<第五章:シーカーブリゲイド>
<第五章:シーカーブリゲイド>
戦勝の宴は丸三日間行われた。
特に陛下と共に戦った者達は、大いに称えられ末代まで語り継がれる伝説の一部となった。
戦闘後、感動のあまり気絶する者までいた。
本当に、陛下は凄い人なんだと思う。偶然とはいえ仕えられて光栄だった。
らしくない自尊だが、
「良くやったのかな」
腰に帯びた古い剣に触れて、独り言ちた。
王城の食堂は、荒い戦士達と炎の熱気に包まれている。
ラナが、屈強な諸王の勇士相手に飲み比べで勝利していた。今も続々と挑戦者が現れている。それを遠くから見ていると、一人の男に話しかけられる。
「アシュタリアの狼殿。貴公は、そこのエルフの夫と聞いたが」
「如何にも」
「何故、ラウアリュナ姫がここに?」
「ん」
男は、陛下と共に肩を並べた騎兵の一人だ。さっきロブスの兵に称えられているのを見た。
三十歳半ばくらいの年齢。栗毛で、妙に犬っぽいくせ毛。目鼻立ちに覚えがある。
「まさか、ベルハルト・オル・レム――――」
「またれよ」
口を塞がれた。
「貴公、誰から俺の事を聞いたのだ?」
「そりゃ王からです。王子」
「ここで王子は止めてくれ。ただのベルハルトでいい。デュガン王以外、誰も知らぬのだ」
「では、ベルハルト。まあ僕はその、レムリアの内情に少し噛んでいるもので」
「なるほど、アメリア王女が召喚したのも頷ける」
「そこは偶然ですがね」
あまり飲めないが、酒を勧められたので口を付け飲むフリをする。
ベルハルトは、父親そっくりの飲みっぷりで酒を喰らう。
「父上は、息災か?」
「ええ、今はかなり健康です。ただ、すぐ酒の量が増えるのでランシールにぼやかれています」
「貴公、妹とも親交があるのか?」
「今、一緒に暮らしています」
あ、うっかり口を滑らせた。
しばらくの沈黙の後、ベルハルトに酒を頭から飲まされる。
「妹の歳を考えろ!」
「十分な女盛りだ!」
「俺は普通の男の愛人になってもらいたかったのだ!」
「知るか?! ランシールから迫られたんだ!」
「なっ、なにぃ!?」
そんなわけで、宴のイベントの一つとして、レムリアの第一王子と殴り合いの喧嘩をした。
前に弟とやった時は一方的にボコられたが、今度は勝った。
僕も成長したものだ。
宴が終わり、諸王の大地に本格的な冬が訪れようとしていた。
戦場は雪に閉ざされ、しばらくの間、この土地に血が流れる事はない。過酷な冬だ。戦場より人が死ぬ時もある。
自然の脅威は、侵略者には更に過酷なものとなる。過去、この時期にエリュシオンが攻め入った事はないそうだ。
つまり、この土地で僕ができる事はもうない。
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