第6話 握手しよう
校門の前、肩を叩かれた。
振り向くと誰もいない ……前を向きなおすと七がいた。
僕はビクッと驚いた。
「帰り?同じ路線だったよね?一緒に帰ろう」
と驚いた僕に笑いながら七は言った。
2人並んで歩いている、歩幅、歩くスピード、すれ違う同校の制服を着た生徒。
平然を装う僕の姿を七にはどう映っているのだろうか、見破られているのではないか、ライアーゲーム状態の感覚だ。
雰囲気は良好だ、七はたくさんしゃべってくれる、好きな本の話、好きな映画の話、「好きな映画なに?」など僕が話しやすいように色々聞いてくれる。
完全にこのトーク番組のMCは七だ。
少し情けなくもあるが、楽しく嬉しい。
やっぱ好きだ。
呪いをかける!
七が降りる駅に着く直前、僕は
「七、ありがとう、楽しかった、気をつけて」と、この時間を惜しむ気持ちで握手をし呪いをかけた。
数日、数週間どれだけ経っても呪いの効果がない。彼女に会っても、挨拶して少し話すだけ。
放課後、向こうからどこか裏に呼び出されて告白……なんてこともなく、気持ち悪い妄想して終わる。
この呪いさえあれば上手くいくはずなのに。
だって2人にも効果あったし、好きにさせることが必ずできる。
もう一度かけてやる。
朝、学校で会った時「おはよう」とともに握手を求めた。
「えっ、握手好きだね。おはよう」
と笑って握手してくれた。
少し不自然だとは思ったが呪いをかけた。次こそは。
なぜだか効果がなかった。
かからなかった。
彼女にだけかからない。
告白されたクラスの子、サッカー部の後輩マネージャーからは今もまだ好意を寄せられる状態だ。
あれからも何度か七に会う度に握手したが何もない。
馬鹿馬鹿しくなってきた。
こんなバカな自分に。馬鹿どころか最低な人間だ。
呪いなんていう卑怯な手を使って相手に好きになってもらおうだなんて、かけた2人の気持ちもマネージャーの和磨への想い。
潰してしまった。
本当最低だ。
もっともっともっと素直に勇気を出して七にぶつかっていけばいいのに。
ヒーリングショップのおばさんに会いに行った。
またすべてを相談した。
「そうだったんだね」
と優しい声で聞いてくれた。
また少しだけ体が軽くなった気がした。
「大丈夫だよ、そのクラスメイトと後輩の気持ちは1カ月もすれば消えるはずだよ。あとは頑張りな」
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