バリカン#2


シンは少しタケが挙手した2.3秒後に手をあげる


ケイ「他にはいない?学級委員やりたいやつ。」

担任のケイ先生がクラスの生徒に聞くが他には手を上げる様子の生徒はない


宿泊施設は軽井沢の森の中

欝蒼と木々等が生い茂る森の中に【軽井沢少年の森】という広大な敷地をもった施設がある

施設に到着してすぐに、クラス別に分かれて小さな講堂に移動し学級委員を決める流れになっていた




誰が学級委員などという、めんどくさいクラス代表を自らやるのだろうか

やるやつといえば、成績の内申点のためか、相当目立ちたがりか

タケはどちらかといえば前者と後者どちらもだろう


タケ「サッカー部はやれって言われてるんだよねー」

と半笑いで手を上げていた




-5分前-

シン「ねえ、お前学級委員やらない?」

ふいにシンはトモに尋ねる

もともと人に指図されることを嫌うシンは

小学校、中学校と学級委員を幾度となく担ってきた

それに加え、目立ちたがりとは自分では認めたくはないが目立つことに優越感を感じるナルシシストである


シンはトモにも同じような雰囲気を感じていた、クラスでの立ち位置や、シンが誘えば断らないだろうと思っていた



トモ「え⁈シンやるの⁈シンとなら別にいいけど。」

事実トモも中学で学級委員をやっていた

学級委員はクラスで男女から1名ずつ選出される


トモが笑顔で手をあげる

トモ「けいちゃん、私やるー!」

ケイ「先生をつけろバカ!他には?トモでいいの?」

ケイ先生の問いに、クラスの女子からは異論はでなかった

続いて男子、腰パンで制服をだらしなく着こなし浅く椅子に座りながらヘラヘラした笑顔でタケが手をあげる


(めんどくさ、タケもやりたがってるのかよ…)


トモに肘で合図され、シンも手をあげる





ケイ「んーじゃあどうしよっか、じゃんけんか、多数決かおまえらできめな」

ケイ先生がシンとタケ言うとすかさず

トモ「私、シンとじゃなきゃやらなーいw」


トモは冗談まじりに笑う


タケ「なんだよw俺はじゃダメなのかよ!まぁ俺もサッカー部の顧問に言われただけだから、別にシンでいいよ!その代わりじゃんけんで負けたってことにしておいてw」


クラス全体が笑顔になり

シンとタケは目を合わせて笑った


そのくらい入学初日にしてクラスの雰囲気は和やかだった





シンとユウは講堂から部屋に戻る

夕方のレクリエーションの時間まで2時間は自由時間だ

宿泊部屋は4人1組、ユウとは出席番号が前後だったことによって同じ部屋になった


(スピーカー)『サッカー部は15分後に体育館集合してくれ!!』

館内放送でサッカー部顧問アベの声が響く



克武高校は共学になるにあたり、男子サッカー部に力を入れることが決まっていた


都内や関東近郊から合計30名のスポーツ推薦を行い入学させた、その噂を聞きつけ推薦ではなくともサッカー部に入る生徒が30人程


合計約60人のサッカー部が体育館に向かう


(スピーカー)『あとサッカー部入部希望者も同じく体育館集合してくれ。』


(まだ増えるのかよサッカー部…)


シンはすこし怪訝そうな顔をし部屋から廊下に半身を乗り出し人の動きをみる




入学式の前から学校の廊下で十数人で固まり、テンション高く、いわゆる《調子に乗ってるから集団》をシンは快くは思っていなかった



ドンッ


シンの肩が大きく揺れる


後ろから肩同士がぶつかる感覚

長髪の生徒「わりいわりいwwこれからよろしくなーw」

ニヤニヤした顔、肩に着きそうな長髪

シンは眉間にしわを寄せ、どちらかといえば喧嘩口調で大声を出す


シン「おう!よろしくな!!!」


長髪の生徒「調子にのんなよww」

長髪は顔を前に向け歩いたまま半笑いで答える


長髪の後ろを歩く2人の坊主がこっちを向く


シン「髪切れよーサッカー部ー」

シンは挑発すると、長髪の足が止まり振り向く

声は聞こえないが「はぁ?」と口が言っている

振り向いた長髪の生徒は足をシンの部屋の前に向け声を発する

長髪の生徒「調子乗んなよてめぇ」

シン「てめえこそな」


シンを見下す長髪の生徒は身長180cm位はあるだろう


すかさずユウが長髪の胸とシンの胸を両手で引き離す

ユウ「やめとけって!初日から」


長髪の生徒の腕を坊主の仲間が引っ張る

坊主の生徒「いいからいくぞ!」


長髪が舌打ちをし体育館に足を向けようとしたとき

シンがはっぱをかける

シン「遅れんなよーww走ってけよw」


瞬間長髪は振り向きざまにシンに向け飛び蹴りをかまそうと跳ぶ


シンは避けずに前にでて、左手腕で飛び蹴りをもらう

と同時に飛んできた足をつかみ、長髪の身体を壁に叩きつける


ユウと坊主2人がシンと長髪の身体を羽交い締めにし引き離す

近くにいた坊主の1人がシンを部屋へ押し込むように蹴る

シンのみぞおちに足が入り

シンとユウの身体は相部屋におさまった

ユウがシンの前に回り込み、外に出さないように睨む


外の坊主の集団もシンの部屋のドアを閉めて、長髪を引きずって体育館にむかっている

長髪は大声で暴言を吐きながら連れて行かれる




ユウ「おまえさぁ…ひとつ言っていいか…」

神妙な面持ちでユウが口を開く

ユウ「長髪に売るのはいいんだけど…

シンもなかなか長髪だからなww」


シン「え?あ…そうだなw」

笑い合う2人

シンは髪を短いポニーテールに結ぶ


シン「俺も長髪かww」




アベ「てめえら舐めてんのかよ!」

ドスの効いた声でアベが5人を並べる


長髪1人と坊主4人

「「すみませんでした!!」」

坊主達は声を揃えて頭をさげる

それに習って長髪も頭をさげる



克武高校サッカー部は元jリーガーのコーチのもと、体育教師のアベが監督をやる

入学する前、2月ごろから推薦者の入学が決まっておりサッカー部の入部希望者は練習を始める、いわゆる異例の力の入れ方だ

入部条件を設けているわけではないが、入部した者は皆坊主にしていた


長髪の名はシゲ、中学時代東京都でベスト8だが足立区の選抜チームに選ばれていた

素行が悪く克武高校からは声がかからなかったが、サッカー部のコーチもアベもまたシゲのことは認識していた

シゲも克武高校のサッカー部の入部希望であり、自分の足でサッカー部入部希望者として体育館にむかっていた


アベ「おい、シゲ。俺はチームの規律を乱す奴が嫌いなんだよ。なんで集合時間に遅れた」


アベの質問にシゲの目つきが悪くなる

シゲ「トラブってました」


アベ「一応敬語は使えるらしいな。おいリョウ!おまえは?」

坊主の1人リョウにも尋ねる


サッカー部員「…自分も同じくトラブってました。」


アベ「喧嘩か?」

並んだ5人は目線をさげる


アベ「ここにいるシゲは入部希望にもかかわらず、時間も厳守できずに、入学式初日から喧嘩する奴なんだけど

こいつをサッカー部に入れていいのか!?」

アベは60人近くいるサッカー部の連中に叫び問いかける


が、誰も応えない。全員目をそらす


アベ「答えないなら俺が決める!おまえら今後後悔するなよ!サッカー部のモットーは全員共有だ!喜びも怒りも苦しみも全員で共有しろ!よって連帯責任だ!!

バリカン持ってこい!!」


「クソっ…」

シゲは小さい声で眉間にしわを寄せる

(絶対あいつ殺す)

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