第14話 ラノベタイトルの様な状況を受け入れる事は、間違っているだろうか?
いや、まあ、、、 なんだ、
俺は、そこそこイケてる顔をしていると、思うのですよ!
親に感謝するレベルには、 はい。
でも、どうなんですか・・・ これは・・・
殺そうと狙った相手を、好きになりますか?
怖い目にあわされた相手に、好意を持てますか?
こんな事を言い出すと、、
ルシフへの信用も無くしてしまいそうで、、、 あれですが・・・
これは、、
罠ですか? ドッキリ?
何の為に??
改めて、稚拙な頭で整理する。
目を覚ましたら、命を狙ってきた狙撃手が、好感度MAXで接してくるんですが・・・ 俺はどうしたらいいのだろうか?
・・・
まるで、ラノベタイトルの様な状況である。
しかし、それは現実に起きていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
やる造が目を覚ますと、そこは森。
まだ仄暗く、日の光を迎える前の肌寒さを残している。
薄い霧がかかり、近くでは水の音。
燃え尽きた焚火の匂いが、辺りに立ち込めていた。
どうやら、森の中で一夜を明かしたようだ。
「すぅ・・・ すぅ・・・」
近くで小さな寝息を立てるルシフ。
驚いたのだが、
薄い布をやる造と一緒にかぶり、温めてくれていた。
思わず可愛い寝顔に見惚れてしまう。
ほっぺを一突き、プーニプニ。
ヤバ、、、
気持ち良すぎる感触に、イケナイ気持ちになりそうで、思わず仰け反る。
理性を保つ自信がなく、
名残惜しいが、この場を立ち去る事にした。
ルシフを起こさないように、静かに寝床を後にする。
すると、布に隠れていたモノが露わになった。
何だ、これは・・・
脚にへばり付く
ボサボサの髪が邪魔で、表情こそ確認できないが、安心しきった寝相であった。
不運の元凶。
意識が飛ぶレベルで殴られたやる造の、やるせない気持ちが膨れ上がる。
今すぐ殴って退かせたいのだが、、 それは躊躇われた。
昨日の二の舞はごめんだからである。
ここは奥の手を・・・
腹を意識して、ケツの力を緩める。
ブフォーーーーーーーーー!!!
「よし!」脚に掴まる手から力が抜け解放される。
白目をむくガキに「ザマァーー」と悪態をついた。
転げ落ちたガキを、、、
ルシフのいる寝床に投げ込み、布をかぶせてやる。
「ふーん、いいとこあるじゃん!」
「うるせい!!」心から響いた声を受け流す。
「風邪を引かれては、つまらんし。 仕方ないだろ?」
適当な理由をニタニタと笑うそいつに、
やる造はため息を漏らした。
その後、
直ぐの事である。
やる造が湖沼で顔を洗っていると、
後ろから見られている気配に気付いた。
振り向くと、
寝ている筈のガキが、やる造の後ろにピッタリと張り付き、動向を観察している。
目が合うと笑顔でニッコリ。
やはり髪が邪魔で、
ハッキリとした確認はできないが、悪意は感じるモノではなかった。
朝食時。
ルシフの特製スープを頬張りながら、笑顔を向けてくるガキ・・・
それもやる造の隣で、体をくっ付けてである。
ルシフが不機嫌そうにこちらを睨んでくるので、
やる造は恐怖でスープの味を楽しめなかった。
食器代わりに使ったコップを洗っていた時もそうだ。
ガキがすぐ隣で、同じ事を真似ている。
試しにコップで水をすくい、口をゆすぐと、同じ行動をしてきた。
悪意無く。
ただ、嬉しそうに笑っている。
その時には、
やる造も、何となく察しがついた。
コイツ、俺に気があるな。と。
(ガキを惚れさせるとは・・・
俺も中々どうして、罪作りな男である!! グフフ!)
やる造は、根拠のない自信に溺れていく。
勢いで、ガキを値踏みした。
(フーム。
小汚い事この上ない、ホモガキである!
俺に男色の趣味は無いし、無口にでもぶつけるか?
アイツもホモっぽいし、実にお似合いだ! ニヤ)
そうと決まれば、おめかしである。
多少小綺麗にして、無口の傍に置いとけばOK。
後は似たもの同士、惹かれ合うのは世の常なのだ。
やる造は一行に休憩の続行を告げる。
本来の目的も忘れ、
もう少し、湖沼にとどまる事にしたのだ。
◇
「ちょっと! やるくん! 大丈夫?」
「お、おう! 任せろ!
ガキの頭なんて、ざっと切って整えればいける!」
ガキを座らせ、髪に櫛を通す。
無抵抗から伝わる、やる造への絶対的信頼感。
他人に髪を許すのって、相当な事である。
ほんと、どうしてそこまで信用できるのか、、 謎であった。
「やる殿は、多才ですな!
我も見習いたいものですぞーーー!」
筋肉だけが取り柄の男が関心の声を上げる。
無口も首を縦に振って肯定した。
周りのよいしょに、やる造は息を呑む。
適当の思い付きが、
どうしてここまで信頼を勝ち得てしまったのか・・・
道具は櫛とナイフのみ。
正直、無理ゲーであった。
「ま、任せとけって・・・」
櫛を丁寧に何度も通し、気を紛らわせる。
むず痒いのか、唸りを上げるガキ。
声が可愛くて、気になる所である。(・・・男の娘って奴だろうか?)
時に妙に色っぽい声を出すのも、やる造をドキドキさせていた。
櫛を通す抵抗が無くなった頃、
ガキの見栄えは随分と良くなっていた。
前から覗き込み、髪を整える。
切る準備は完璧・・・
と、ガキと目が合った。
前髪が流れ、隠れた顔の一部が露見する。
目がとても綺麗で、潤んでいた。
その瞳からは、感謝の念が伺える。
眼尻から垂れた雫が、
どうしようもなく、やる造の心を打ち抜いていた。
可愛いかったのある。
ガキにしては顔がきれいに出来上がっており、どう見ても女の子をしているのだ。
確認の必要があった。
徐に手を伸ばし、ガキの股間をまさぐる。
「ヒグッ!」変な声を漏らし、ガキは固まっていた。
!?
て、 あれ・・・
無いんですけど・・・
たまたま・・・
無いんですけど・・・
「ルシフさん、
ルシフさん、 この子、玉が・・・ ゴフッ!」
「や、やるくんて。。。
どうしてそんなに馬鹿なの???
どこ触ってるのよ! ホント、バッカじゃないの!!」
怒りで顔を引き攣らせるルシフさん。
言葉より先に手が出ていた。
「勢いで、、 つい フグ!」
「つい? なにそれ?
つい、で女の子の大事な・・・
そこで寝てろ!
言い訳は通じず、やる造は崩れ落ちた。
やはり、言葉よりも先に手が出ていた。
容赦のない瞳がやる造を一瞥し、ガキの方に向き直る。
「ごめんね、
私が可愛くしてあげるから、、 大丈夫だよ。フフフ」
選手交代。
ルシフに見詰められ、硬直するガキ。
バイオレンスな光景を前にして、当然の反応であった。
ルシフは「どうしたの?」と心配しながらも、
動かない事を良い事に、人形でも扱うかの如く、手早く髪を整え始めた。
酷く傷んでいるところをナイフで器用に切り落とし、髪の長さを調節、
丁度ショートボブといったぐらいの髪に切り揃え、纏め上げた。
あまりの手際の良さに、一同は感心したのである。
そして何より、
一人の美少女がここの誕生していた。
少女の変貌ぶりに、やる造は口をあんぐりと開け放つ。
ガキをホモガキを断定した自分が、滑稽でならなかった。
今なら、、
今なら彼女の気持ちに、答えてあげても
「おい、ロリコン!
そいつ、私の親友だから!
手を出したら、、、 分ってんだろ? おう?」
デジャブの様な声が、心に響く。
(親友?
またですか・・・ そうですか・・・)
神からの忠告に、やる造は黙り込んだ。
天から降って湧いたチャンス。
向こうからの好感度は良好なのに、
据え膳食わぬはという言葉があるが・・・食えないのである。
生殺しもいい所であった。
(まあ、ルシフと比べてもガキ過ぎるし・・・
・・・グスン。
あれ、、
やべ、、、 おれ、挫けそうだわ・・・)
あまりにも高い壁を思い、辛さを滲ませる。
言い訳を挿んだところで、意味はなかった・・・
果してこの先に、良い事が待っているのか、、、不安で仕方がない。
気付けば視界が涙で歪んでいた。
情けない;; あまりにも・・・
やる造は、こっそりと立ち上がりとぼとぼと歩き出す。
涙を腕でこすり、確りと前を見詰めた。
目的の村は、目と鼻の先であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます