表名「美園」裏名「黒の内側」
依頼者
「さっきトイレにで見かけた」
「え? 教室にいましたよ。なあ、友達」
「ああ。話してました」
「え? でも、見たぞ。なあ、友達」
「俺も出てくるところをみたけど」
「え?」
「え?」
みたいな会話で、その人の幽霊が現れたと冗談交じりに揶揄されるだけですぐに話は終息しそうなものである。それは、どちらかの勘違いで、他人の空似だと言ってしまえば、そのような気もするとおもってしまい、勝手に納得して話自体が消えるからである。しかし、今回問題となった
無論、この状況を最も不愉快に感じているのは大輝本人である。なにせ、自分が今現在願ってやまない、歩くという行為を自分ではない自分が平然と行っているのだから。誰か一人が冗談のように言っているのであれば、ただ笑い飛ばせばいいのだが周囲の全ての人がそのように言うのだ。まともに受け止め、真剣に考えてしまうだろう。担任が心配しているのはその謎の存在の方ではなく、大輝本人だ。自分の不幸を、運命を受け入れて周囲と協力しながら生きるという方向に向かって歩き出している彼にとってそれは足を止めてしまう理由になってしまう。悩み考えれば考えるほど内側へと螺旋する性格なので、今後の生活に支障をきたすのではと心配しているのだ。近くの友人たちは、彼を必死に励ましているがそれにも限界がある。あまり楽観視できる状況ではないようだ。
そこで俺は相談を受けた日の翌日から潜入捜査を――したかったのだが、小学校に忍び込むわけにもいかず、何か仕事を言い訳にしようにもその手は中々手続きが進まず、俺は結局断念することになった。そこで俺の弟子であり、義娘のミソノに潜入してもらうことになったのだ。
ミソノは小学校四年生の夏ごろ俺に弟子入りを志願してきた。それはあまりにも酷く、残酷な日々から抜け出すためなのだが、俺の場合は助力によって世界を裏返す方法を薦めた。
しかし、ミソノは俺の仲間になることを強く願った。幾つか厳しい試練を課したのだが、それでも弱音一つ吐かずに完遂した。その意気をマザーも俺もくみ取り、受け入れることで俺の弟子となったのだ。
黒のメンバーになる際には幾つかの条件が必要となる。まず、師となる人物が居なければいけない。その人物の子となり、しばらくはその元で共に任務をこなしていくのだ。またその師が子を取るためには、マザーの事前の了承と互いのキスが必要である。これによって人為らざる力を得ることができるのだ。そのため、親と子は異性であることが多い。偏見があるわけではないが、同性とのキスを自ら好んで行うような、そのような思考は俺にはない。どのみちしなければいけないのであれば、できれば女性がいいと言っていたのだが……まさかその相手が小学生だとは思うまい。あの時だけはものすごい背徳感を感じてしまったものである。さらに俺が大人げなくじれったいことに渋るものだから、ミソノの方から責められるというトンデモシチュエーションになってしまい、師弟関係というよりも相棒に近い立ち位置にいるような気がしている。
ふわふわのフリルミニスカートを翻さずにたなびかせているミソノの能力は
そんなミソノが担当していた事件がこのドッペルゲンガー小学生事件だった。
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