スタンプ#6






現在、F組0対8G組残り2分

シン「そだな…シードは無くなったから、次もそんなうまいやつらとは当たらないだろ、多分w4点まではリードしてたいから、4点差つくまでは申し訳ないんだけど俺が運んでユウにフィニッシュさせるよ。ユウ、俺とボールから絶対目離さないで、振り切ってフリーになったらすぐパス出すから自由に動いて。それからは、4人で自由にやっていいよ。俺がさっきみたいにディフェンスに徹するから。サトはリバウンド取れそうだし、なるべくオフェンスもディフェンスもゴール下にいた方がいいよ、誰かが打って落としたのをリバウンドして点とってくれ、遠慮しないほうが楽しめるよwそんなとこかな」



ユウ「おー!完璧じゃん、なんかw」


トモ「なんかちゃんとした作戦会議してるw」

とトモが笑いながらスマホのカメラを全員に向ける

シンはクルッと周り座り直しカメラを背にしてコートを向く

トモ「チョットシンー!」

トモの呼びかけに応えずシンはI組対H組の試合を見始める




H組はあからさまに盛り上がっている

学年で1番テンションが高いクラスだろう


1番最後の一回戦だったからか、中庭のコートで遊んできたのか、全員すでに半袖姿で暑がっている

学年で1番目立っていた白ジャージのヤンキーさえもジャージの上を脱ぎ黒いTシャツになっていた


ジャンプボールはH組の180センチの細身の生徒カツ、ジャンプボールの跳び方が経験者であることを示す


ジャンプボールをもらい、運んでる大人しそうな生徒タキも経験者だ、ゴール下には白ジャージケンとサッカー部、45°のスリーポイントラインにいる生徒ハヤトがゴール下の2人に指示を出している


ユウ「お!ハヤトもでてんじゃん!おーい、ハヤト!スリー打つなよw入らねんだからw」


シン「同中?」

シンがユウに聞く


ユウ「そう!あいつバスケ部とバレー部の掛け持ちで、飛ぶしか取り柄のないやつw」




ケン「タキ!こい!」

白ジャージヤンキーケンが、ボールを呼ぶ


タキはしっかりと、首でフェイクを入れながら強面にパスをする

タキからパスを通されたディフェンスの生徒と、ゴール下のサッカー部のディフェンスをしているのは経験者だ


白ジャージヤンキーケンがゴールに身体を向けるとディフェンスが真ん中に集まる、すかさず強面から45°のハヤトにパスを出す、ハヤトはベースライン側にカットインをする

ゴール下にいる経験者がコースを塞ぐ、すぐにトップにいたタキが飛び込んでパスを受けシュート


ひとつひとつのパスは汚いが、流れは綺麗にシュートまで持って行った


カツ「ナイシュー!!タキ!よしディフェンスだよ!」

テンションのが高いのはこいつのせいだろう、ジャンプボールを飛んでいたカツの笑顔はみんなを笑顔にするような雰囲気をもっていた


シンは冷たい目でカツを見る



笑顔のそいつの掛け声で、強面サッカー部と白ジャージケンは自軍の台形に入り手をあげる

「よっしゃこいやーw」

白ジャージケンと強面ヤンキーは面白がりながらぴょんぴょんと跳ねている


スローインするとすぐにハヤトがボールマンにオールコートでディフェンスする


ボールマンは経験者らしく慌てる事なくピボットする、ハヤトは激しくボールにチェックにいく


「ピピッ!ファール!」


ケイ先生が不意に笛を吹く


ハヤト「ええ!!ファールかよ!ってか俺、今日初ファールじゃねww」


体育館に響く声でハヤトが笑いをとる

体育館に笑い声がいくつも聞こえる


気を取り直してスローインをもらった生徒は、ハヤトに引っ付かれる前にドリブルをつく、しかしハヤトのサイドステップは驚異的に早く一歩で相手の前に、オフェンスも慌ててドリブルを止めてしまい、右前方の味方にパスを出す

待っていましたと言わんばかりに、カツがインターセプトする


「ナイス!カツw!」

強面サッカー部が爆笑しながら手を叩き長身カツを褒めている


カツはすぐに攻めず、物静かなタキにボールを戻す

タキはトップの位置にもどり

ジャンプボール後のポジションに味方たちが行くのを待つ


1プレー目と同じように白ジャージが呼ぶ

「タキ!いいよ!こい!」



「おい、セットプレーかよw」

シンが独り言のように呟く


白ジャージはパスを貰うと、先ほどと同じようにゴールを向く、先ほどよりディフェンスが寄ってこないと見たのかワンドリブルつく


白ジャージがドリブルしてやっとディフェンスが少し寄ると、同じように45°のハヤトに、ハヤトも同じようにベースライン側にカットイン

ディフェンスも同じように経験者がついている

ディフェンスは先ほどのプレーを警戒してタキの位置を確認する

「カツ、ヘイ!」

やはりタキが走りこんできた

その一瞬の隙をみて、ハヤトは逆ゴール下の強面サッカー部にパスを出す

サッカー部でもゴール下シュートくらいは決められる

下手くそなバンクシュートでシュートを決めた


ケン「ゴウないっしゅー!!超余裕じゃん!俺なんもしてないけどww」


白ジャージが盛り上がる



「早く出せ!」

経験者であろう生徒が未経験者にスローインさせる

ハヤトから離れた位置でボールをもらいドリブル突破をしようと図る

カツが並走し、ハーフコートあたりで正面にタキが立ちはだかるが、経験者はチェンジオブペースで抜きにかかる


タキは手を出さず、ついて行くだけのディフェンスだ

経験者はそのまま台形あたりで急ストップをかける、タキは急には止まれず距離がうまれる

そのままジャンプシュートをしようとするが

後ろからカツが長い腕でブロックをする



ユウ「うお!ナイディ!!」

ユウが盛り上がる


すぐさまタキがボールを拾い前方のハヤトに投げる

ゴール下で展開を見ていた、というかサボっていた白ジャージにパスを出すハヤト


ケン「きたーーー!」

叫びながらゴール下をうつ白ジャージケンだが、ボードに当たったボールはゴールに当たらず逆サイドに抜けて行く

誰もが笑おうと口を開けた瞬間、さっきまで逆サイドにいたカツがタップシュートを決める


「「うぉーーーー!」」

体育館中が盛り上がる


相手チームのクラスを残して


その後もカツ、物静かなタキ、ハヤトを中心にセットプレーと速攻を繰り返し

気づけば最多得点の16点を取り圧勝した






ユウ「おれ、いろんな奴に声掛けてくるわ!シンも一緒にいこーぜ!」

次の試合も空くことを知ったユウはJ組が座っている観客席に走って行った



シンはユウの行く先を見届けると中庭のゴールへ向かった


中庭では女子数名がバスケをしている


(あ、あの子だ)


ピンクのタオルはどこにいても目立つ

なにより、アンの腰まである長い髪はサラサラと目を引かれた


シン中庭を見下ろせる体育館前のベンチに腰掛けてアンのラインIDを登録する

アンのトップ画面はインターネットのどこかで拾ったであろう、バスケットボールと外国の赤ちゃんの写真


(やっぱりな)






ふと、バスケをしていた女子たちがこちらを見ていることに気づく


他の3人に押されてアンが1人で歩いてくる

シンは先ほど準備した千円札をポケットから取り出し、ヒラヒラと見せる


アン「あ、あの…」

シン「ん?」

アン「いやあの、さっきいきなりごめんね。ID渡して…」


シンは真顔のままスマホを取り出し、アンにラインでシンの風貌とは似つかない可愛らしいスタンプを贈る


それに気づいたアンがスタンプを見て笑顔になる


シン「とりあえず座れば?」

シンがベンチの横を叩く



アン「あ、うん!」

その瞬間アンの、スマホが連続してなる

アン「わ、わぁ!なんだ?!」

恥ずかしそうにアンが驚く


あながち想像はつくが、中庭のゴールを見ると女子3人がスマホをいじっていた



アン「もう…なんかごめんね」


シン「逆にごめんねwなんかこんな目立つところで」


シンが謝るとアンは小さく数回顔を横に降る


アン「名前…シンくんって言うんだ」

ラインの表示を見てアンは言う


シン「え?!ん?あれ?俺のこと知ってたわけじゃないんだw」

アン「いや!あの、知ってはいたんだけど!さっき試合で、なんか見たことあるなーって!それで、他の女バスの子と話して!…その、なんかごめん…」


シン「いや、勇気あるねw嬉しいよ。じゃあ、改めましてシンです。よろしくね!」

アン「あ、はい!よろしく…」

アンは嬉しそうに頬を赤らめる


シン「ごめん、でも俺は全然覚えてないんだ」


アン「いえ!いいんです!シンくん上手かったからワタシが覚えてただけで!」




〜8ヶ月前〜


審判「ファール!黒7番!」


観客「ここでスタメンの退場か!!こりゃ、暁中ダメだな」


シン「なんでだよ!?今のはあっちだろ?おい!おかしいだろ!」


シンのチームメイト「シンやめろ!」

チームメイトに引っ張られるシン


「クソっ!!」

シンは大きな音を立ててベンチのイスを蹴飛ばす


審判「ピーーー!ベンチファール!」

審判の手がテクニカルファールを示す


ベンチのチームメイトも、コートの中のチームメイトもため息をつき、下を向く

監督も頭を抑えて何も言わない

誰も何も言ってこないチームにシンは孤独感を感じた







(そういや引退試合も克武が会場だったな)



シン「…なんも、上手くねえよ」

一気にシンの顔が曇る




ハヤト「あれー、アンちゃん彼氏?」


H組の男子たちが飲み物を買って戻ってきて、ハヤトがシンたちに声をかけた


アン「違うよ!!中学が近くで知ってただけ!」

ハヤト「ってか、ユウのクラスの人だよね?ユウの隣さっき座ってた」


シン「ああ、どうも」


白ジャージだけは笑わずにジッとシンの顔を見る

シンも白ジャージの視線に気づき、反応する

シン「あ?」

白ジャージのアタマを叩き制止するハヤト

ハヤト「ケン!威嚇すんな!」


ケン「いって!してねえよ!イケメンだなって見てただけだよ」

シンが不意に笑う

シン「ハハッ!ありがとう!お前もさっきの試合イケメンだったよ。」


強面サッカー部はいない4人のH組のチームは笑っていた


女子生徒「ねぇ!アンの邪魔しないでよー!」

とアンの友達のアイ達がシン達の元へ歩み寄る


アイ「あ、初めまして!暁の7番さんですよね!髪おろしてるの初めて見ました!」

アイが挨拶する


カツ「え?なに?結局どういう関係なの?」

不思議そうな顔でカツが聞く


アイが要約して話す

克武中高はもともと中央区にあった、受験はみんなそっちの校舎で行ったが今年度から場所が移転して港区に変わった

シンが通っていた暁中学も中央区にあり、大会でよく同じ会場を使っていた

そしてさっきの試合でシンを見つけた


アイ「んで、アンが気になるっていうから、2人ではなしてたんだよねー?アンw」

アン「ちょっと!うるさい!」

アンはピンクのタオルでアイを叩く


シン「でも俺、克武が移転すること知らずに入ったんだよねw今日まで、港区になること知らずに入ったかんじ」

シンがトボけたことを言ったのを皮切りに

H組とシンは試合が終わるまで談笑を続けた





「ビーーーー」

試合の終了を告げるブザーが聞こえる



シン「んじゃ、俺試合だから行くわ。」


シンが立ち上がるとカツが声をかける

カツ「シンはバスケ部希望?」

女バスの視線が集まる


シン「んー。それは考えてないかな。んじゃ!決勝でやろうな!」


そう言うとシンは体育館の中へ入った


ケン「見かけによらず、いいやつだったな!」

ハヤト「お前が言うなよ!ww俺も友達出てるから見に行くわ!アンもどうせ見るだろ?w」

みんなの笑い声とハヤトのの声がシンの耳にはいりクスッと笑うシン





ユウ「なに笑ってんだよ!」

と、不機嫌そうな顔をしたユウがいる

シン「どうした?バスケ部希望者探しはうまくいかなかったか?w」

ユウを茶化すシン


ユウ「いや、まじであいつら感じ悪いわ!特にあの水色バスパン!」


水色バスパンはハンドリングのうまさを見せつけるようにドリブルで遊んでいる


シン「まあとりあえず勝ちいこうか」


シンが笑みを浮かべてコートに入る


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