第3話 理不尽な運命

「はあはあ……――――――」


「1度目の『やり直し』ですね」


そう、彼女がくれた『ハッピー』という能力はやり直しができる、タイムリープ能力だった。

しかし、戻れるのは俺が天使と会った日まで、所謂秋菜が死ぬ時間から24時間以内。

それでも秋菜を助けるためにやり直すには十分な時間だった。




未だに脳裏からは秋菜の死体が焼き付いていて、気分は最悪だった。


「防ぐことはできませんでしたね」


この天使は空気を読んで黙っててくれないかな。



携帯で日付を確認し、前の日に戻っていることはわかった。

な、なら…………秋菜は――――――!?




急いで電話しようとするが手が震えて上手くかけられない。

やっとの思いでかけた頃には目に涙を浮かべていた。


「秋菜……あき……な――――」



今まで感じたコールの中で一番長く感じた。


――――プルルルルルップルルッ


「ナツ君どうしたの?」


「――――ッ!!!」


声を聴いた瞬間に張りつめていた思いが全部弾ける。

ああああぁああぁぁぁああぁ、秋菜!!よかった……よかった…………!!


「いや……その…………元気か?」


「えっちょっ!!どうしたの!!??」


いつもと違う俺に少し戸惑っているようだったが、上手く説明する言葉を俺は持ち合わせていない。

何とか誤魔化しきって電話を切る。

安心するのはまだ早い。これから頑張らないと……。






それから何度も何度も時間を遡り秋菜を助けようと試みたが、どうしても死んでしまう。

その死に方に規則性はなく、色んな死を見てきた。

時には秋菜自身の自殺の時もあった。

色々と甘く考えすぎていたようだ。



「秋菜の死因が様々なのはどうしてなんだ?」


いつも一緒に居るが、何も手助けしないソラスに問いかける。


「はい。秋菜さんは死ぬってことがほぼ確定しているというだけで、ただ自然の摂理に従って死んでしまっているのです。

 なので、直接的な原因はなく、強いて言うなら運命というところでしょうか」


「………………」



やはり俺の考え通りだった。

これで、どこに逃げるかとかの選択肢は無駄だとわかった。

ではどうするか・・・・。人間一人の運命を捻じ曲げて、幸せを勝ち取るためには…………。


シンプルな答えが俺にはあった、希望があった。

よくある選択肢のよくある結末である。

不思議とこの選択を思いついた時には納得し、一番受け入れるのが簡単だった。

俺の中で一番大切なのは秋菜だ。

だったら――――――。

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