加護返却ついでに
「加護を返すついでに、新しい能力も追加しておいたよ」
次の日の朝、俺の目の前に突如現れた神様は、そう言って俺の胸部に光った何かを埋め込んだ。
まあ、何かは容易に理解できる。あの忌々しい加護を再び身体に埋め込んだのだ。
あまりに突然だったため拒否できなかった……、俺の警戒不足だ。まあ、警戒したところで相手は神様、俺の考えてることくらい簡単に読めるだろう。
「追加って……、別に何もいらねぇんだけど」
「そう遠慮するなよ、好意で追加してあげたというのに」
いや、俺は本気でいらないって思ってるんだけど。
どうせこの神様のことだ、ロクでもない加護を追加してるに決まってる。
だいたい神様がどんな奴かわかってきたからなぁ、俺を眺めて暇つぶししてんだろこいつ。
俺は明らかに不機嫌そうな顔をしながら、神様をジーっと睨んだ。
神様はそんな俺を面白おかしそうに眺めている。
「別にボクは君で暇つぶしをしようだなんて思っていないよ。君がこの世界にいるのも、ボクの力不足が原因の一つだからね」
「どうだかね、裏があるんじゃねーの」
神様は返事をすることなくフフっと不敵に笑うと、俺の額にそっと人差し指を置いた。
俺のおでこに何か付いてたのだろうか、触ってみたが特に何かあるわけでもなかった。
「因みに追加したのはボク自身、ボクが君の専属の神様になったということさ」
「え、いらん」
真顔で俺はそう返す。
神様持ちってなんかカッコいいけど……、この神様使えねーしなぁ。
というか、神様が1人に固執していいのだろうか。
「あからさまに拒否されると流石にボクでも傷つくよ、神様だって万能ではないんだ。それと、神様はボク以外にも沢山いるから、意外と自由だったりする」
神様はわざとらしく涙ぐむと、俺の疑問を見透かしたかのように一言付け加えた。
俺を元の世界に返せなかったりと意外と役に立たないところから、あまり高位な神様でもないんだな……と、もう一つの事実に気付きながら俺は「ほうほう」と頷いた。
「というわけで、今更自己紹介になるけど、ボクが君の専属の神様となるアフロディーテ。これからもよろしく……かな?」
神様に詳しいわけでもない俺でもなんとなく聞き覚えがあったんだけど……、まあ、それは気にしないでおこう。
俺は「よろしく」と返しながら神様の手を握る。
ルナ曰く、この世界での神様持ちというのはかなりの強者しかいないらしく、そのような存在に今俺がなったのだと思うと……、なんだろう、とても怖い。
最弱な俺が、最強であろう人物たちと同じ土俵に立つってことだろ? 無理無理、俺にそんな度胸なんてない。
「専属となったからには、君の言うことにも多少は耳を貸さなければね。ボクと君は殆ど同じ立場に立ったと思っていい」
「じゃあ、俺が手を貸せって言ったら手を貸してくれるってことか?」
「気が向いたら助けてあげるよ」
それって、結局専属になった意味あったんだろうか……。
神様は先ほどの言葉を残すと、空気に混じっていくように姿を消していく。
数秒後には完全に消えていて、いつのまにか気配もなくなっていた。
残った俺は、何となく理解しつつも混乱している頭を冷ますためにリビングへと向かう。
神様との急なイベントなせいでまだ朝食をとっていないのだ。
キュリアやルナはもう朝食を済ましているだろう、最後に朝食を食べるのって意外と罪悪感あるんだよなぁ……。
俺は後頭部を掻き毟りながら、ゆっくりと自室のドアを開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます