メガホン#4

〜♪

聞き慣れた音階だけの単調なメロディーがシンの耳に入る

4人の足が体育館に近づくつれて早くなっていくに音階のメロディー


レン「ん!シャトルランやってんじゃん!?」

気づいたレンが小走りで体育館の入り口に駆け寄る


体育館は異様な光景だった

60人の坊主たちがびっしりと列をなして体育館内を往復している

それを囲むように、坊主達をみているギャラリーの生徒、2階の観覧席からも見下ろしている生徒たち

生徒たちの大多数は暇を持て余して、体育館に集合しているらしい


学年約300人が同じような体操着をきているとどこか圧巻に感じる


集合時間まであと20分

「…82!…83!…」

坊主のうち5人は走らずに監督とコーチの横で数えている


体育館に入って来た4人組のシンたちに、サッカー部監督のアベを目をやる

あらかた校則違反のシンを見ているのだろう



サッカー部「…119!」

アベ「セトOUTー!!」

数えている坊主の横でアベが叫ぶ


(やっと脱落1人目かよ…早く終われや)

シンはめんどくさそうに体育館の壇上の上で横になりシャトルランを眺めている


125回目になってやっと、2人目3人目と脱落していく、クラスの体育でシャトルランをやると120台で残っているのは3、4人、最後まで残るとみんなから注目を集めるヒーローだ


ナリ「さすがサッカー部やなー。みんなまだいけるで。おまえらいくつくらい?」


ナリは冷静に尋ねる

レン「おれ128!」

ヨウ「おれ無理70くらいで諦めるw」

レンが得意げに、ヨウは笑って応える

「シンは?」

レンの問いにすました顔で答えるシン

シン「131」

レン「中学で?マジ?!すげーな。」

驚くレン

事実、シンは中学のころからスタミナには自信があり。中距離走やマラソン大会、シャトルランでは負け知らずだった


シンはふと思い出していた


セミがなく晴天の中山道を走っていた

自分の小さな足を


(走るの好きになったのあの頃か)


サッカー部「…134!」

アベ「おーい!もうチェックできねえから、自分はクリアできてるって自信あるやつだけ残れ!」


(なんじゃそりゃ…)

監督アベの発言に鼻で笑うシン


その言葉を聞き2.30人が足を止める。残っているの10人

ここからは脱落した坊主たちがクリアチェックをはじめる

回数が増えるごとに脱落していく坊主たち

サッカー部「…140!!」

ギャラリーたちのおぉ!という声が聞こえる


残っているのは2人の坊主


シン「あ…」

シンが口をあんぐり開けた


長身の方の坊主はあの、2時間前にやりあった長髪だ

(あいつすげーな)

シンは素直に認めていた。


サッカー部「…145!」


元長髪は間に合わず1回目のミスをおかす。

シャトルランは徐々に早くなっていく音楽が鳴っている間に、数十メートル離れた反対側側のラインを何回踏めるかを測るものである。2回連続でのミスで脱落というルールだ


元長髪が折り返す前に、次のメロディが流れはじめる


「ぅららあああぁぁーー」


元長髪は怒号の声を出し全力で走る、間に合わないと思ったのかとっさにヘッドスライディングでラインを触る


監督アベは手を大きく広げセーフのポーズをする


その後の往復でもう1人の坊主もミスをし

2人の記録は145となった


パチパチパチパチ

ギャラリーから拍手が起こる


(ただのシャトルランじゃねえかよ)

シンは冷めた顔で元長髪を見る

元長髪はうつ伏せのまま背中を大きく上下に動かし息を整えている



監督アベが声を上げる

「サッカー部‼︎あと3分で集合時間だぞ!水分取ってさっさと並べよ」


ギャラリーの誰しもが『ひどいなこいつ』という想いだろう

最後まで頑張った2人が1番辛い想いをするのだ


元長髪は身体をおこし、ヘロヘロに歩きながら入り口外の蛇口に向かう

途中壇上の前を通る、シンと元長髪の目が合う

元長髪が息をあげながら声を振り絞る

シゲ「…っふぅ、…って、てめえ…」

シン「いいから顔洗ってこいよ」

シンは真面目な顔で答える


元長髪は舌打ちをして体育館の外に出る


ヨウ「めっちゃ睨まれてたじゃんw」

ヨウが笑う、ヨウ達に経緯を話すシン





教員「じゃあクラスごとに2列で並んでー!学級委員は1番前で並ばせてー」


学年主任の先生が声を張り上げる

1番前にはすでにトモがいる。前ではなく後ろを向いて、クラスのみんなに自分の後ろに並べと手を挙げている

シンに気づいたトモが呼び手を振る

トモ「シンー!前来て!」


列の後ろのほうに並ぼうとしていたタケとカワを捕まえて学級委員であるシンの後ろに並ばせる

タケの体操着はすでにびしょ濡れだった

シン「タケ何回だったの?シャトルラン」

シンがタケに尋ねる

「!?!?!?!?」

タケに話しかけたとき、シンは違和感を感じた、そして感じた違和感をタケの返答を待たずにそのまま口に出す

シン「タケ!!髪薄くなってねwww」


タケはサッカー部であったため元々坊主ではあったが、その坊主が更に青々しく薄くなっている


周りを見回すと、所々にいるサッカー部全員の頭が5厘刈りになっている


タケ「ああwちょっとサッカー部全員丸められたw」

タケはそれほど嫌がったそぶりも見せず笑って答えた、元々坊主だったタケにとってはあまり気にすることではなかったらしい


タケ「なんか入部希望者の1人が喧嘩して、さっき遅れたからって全員刈られたw」


シン「わりい、その喧嘩相手俺だわw遅れて来た入部希望者ってあいつだろ?」

シンは元長髪のシゲを遠くに見つけ指を指す


タケ「マジかよーwシンが原因かよ!」

シン「バカ!喧嘩売って来たのはあっちだよ!」

するとタケは隣に並んでいる、隣のクラスのサッカー部にそれを伝える

笑っていたのはタケだけだった

それを聞いたサッカー部の数人は、シンを見て「んだよ…」「うざ」と小言をいう

何列か挟んだサッカー部がシンを睨む

シン「おい、なんだよ?」

シンが睨むサッカー部に向かって声を張る


ペシッ

タケ「やめろよw」

とタケがシンの目線に入り込みシンの頭を叩く


この出来事でシンは完全にサッカー部を敵に回した





シンは気を取り直して学年全体を見回す

入学式では列の1番後ろでずっと寝ていたシンだったので、1番前から正面から学年全体を見回していた


10クラスあるうちの5クラスが坊主のサッカー部が学級委員

シンのクラスC組の隣、D組にはヨウと、ナリとレイ

学級委員はヨウがやっていた

元長髪シゲはB組、1番目立つ白と金のアディダスジャージのヤンキー風情はH組


教員「はい!それでは定刻になったのでオリエンテーションをはじめます!今日はクラスの信仰を深めるためにスポーツ大会を行ってもらいます!」

学年主任が話し始める

教員「競技と人数を発表するので、この後クラスで集まって参加者を決めてください。まず…大縄跳び男女各6人で合計12人!」

(まじかよ…そんなん高校生にもなってやんなきゃいけねぇのかよ)

シンは落胆した表情で項垂れる


教員「次にバスケット、5人これは男女別な」

シン「俺バスケー」

シンはトモに向かって勝手に声をかける

教員「次に男子はフットサル6人、女子は6人7脚クラスによって若干人数違うからそこは重複ありで出たい奴が出ろー!それでは15分で決めてくれ!」


学年主任の話が終わるとざわめきだす生徒たち

トモ「とりあえず男女に分かれて決めよっか」

トモの提案でシンがクラスの男子を輪になって座らす

シン「んじゃーとりあえずバスケから決めていい?バスケやりたいひとー?」

ユウ「とーぜん!!」

意気揚々と手をあげるユウ

シン「他には?」

大人しそうだがクラス1の巨体のサトが手をあげる

サト「俺もバスケで…」

ユウ「お!経験者?!」

ユウが喜ぶ

サト「違うけど。なんとなく…」

ユウ「おーけーおーけー!デカイからありがたい!」

ユウがウキウキして指揮をとり始める

ユウ「後誰かいないのー!?」

シン「とりあえず俺もバスケやるよ」

シンも参加を表明する



他に手をあげる者はいなそうなので、シンは次の競技の参加者を決める

結局なんでもいいという、数人のうちの身長が大きい2人をバスケに誘いチーム分けを終えた




教員「じゃあバスケのメンバーはそのまま体育館中央に残って!フットサルは野外のコート集合で!そのほかのやつは練習するなり応援するなりしててくれ!」

学年主任はどこからか電子メガホンを持ち出して指示を出す


トモが声をかけてくる

トモ「シンバスケ?私、縄跳びだから応援してるね!」

と言うと女子メンバーはコート外にクラスごとに固まる


体育館の中心でクジを引いて対戦クラスを決めるようだ

ケイ「えーバスケはトーナメントで1位2位3位を決めます。全競技4位まで決めて総合優勝を決めるからな!10クラスだからとりあえず1回戦やって、1番得点を取ったチームが2回戦はシードだからね。」

C組担任のケイ先生が体育教師だけあり、バスケを仕切っている


学級委員がクジを引く、シンの紙には【2番】の文字

ケイ「じゃあ1番のクラスは?」

AとBの学級委員が手をあげる

続いて2番、シンが手をあげるとヨウが

ヨウ「え!シンとかよ…まじ最悪w」

ユウが驚く

ユウ「シンの友達?最悪なの?!」

ヨウ「いやこいつめっちゃうまいんだよ…」

ユウがシンを見つめる



ユウ「バスケやってたのかよ…言えよ!ってかバスでやってないって言わなかったけ?!」


シンは笑って何も答えない




1試合目の最中にシンはメンバーの4人を集める

シン「わりい、やるからには俺負けず嫌いだから一応作戦たてていい?」

ユウ「そおいうのいいねえ!!とりあえず優勝するから!!」

ユウのテンションがあがる


シンは軽く作戦を話してるうちに、1試合目が終わる

1試合10分のみという短いゲームだ


ユウ「よしゃ、いくか」

シンを先頭にコートの真ん中に集まる


相手はD組、ヨウ、レイ、ナリがいる


シン「おまえらみんなバスケかよw」

笑って話しかけるシン


レイ「シン手加減しろよw」

レイがシンに声をかけるが、いつの間にかバッシュに履き替えたユウは

ユウ「シンの本気を見せてくれ!」

とハッパをかける

シン「いや、バッシュもってきてたのかよw」


ユウ「昨日買ったおニュー!はきたくてさw」

ユウは嬉しそうに屈伸する




そして10人が

ジャンプボールのセットに入る

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