ピザ#3
集合時間は17時、体育館に体操着でという指示
シン「あと2時間なにする?」
学校指定のハーフパンツに自前の黒の長袖Tシャツ、黒の少し大きめなパーカーを着たシンが尋ねる
ユウ「おれちょっと先生のとこ行かなきゃなんだよね」
ユウはそう言うと両手を合わせ謝り、部屋を出て行った
相部屋の残り2人に
ユウが戻ってきたらラインしてくれ、と伝言をしてシンは中庭に向かった
この施設にバスで入るとき、中庭にバスケットゴールがあるのが見えた
中庭につくと3人の生徒がバスケをしている
シン「混ぜてもらってもいいすか?」
反り上がった眉に校則違反のパーカーとシャツ、ポニーテールに刈り上げた髪型のシンの外見から、そんな社交的な台詞が出てくることに驚いたのだろうか、3人の動きが止まる
ヨウ「イカツイやつ来たなwやろうよ!」
口を開いたのは色白爽やかなヨウ
ナリ「とりあえず2対2でもやろや!」
レン「俺初心者だけど大丈夫?w」
関西弁のナリと、中性的な顔立ちのレン
ヨウ「バスケ経験者?」
ヨウはボールをシンにパスし顎でシュートをしろと合図する
中庭にはコートラインはない
(スリーポイントより少し短いかな)
シンはシュートをうつ、3人はシュートの行方を目で追う
ボールはゴールに弾かれ高く上がる
レンがボールの方へ歩み寄ろうと一歩出すと同時に、シンはゴールに向かって走りだしていた
シンは落ちてくるボールに合わせて高く跳び、右手一本でタップシュートを決める
レン「うま!!」
初心者のレンが声をあげ、ナリも目を見開いているがヨウはなんら驚きを見せない
シン「ヨウは経験者?」
シンは、ヨウからのパスで経験者と読み取った
ヨウ「一応ね。」
と言うと、癖のないお手本のようなレイアップをひとつ決める
ヨウとレン、ナリはシンの隣のクラスであった
レン「じゃあ経験者と初心者で別れようか」
レンの発言で2on2が始まる
スポーツ経験者なら誰しも感じる、初心者とのやりづらさ
対面の卓球やテニスなどは相手と触れ合うことがないが、サッカーやバスケ、剣道など相手と触れ合う競技は動きが違いすぎる分、やりにくい
ヨウがトップでボールを持ちスタート
サイドのナリにボールを渡すとゴール下へ走り込もうとするが、ナリはすぐにレンを抜くため体育ドリブルをつく
体育ドリブル、要はバスケ経験者の手に吸い付くドリブルではなくおぼつかないドリブルだ
ヨウがゴール下に抜ける前に、ナリがシュートを放つ
初心者と行うスポーツのやりにくさは敵だけでなく、味方チームでも同じである
ヨウはゴール下は抜けようと勢いづけた足をとめる
シンがボールをトップで持つ、ヨウの時と同じようにサイドのレンにパスをする
レンもナリと同じようにナリを抜こうとするが、ナリにスティールされそうになりドリブルを止める
シンはレンとは逆方向に一歩踏み出すフェイクをかけ、レンの方向にボールをもらいに行く
ボールをもらったシンはすかさずジャンプシュートを放つ、ヨウは軽く手を上げディフェンスする
さっきのシュートより直線的な弾道のシュートは〈吸い込まれる〉というよりは〈押し込まれる〉
「早っ!うまいな。」
ヨウがつぶやく
レンとナリはこんなプレーで、はしゃいでいる
シン「インサイドプレーヤーだろ?」
シンの発言にヨウが驚く
ヨウ「わかるのか?!」
シン「よし!こい!」
シンは笑顔でポストプレイのディフェンスをする
ヨウはトップでナリにボールを持たせ、ハイポスト辺りで面をとる
ナリがヨウにパスをする、シンは無理にパスをカットする素振りは見せず肘をシンの背中に軽く当てる
ヨウ「ナリこい!!」
ナリがヨウの合図で、サイドを走り抜けざまにボールを手渡しで貰おうとする
ヨウは一瞬出したボールを引っ込め、ゴールへと身体を向ける
シンはヨウの顔が見えた瞬間、ほんの軽く腰下で構えるヨウのボールを上からはたく
ヨウの持っていたボールが下に落ちるが、ヨウはそのまま強引にドリブルを始め右に抜く
そのままついていこうとするシンの左肩に鈍痛が走る、ナリがスクリーンをかける
ヨウはご自慢の綺麗なレイアップを決める
シン「初心者じゃねーだろw」
シンが笑ってナリ言う、ナリはどうやらNBAが好きでバスケには詳しいらしい、加えてレイアップくらいならできた。
しばらく4人でバスケをしていた
シンはどことなく余裕をもってヨウとマッチアップしていた、それにヨウも気づいたのだろう
ヨウ「シン来いよ。」
シンがボールを持ってトップでゲームを始めようとした時にヨウが笑って挑発の声をかける
シンは力強くボールを叩きつけると、バウンドしたボールは高く上がった
ボールが落ちてくる前にパーカーを脱ぎニカッと笑う
落ちてきたボールをそのまま突き出し右に抜こう足を出す、ヨウはそれにサイドステップでついていくがシンはそれをレッグスルーでバックする
シンとヨウの距離が離れたところで、シンはドリブルしたまま膝を落とし右手を添えるふりをしてシュートフェイクをかける
ヨウの身体が起き膝が伸びるのを確認し、シンはヨウをブチ抜く
ヘルプに来たナリの前でジャンプシュートのフェイクをかける
「うぉ!まじかw」
ナリは簡単に飛び上がる
シンはピボットで足を出し、下手投げでボールをボードに投げる、そのまま右手でキャッチ、タップシュートの素振りを見せてダブルクラッチで左手でシュートを放つ
あまりにスムーズな流れで
ヨウは抜かれた位置から動かずシンを見る
レン「すげーっすげー!!今のやばいな!」
レンがはしゃぐ
ヨウ「シンはバスケ部入るの?」
ヨウが口を開く
シン「…いいや。そのつもりはない、ヨウは?」
ヨウ「俺もそのつもりはないかな」
シン「それだけうまいんだから、やりゃいいのに」
シンの台詞に(お前が言うなよ)という顔をするヨウ
ヨウ「俺ピザ作りたいんだよwじいちゃんがイタリア人のハーフでさ、若い頃はイタリアにいたらしい
いつか俺もイタリア行って料理したいんだ。だから高校は料理のバイトができるように克武入ったんだ」
へーっと言う顔をする3人
そのあとも4人はバスケを続けながら各々の話をした。
レン「ぼちぼち時間じゃね?体育館いくか」
レンの提案で4人は体育館に向かった
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