第1話 蔑む瞳
そこは鬱蒼と生い茂る木々により人の侵入を拒み続けた森の聖域ともいえる場所だった。
日中だと言うのに日はほとんど差し込まず薄暗い。
その場所に至るまでに獣道すら在るのか無いのか・・・それが分からない。
だからこそ、人が通った痕跡などある訳が無い。
本来なら水鏡如きが足を踏み入れていい場所ではない。
というか・・・入ってこれない場所。
そこは間違いなく聖域であり、そして牢獄であった。
水鏡はとりあえず歩く事にした。不安だったから。
辺りの確認などする筈もなく歩きだした。無計画に。
故に気付いていなかった。その場所の異質さに。
だが本能が告げている。木々の間隔が狭い場所には近づくなと。
だから、そういった場所を避けて進んだ。ぐるーーーっと1週。
回ったのだ、、その場所を。
10分程かけて、、、、ふりだしに戻ってきた。
「・・・なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーーーー!!!」
叫ばずにはいられなかった。
水鏡は時計など持っていない為、詳しい時間を計測したわけではない。
でも体感で理解はできた。
これは水鏡の
この場所から向こう側までを見渡せてしまう・・・
気付いてしまえば早い、
10分程かけて歩き回れる散歩道が、そこにはあった。
水鏡が歩けるほどに開けた場所が、そこに在ったのだ。
・・・あああ、疲れてしまった。もう動けない。
コンビニに行くのと違って戦利品などどこにもなかった。
空腹を感じてへたり込む。
思えば昨日、めんどうで外には出なかった、、、
空腹はその時から感じていたものの、ずぼらな精神が勝ってしまった。
悔やまれる。昨日の俺・・・ばか!
動けないままに時間は過ぎていく。
地面に背を預け寝転ぶ事にした。
へたり込んだ時に地面の湿気を感じたものの、どうでも良くなっていた。
いわゆる腐葉土の上に寝そべったのである。
服が汚れる事なんて気にしない。気にしていたら負けな気がした。
だって、訳が分からない!
意味不明な夢である!!!
未だその説を諦めきれないでいた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
ダメでした。
背中はちべたいし、、、気持ち悪い。
空腹も進み・・・限界を感じる。
これは紛れもない現実である。そう確信する。
もうヤだよ・・・助けてよ・・・・
そんな願いを天に祈った。
そこで思い出したのがあの言葉。
「天に仇なすものに永遠の裁きを!」である。
どうしてそうなったのか・・・
心当たりがなかった。
どうしてこうなったのか・・・
状況を考えると絶望的であり、恨み言を言っている余裕すらない。
何もわからないのだ。
何もわからずにこんな場所に放り込まれたのだ。
本当に涙目である。
何を恨めばいいのかも分からない。
羽人間達を恨む事は簡単だが・・・
むせび泣く姿や寂しげな表情がフラッシュバックしその考えに待ったをかけていた。
そこまで考えた辺りで理解する。
これは助からない っと。
何故そう思ったのか、、、いや、考える事を放棄しただけなのだが・・・
短い思考ではあったのだが水鏡にしては上出来である。
水鏡は思う。
こんな場所に放り込まれて発狂しない俺って実は大物じゃね?と。
先程叫んだ件は都合よく忘れていた。
更に思考を放棄していく。
森に預けた体が温かい。
目を瞑り丸くなった。
体を地面に擦り付ける。
もはや湿り気などの不快感を感じない。
水鏡は感じる。
森は俺と一つだ!っと。
このまま融けて混じり、この大地の一部となる。
本当に暖かい。
水鏡は覚悟した。
ああ、俺は死ぬんだなって。そんな感じ。
悔いがあるとすれば・・・
いや、悔いしかないんだけど。
悟った気になるのは終了である。
ああーーーーーーーーーーーーもう!!!
説明を要求する!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
当然の願いを思い浮かべた時だった。
目を見開くとそこは枯れた世界。
鬱蒼と生い茂り生命力に満ちていたその場所が、、、死んでいた。
そんな些事はどうでも良いい。
本命は近くで此方の様子を窺っていたのだから。
女の子・・・10代前半ぐらいの小柄な少女。
目が合うと表情が変わる。
相手の瞳が雄弁に語っていた。
屑が!っと。
女の子からそんな顔を向けられたのは、生まれて初めての事であった・・・それも年下であろう少女に。
いや、厳密には過去に何度かあるのだが、、、気付かないふりをしていたからセーフだよね?
すると蔑む瞳が動く。
それと同時に気付いた。
少女の背後に有る黒い羽根に、そしてその美貌に。
彼女は幻想的でとても美しく思えた。
少女なにのどこか大人びていて、可愛いのだけど美しいと表現してしまう。
そんな存在。
少女が近づくにつれて胸が高鳴る。どきどきと。
これが一目惚れってやつなのだろうか?
って近すぎない?
少女が目と鼻の先。
触れる華奢な手。
水鏡はふれられた胸の辺りが熱くなるのを感じていた。
そして奪われる。
自覚した時には手遅れだった。
体が重くなり、その場に崩れ落ちる。
少女が不敵に笑う。
「あなたに、森の命は渡しません!
吐き気がします!その行動に! ―――
怒りを含むその声が、水鏡の意識を刈り取に掛かっていた。
混濁する意識の中、水鏡は思う。
ひょっとすると、これで目が覚めるのかもしれない。
あるいは少女が死神で、俺を迎えに来たのかもしれない。と。
結論から言うと、そのどちらでもない。
しかし、少女が
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