第221話 ■千織の転生 (タイ編 その24)

■千織の転生 (タイ編 その24)


ミキはソンティと千織を診療所の一番奥の処置室へと運んだ。

「これは予想以上に壊れてるね。 直るかどうかちょっと心配かも・・」

「そんなっ! さっきはきっと直るって言ったじゃないですか!」

「う~ん。 それは、あたしの軽率な発言でした。 ごめんなさい」

「ちおり・・」

ソンティは肩をがっくり落とし、千織の額にそっと掌を当てた。

ビクンッ

ウィーン ガッ ガッ

ソンティの掌が触れたことで反応したのか、千織の体が動いた。

「千織!?」

バチッ ジッ ジッ

ガッ ガッ

「もしかしてソンティに反応してる?」

ブゥン ガクッ

「あっ、止まった」

しばらく動かなくなった千織を見詰めていたが、突然背筋に寒いものが走り、目線を千織の体から入口の方に移すと、なんと千織の霊体が浮遊して、ミキの方を淋しそうに見詰めている。

キャッ

そう、ミキは千織の霊体の姿には、恐ろしい記憶が焼き付いているため、あの古い洋館の事件が甦ってしまうのだ。

『あたしの体・・壊れちゃった・・ もう・・ダメなのかな・・・ せっかく本当にやりたかった事がみつかったのになぁ・・』

どうやら、千織の姿や声はミキにしか見聞きできないようだ。 ソンティは、再び動かなくなった千織の手を握って泣いている。

『千織。 体はきっと秀一お義兄さんが元通りに直してくれるよ。 だから心配しないで!』

『ほんとうに?』

『うん。 たぶんね。 それに、もうこっちに向かっているかも知れないよ』

『あたし、もとどおりに直るかもしれない?』

『うん。 だから、その恨めしそうな顔をするのは、もうやめて。 ほらっ、元気だして!』

『ありがとう・・お姉さん』

そう言うと千織(霊体)はフッと消えてしまった。

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