1on1

駆足登

第1話 ナイキのソックス

『自惚れんなよ。』

ソウの声で目が覚める




(夢、、朝からテンション下がるな…)


今日入学式を迎える克武(コクブ)高校は、女学園として中学、高校、短大をもち創立100年を超える、歴史ある学校である


シン「行ってくるわー」


シン母「ちょっと待って!⁉︎1枚おばあちゃんに送るから撮らせて!」


シン「早よーして、、遅れるから」

だるそうにシンは応える


家の前からひと気のない道を20mほど歩くと4車線の通りに出る

その4車線を超えた向かいに桜の木が見える

シンの母は4車線越しに桜を写し、目を細めてスマホの画面のシンにピントを合わせる






(なんで入学初日からレクリエーションなんか…)


克武高校では今年から入学式の後に1泊2日のレクリエーション宿泊イベントが設けられていた


大型バスの1番後ろから2つ目の窓側に座り

自分と同じ格好の軍団を見下す


シンの視線に気づき、目をそらす気の弱そうな男、舐められまいとガンをつけてくる男、グループでキャッキャとはしゃぐ女子




「イケメンじゃん!隣いい?」


少しテンションの高い声で

見ていた窓とは逆から声が聞こえる


「あれ、不機嫌??誰か座る予定だった?」


不機嫌ではないが、自然に眉間にシワがよっているシン

そこに立つ男は、嫌味のない笑顔でシンを見ている


シン「いや…別に座れば?」

「アザっす!!」


「ユウって呼んで!なんかスポーツやってるの?」


シンは目を丸くした


テンションの高い理由

質問の意図

ユウの人間性


(めんどくせえやつ座らせたな…)


シン「…なんで?」


ユウ「とりあえず名前は?」


シン「…シン。」


ユウ「シンな!よろしく!靴下!学校指定のやつじゃないでしょ?ナイキじゃん!スポーツやってるのかなって。」


狭い車内でシンは足を組んでいた。裾から見える黒いソックスとナイキのマーク

バスケ用のソックス。


シン「いや別に。」

バスケをやっていたことは言わなかった

高校ではやるつもりはなかったからだ


ユウ「そうなんだ。バスケ用かと思ったは!おれバスケ部入りたいから、メンバー集めたいんだよね!声かけた1人目から当たりかと思ったわ!」


シン「ふーん。頑張って。」


女教師「はい!ちゅうもーく!!!C組全員乗った!?」


声を張り上げたショートカットのジャージの30代の女性は、クラスの担任のケイだ

ケイは女子バドミントン部の顧問だ。克武高校の女子バドミントン部は優秀で、東京の4強に入る

ケイはそんなバドミントン部の顧問だ、少しヤンキー気質でテンションは高い


ケイ「んじゃ出発するから!!20分くらいで高速のるから、それから全員自己紹介ね!考えとけよ!」


クラスの半分ほどが返事をするとバスは動き出す





「ねえねえ!」

クスクスと笑い声混じりの女の声が頭の上から聞こえる


「2人は同中?」


シンが声の先を見るより先にユウが答える

ユウ「違うよ!そんな仲良く見えた?」


「んーん!全然」

ユウ「そうなんだよwまだ全然心開いてないのw」


シンが見上げると

シンのバスの背もたれの上から顔を出す2人の女の子、トモとマリ

他にも後ろの席の反対窓側の席の2人の女子もこちらをニコニコと見ている


大型バスの最後尾一列を陣取る奴らは大概、クラスの中心のやつと、相場が決まっている


克武高校は中高一貫の元女子校


毎年中学からエスカレーターで高等部に上がる仕組みだが、今年度から男子の募集が始まり、中学1年と高校1年には男子が入った


すなわち、このクラス30人のうち半分の女子15人は中学生活を共にしてきたのである


マリ「見た感じシンが1番イケメンだね!」

マリがニヤニヤして言う



「いやいやおれの方がイケメンじゃね!?」


声をかけかけてきたのは反対窓側に座っていたタケとカワ


少し騒がしくなったバスの後部座席等にこれ以上絡んでくるやつはいない


(このグループのカーストは決まったな)

これからの高校生活を謳歌しようと、シンはバスの中で入学初日を迎えた。

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