第9話 握手した
校門の前を彼が歩いている。
息を潜めるというかこのドキドキを必死で抑えるように近づいた。
「よしっ」彼の肩を叩いた。 が、途端にどうしようもない焦りが込み上げ、とっさに叩いた肩の反対側に逃げ回る。
彼は振り返りキョトンとしている。
前に回った私は、また気持ちを整えた。 彼が振り向き戻るとビクッと驚いた、そんな姿がとてつもなく可愛らしくニヤけてしまった。
彼に用事がないことを願い「帰り?同じ路線だったよね?一緒に帰ろう」と言った。
たくさん聞きたいことがある。たくさん伝えたいことがある。
私が好きなもの、好きな食べ物、地元の商店街の精肉店のコロッケが美味しこと。
彼の好きなもの、好きな本は何? 好きな映画は何? いっぱいいっぱいしゃべりたい。私ばっかりしゃべっている。でも笑顔で答えてくれる。距離が縮まっていく気がした。
もしかして彼は私を好きになってくれているのかな……この楽しい時間は……あの御呪いのおかげなのかな。別れ際、握手した。
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