
ヨウのスクリーンを合図にシンが抜く
ピックアンドロールでヨウにパスを出す
カツの動きをみてヨウはシンにパスを戻す
シンは本日3本目のダンクに飛ぶ
カツ「あ”あーーーーーーーー!!」
大声で叫びながらカツがこの日1番のブロックに跳ぶ、カツの手もリングを超えていた
ダンクはリングに弾かれ、ユウがボールを拾う
「よっしゃーーーーー!!」
カツが叫ぶ
ユウはシュートフェイクから左右に振って右に抜く、ドリブルする姿勢も低く、シンのディフェンスよりも低い
シンがついていこうとする足を出す前に、ユウは左手でシンの膝裏を抑え抜き去る
ヨウのヘルプに合わせてパスを出す
カツがゴール下からシュートを打つが、これもシンにブロックされる
シン「ラスト決めるよ」
ユウ「決めさせねえよ」
シンとユウが向き合った瞬間
教員「お前ら!中入れ!!何時だと思ってんだ!!」
どこかの教員の声にみんなが振り向く
ヨウ「どうする?」
ヨウがシンに尋ねるが答えたのはカツだった
カツ「だめ!帰ろう!続きは学校の体育館で!」
みんなの口元に笑顔が戻る
シン「とりあえず今日は終わるか、バスケ部の話はまだ保留だな。な、ヨウ」
ヨウ「…考えとく」
一行は宿舎に入り各々の部屋にもどる
ユウ「シン。ありがとなヨウ誘ってくれて」
帰りの廊下で2人っきりになったシンとユウ
シン「…あいつもうまいからな。また喉乾いてきた、あービール飲みてえ。」
ユウ「また飲むのかよw今日は寝るぞ」
ヨウとシンは部屋にもどりベッドにはいる
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