第8話 秋、マラソン大会

秋のマラソン大会。


クラスで並んでいると偶然横に彼がいた。


「柊くん、緊張するね?」初めて話しかけた。


運動が好きじゃないことを知った。


「鈴森さんは嫌じゃないの?」驚きとともに嬉しかった。


私の名前、知ってたんだ。


とてつもない嬉しさに 「七でいいよ……名前。」調子に乗ってしまった。


呼び名まで注文してしまうなんて。



このチャンスを無駄にしたくない。「どうか、神様」と御呪いをかけた。


手を握り頬に触れ祈った。リラックスできる方法という口実で誤魔化した。

 




 あの日から目が合い挨拶など少しは話すようになったのに、2年生になりクラスが違うため、少しずつ話す機会がなくなっていった。


幸い通学の電車は同じだったので、姿を見かけられる。


こちらから偶然気付いたフリをして手を振る。外側に大きく手を振る。


効果があるかなんてまだ不確かなこの御呪いの効果を持続させておきたい為。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る